セコガニの季節 富山・ふるさとの味

 小田原の魚屋さんにも、「セコガニ」が並ぶ時期になりました。このカニは富山県以西の日本海で捕れる雌(メス)のズワイガニのことで、「セイコガニ」や「香箱ガニ」とも呼ばれています。今年は十一月六日から二ヶ月間の解禁! 小ぶりながら身はとても甘く、なんと言っても殻の内側に美味しい内子(卵巣)やカニ味噌がぎっしり詰まっています。殻を裏返して前かけやフンドシと言われる三角の部分を外側に開くと、外子(卵)もびっしりついています(外子の部分を外した後に現れる灰色の部分は食べられません)。
 私の母は、富山の海辺の町で育ちました。母の子供の頃のおやつは、お皿に山盛りに盛られたこのセコガニだったそうです。私も子供の頃は一人二杯から三杯(カニは一杯、二杯・・・と数えます)を一度に食べていました。けれども先ほど魚屋さんを覗いたら一杯700円から900円と、今では贅沢品でした・・・。解禁中に一度だけでも奮発して、久しぶりにお腹いっぱい食べたいです。
 私にとってのカニは「ベニズワイガニ」で、関東に来てからタラバガニや毛ガニを初めて知りました。そのタラバガニはカニではなく、ヤドカリの仲間だと知ったのは、「生命の星地球博物館」(小田原市入生田)の展示ででした。ヤシガニがヤドカリの仲間というのは納得できますが、タラバガニ(他にはハナサキガニ・タカアシガニ・ガザミなど)はちっともヤドカリに見えません。姿は一見カニに見え、足の本数も同じ十本です。しかし一番下の二本はとても小さくて短いため、普通は甲羅に隠れて見えません。そのためか、インターネットの記事ではヤドカリの仲間の足を八本としている記載もあります。パッと見て足が八本に見えるカニは、実はヤドカリの仲間かもしれません。
 幼少期から食べていたせいか、カニはホッとする味です。初めてパリに住むことになった時、この味がなくなるのがとても不安でした。しかし夫の上司に連れて行ってもらったレストランで食べた、「フリュイ・ド・メール」(海の幸盛り合わせ)。身や内子がぎっしり詰まったワタリガニや、ゆでた様々な種類の海老、生牡蠣や生のハマグリなどがたっぷり乗った盛り合わせは、この不安をだいぶ和らげてくれたことを思い出します。
 富山の実家に家族が集まった時も夕食はカニ鍋。しゃぶしゃぶ用のズワイガニの足をたっぷり用意し、だしは昆布。カニの足をしゃぶしゃぶすると、まるで花が開いたように身が広がります。カニの旨味が味わえるようにポン酢ではなく、八方だしにスダチなどをぎゅっと絞ったつけだれにさっとくぐらせ、カニの骨に沿って歯でしごきながら身をいただく・・・。カラダも心も温かくなる味でした。
 翌朝は、食べ終えた殻を鍋の残り汁としばらく煮た「おじや」。鍋料理を楽しんだ次の日のおじや作りは、父の仕事でした。ストーブに鍋をかけて作ってくれたなあ、そうそうこの匂い、この味、と今でも鍋の翌日の「おじや」は亡くなった父を思い出します。

 寒くなってきて鍋の季節になると、今でも朝ごはんを「おじや」にすることがよくあります。鍋の残り汁にごはんや麺を入れていただくのは、夕食時ではなく朝ごはんにすることをお勧めします。夕食の最後の〆は太る原因にもなりますし、朝ごはんの準備が楽になるというメリットもあります。朝ごはんは大事! 十分でも早く起きて食べよう! などとよく言われますが、私も朝ごはんを大切にしています。
 「朝ごはんは?」「いらない、食べたくない」「じゃあ、コーヒーだけでも」とか、「時間がないから~!」とトーストを口にくわえて家を飛び出すとか。ドラマなどでこんなシーンが出てきますが・・・。
 夕食から起床時間までは8時間以上あり、カラダは飢餓状態になっています。その上朝食を抜くと、午前中に活動するためのエネルギーは、脂肪ではなく筋肉を分解して作られます。脂肪が減らず筋肉を失うだけでなく、お昼にお腹がペコペコになってしまうので、昼食の食べ過ぎにもつながります。もし時間がなければ、牛乳や豆乳・プロテインドリンクなどを飲むだけでも違ってきます。
 朝食は良いお通じのためにも大切です。朝食をとることで、腸の動きが高まるからです。また私たちの腸の中に住んでいる「腸内細菌」が、いつも元気でいられる環境に整えることも大事です。腸内環境を整えるためにはまず野菜、ご飯であれば玄米や雑穀ご飯など食物繊維の多いものを。納豆やお味噌汁・ヨーグルトなどの発酵食品も是非! 腸内環境の判断には便の様子を見るのが簡単で、バナナ二本が理想です。
 朝は脱水状態にもなっています。コーヒーやお茶だけ、というのはお勧めできません。利尿作用があるので、脱水状態を助長させることになってしまうからです。牛乳や豆乳を入れて、お水もたっぷり飲みましょう。
 朝ごはんは「やる気スイッチ」。朝ごはん作りは、家族を元気に送り出すための一仕事だと思っています。しっかり朝ごはんを食べることでパワーチャージできますし、気持ちの余裕にもつながります。朝ごはんを食べる時間は、せいぜい十分ほど。家を出る時間が家族でマチマチな場合、そろって食卓につくのはなかなか難しいかもしれません。それでもみんなで同じメニューを食べ、笑顔で一日をスタートできれば良いですね。
 とは言え我が家の朝ごはんも、先ほどの「おじや」や雑炊で簡単にすますこともありますし、備蓄食からレトルトのご飯やおかゆ・カレー・お惣菜などを使うこともしばしば。頑張りすぎないことも重要です。また一品で栄養バランスが取れて短時間で食べられるよう、卵とじや丼ものを作ることも多いです。皿数が少なくなるので洗い物も楽チンですし、何と言っても朝からごちそう感がありますよ!

 今月は我が家の朝ごはんによく登場する、しらす丼をご紹介します。湘南といえば「しらす」! 新鮮でふわふわの釜揚げしらすを、存分に堪能してください。

釜揚げしらす丼(二人分)
雑穀ご飯 お茶碗軽く二杯分
釜揚げしらす 約80g
焼き海苔 1/2枚
赤シソのふりかけ(「ゆかり」など) 少々
紅生姜またはしば漬け・白ごま・大葉 各適量
七味

①小丼用の器に温かいご飯を盛り付ける。
②海苔をさっとコンロの火であぶり、2cm角くらいにちぎる。
③紅生姜またはしば漬けを粗く刻み、大葉は千切りにする。
④①のご飯に海苔をのせ、しらすを盛り付ける。
⑤赤シソのふりかけをかけ、紅生姜またはしば漬けをちらし、大葉をのせる。
⑥白ごまを指でひねりながらかけ、好みで七味をふる。

 お醤油はかけずに召し上がってみてくださいね、朝から幸せな気持ちになれますよ。

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