産後、自信を失くした私が、育休中に踊り出した話

3回目の出産。
それは、私にとって、人生を変える出来事になった。

三男は産後約2か月入院。その間、私は病院へ母乳を届けた。

息子を支える医療スタッフの皆さん、ヘルプで鹿児島から来てくれた母、夫、子ども達の明るさ・成長に支えられながら、使命感を持って毎日を過ごしていた。病院の近くにあった神社には、何度も通った。

念願叶って無事退院。

家族5人での生活がスタート。

可愛い赤ちゃんを迎え、穏やかな日常が始まるったはずが、そこで待っていたのは無力感だった。

「私は何一つできていない。」

「育児も、家事も、仕事も、何もうまくできない。」

「今までの人生を振り返ってみても、何一つ達成していない。」

完全に自信を失っていた。


一つの出会い

抱っこ紐で息子と出かけられるようになった汗が噴き出すような暑い日。

育休ママ向けのセミナーに参加した。

久しぶりの「青山」。電車に乗るのも久しぶりで、気分が上がる。

「育休期間をどう過ごす?」

育休を経て、コミュニティを立ち上げたKさんと、そのコミュニティに参加されている方が登壇。受付の方も子供をおんぶされていて、ママが主体で運営されているセミナーだった。

グループワークで、産後初めて、人に本音が話せた。

「私、何にもできないんです。」

「自分に自信が持てなくて…。」

すると、

「私もです。」「…私も。」

…初対面だったが、同じような想いを抱えているママと、想いを分かち合うことができた。

そして、懇談会で、ありがたいことに登壇者のKさんが隣の席に来てくださった。何か伝えたい。話したい。何もカッコつける必要はなかった。

「うんうん。」

Kさんは、うなずきながら、私の支離滅裂な止めどない話を聞いてくださった。

そして、ゆっくりと、

「まず、3人子育てしてるってだけで十分すごいよ。」

と、言ってくれた。そして、

「何か、大きいことをしないといけないと思っているのかな?」

と、質問してくれた。

その時は、答えが出なかったけれど、このやりとりは、私にとって、とても大きなきっかけになった。


地域と繋がりたい

「まずは、小さいことから。」

「やりたいことは書かなくてもいい。本当にやりたいことは、メモしておかなくても、ずっと頭の中に残っている。」

Kさんから貰った言葉で、少し楽になれた私は、2回目の育休中から気になっていた地域のコミュニティカフェ(北区赤羽:いろむすびCafe)に行ってみることにした。

『コミュニティオープンデー』という、予約しなくても、子連れでも参加できる、ちょっとしたボランティア。

緊張しながら、カフェに入ると、スタッフの方がとても温かく出迎えてくれた。

その日の仕事は、ハイハイレース用のメダル作成と、スタッフの名札作成。ひらがなのアップリケを並べて名前を作り、アイロンで、布に貼り付けていく。

お茶を飲みながらの軽作業。

アイロンでアップリケを布にくっつけるのを、「上手!」とほめてもらったり、未だ会ったことのない、作っている名札に書かれた名前の方の話を聞いたり、モヤモヤな話を聞いてもらいながら、小一時間を過ごし、久しぶりに満たされた感覚。

「こんな私でも役に立てるんだ」

「何だか居心地が良いな」

…その日のうちに、ボランティアスタッフの面接に申し込んでいた。


『カンガルーワーク』という可愛らしい名称の子連れワーク。

息子をおんぶしながら、週1-2回の無理のないペースでカフェのホールを務める。

レジで注文をとったり、配膳をしたり、ドリンクを作ったり。

カフェの環境を整えたり。

皆がそれぞれの経験を活かし、一緒に入るスタッフに学びながら、取り組む。気づいたことを発信し、改善していく。

仕事を評価する人は、いない。

でも、ここでの活動を超えた目標を共有でき、応援してくれる人がいる。

動いたこと、そのこと自体に対して、感謝してくれる人がいる。

皆の自発的な意思で作られている世界。


働いた後に、仲間と一緒に食べるお野菜たっぷりの美味しいCafeランチ。

関わり続けることでできた、仲間との繋がり。

子ども達の成長を皆で楽しめる感覚。


こういう世界も良いなあ…

心の中でぼんやりと想っていたことが、実感へと変わった。


オンラインで、仲間と踊り出す

Cafeでの仕事に慣れてきた頃、緊急事態宣言が発令された。

私の心の拠り所になっていたCafeも営業中止を余儀なくされた。

そんな中、あるオンラインのワークショップに初めて参加。

「これは面白い!!」

「何でもできる!!」

子どもが小さいという理由で、遠い場所でのイベントに参加することを諦めていた私にとって、オンラインイベントとの出会いは衝撃的だった。

「Cafeでも、オンラインで何かできないかな?」

そんなことを店長Mちゃんに話すと、たまたまお店に来ていた理事のAちゃんに直ぐに話してくれた。

Aちゃんは、今までスタッフ向けに実施していた、自分らしく生きるためのワーク『いろどりカルテ』をもっと社会に広げていきたい。という想いを持っていて、ちょうど準備を進めていたという。

この時点で、私は『いろどりカルテ』をやったことはなかったのだが、

この育休中、

「自分とじっくり向き合いたい。」

と思っていた。

『いろどりカルテ』という名前に、とてもワクワクを感じていた。


そして、Aちゃんをリーダーに『いろどりカルテ』がプロジェクトとして立ち上がった。

メンバーは、私を含めて5人。

出身も、住んでいる場所も、歩んできた仕事も、経験も全く違う。

この場でなければ出会えなかったメンバー。

それぞれの想いを聴き合い、価値観を認め、強みと課題を共有しながら、自分のできることをして、挑戦し、課題を克服していく。

アイデアレベルでも、気兼ねなくメンバーに共有でき、反応を貰えると、どんどんアイデアが湧いてくる。ワクワクが広がっていく。

目標達成の先にあるお楽しみや、ご褒美を自分たちで決めて、それに向かって皆でワイワイ取り組む。

対面で会えないのは少し物足りないけれど、オンラインでも、温度感は共有できる。

「こんなに楽しい仕事の仕方があったんだ!!」

まさに目から鱗。

楽しくてやる気も沸き、関連する色んなことに興味が出始めた。

学びたい意欲も増し、時間を見つけては本を読むようになった。


場所を超えて、温かく繋がる

『いろどりカルテ』は人生で大事な領域を8つに分け、自分自身のバランスを8つの彩で可視化して、自己認識するツール。

ピンク :Stylish

紫   :Connection

青   :Health

緑   :Creative

黄色  :Food

オレンジ:Family

赤   :Life-work

茶色  :Property

『いろどりカルテ』ワークショップでは、自分の人生観、価値観と向き合った上で、自分自身のバランスを知り、言語化する。

他者と気づきを共有し、なりたい未来に向けた、自分自身の行動につなげていく。


まずは、メンバー5人で実践。

本音で語れる場所の温かさ。安心感。

人を応援したくなる気持ち。

「これをもっと多くの人に知ってもらいたい。体験してもらいたい。」

自らの実感から、想いを強くした。


そして、Cafeスタッフ向けのトライアルを経て、ワークショップ体験版の一般募集を開始、実施。

ファシリテーターにも挑戦。

ゆっくり、少しずつではあるが、温かい繋がりが一つ、また一つと生まれている。

地域と繋がりたい、と思って始めたボランティア。

思いがけずして、オンラインで、地域を超えて、温かい繋がりが生まれ始めている。


オンラインでふるさとへ

定期的に『いろどりカルテ』で自分自身をメンテナンスする中で、

「赤:Life-work」・「茶色:Property」

の課題が浮き彫りになった。


「赤:Life-work」では、

本当にやりたいこと、またはそれに繋がることが仕事でやれているか。

どこで・どのくらい・どんな人と働くか。

どんな環境に身を置くのが自分にとって幸せか。

産休前の働き方は、私にとって、決して満足できるものではなかった。それが、自分の自信のなさの原因の一つになっていた。

育休中に自分と向き合う機会を得て、様々な人と出会い、話を聞いて、様々な挑戦を積み重ねながら、身近な自然に触れ、ゆっくりと歩きながら自分の頭の中を整理していく中で、今までの自分の経験も、大事なものとして肯定できるようになった。少しずつ踊れるようになり、『本当にやりたいこと』の方向性が見えてきた。


「茶色:Property」では、

将来、地元の空き家をどうするか。

コロナで帰省もできない中、

「鹿児島に帰ってゆっくりしたい」「来年は帰れるかな…」

と思い起こすことはあったが、

より具体的に、

「ふるさと鹿児島と、どう向き合っていくか」

を考えたい。

これが私のテーマの一つになった。


地元にある空き家は、父が生まれ育った場所であり、大好きな祖母が住み、親戚が集まり、いとこ達と遊んだ場所。

今はボロボロだけれど、思い出が沢山詰まった場所。

祖母宅を想ったことがきっかけで、鹿児島で過ごした日々の沢山の思い出や、上京してからも私の心の支えになっている鹿児島の存在を、強く認識するようになった。


ふと、思いついたのは、

今までの経験を活かして、田舎の空き家を有効活用すること。

地元を応援するような場所を作ること。

とは言っても、不動産経営は地元にいないとわからないことだらけ。地元で事業ができるような繋がりは、ない。


まずは、ふるさとと繋がってみよう。

そう思い立ち、今更ながらFacebookとInstagramを始めた。

地元の素敵なお店や馴染みの店、応援したい人や団体を、フォローすることから始めてみた。

すると、今までの地元のイメージがどんどん覆されていった。

動いている素敵な人が沢山いるし、オシャレでカッコよくて、行ってみたい場所がとっても増えている。

行ったことのある場所も、そこで暮らす人の手によって、ますます素敵になっている。

東京にいて、都心の企業に勤め、先端を行っているような気になっていたけれど、気づくと「井の中の蛙」になっていたような感じだった。


そんな中、『いろどりカルテ』を通じて知り合った、私と同じように、自身の地元と関わりたいという想いを持つ仲間が、鹿児島と繋がるオンラインイベント(Kagoshima Lovers Meetup)を紹介してくれた。

紹介メールと記事を見て、子供を見てもらう予定の夫の了承も得ずに、即申し込んだ私。

まさに、私が求めていたチャンス!

ワクワクしすぎて、まさに小躍りしていた。

地元について、語り合えるイベントが、そこでの新たな出会いが楽しみで楽しみで、仕方なかった。


そして、迎えた当日。

ワクワクが止まらない。

繰り広げられる本音トーク。

鹿児島への関わりが深い人から、行ったこともない人まで。

鹿児島』が縁で繋がった様々な方の話を聞き、対話できたことが純粋に楽しかった。

魅力的な沢山の人の存在を知り、もっと話したくなった。

地方がとてつもなく面白く動いていることを知り、関わりたくなった。


東京からでも、オンラインで、繋がった仲間たちと一緒に踊りたくなるくらい楽しめることがあるんじゃないか?

その可能性にワクワクしている。


まだまだ踊り続ける

自分の住む地域で、ふるさとで、そしてオンライン上で。

移動ができるようになったら、会いに行きたい人、行きたい場所が増えているかもしれない。


自分のできることを、楽しみながら、小さなことから、一つずつ増やしていきたい。

人との縁を大切に、語らいの時間を楽しんでいきたい。


未来は分からないことだらけ。


色々な枠を超えて、人生を楽しんでいる姿を、子供たちも感じてくれたらこの上ない幸せだ。

こんなことを考えて生きていたら、子どもたちとの日常も、文字通り、一緒になって踊りながら楽しめるようになってきたような気がする。


産後、自信を失っていた私が、育休中に出会った様々な人との繋がりから自信を取り戻し、踊り始めた話。

長文、読んでいただき、ありがとうございました。

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