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エンジニアのアウトプットをPV数で評価することへの違和感

【エンジニアはアウトプットすることで実力が鍛えられる】

よく言われるこのフレーズですが、先日初めてのLT登壇をしてまさにコレを実感しました。

枠内に収めるためにどう簡潔かつ理論立った展開にするか、頭を捻りまくって構成を練った結果、ただつらつら見解を述べるよりもかなり質を向上できたと思っています。

だから、エンジニアがアウトプットを活動することそのものは推奨されるべきだと思う、のですが。

アウトプットの【ページビューなどの数】でエンジニアの実力を評価するのは何か違うんじゃないかなぁと、今日はそんなお話です。

SNSを活用したエンジニア評価サービス?

Twitter でエンジニアに関する事柄をつぶやいていると、ターゲティングに引っかかるのか、頻繁にこんな類のサービスの広告が流れてきます。

あなたのエンジニアとしての実力を
 SNS とはじめとしたアウトプットで評価しませんか?!

内容を見ると大抵は、下記のような主要サービスで発信している内容、そしてそれがどれだけPVやいいねがついたかのを指標にエンジニアの実力とやらを算出している模様。

・Twitterを始めとする各種 SNS 
・Qiitaなどの技術投稿サイト
・Githubなどに公開されたソースコード


さて、ここで一つ疑問が。

優秀なエンジニアのアウトプットは、本当にその実力に比例してPVやいいねがつくのでしょうか?

例えば私は仕事柄、クラウドで従業員のIDを管理するAzureADといった分野のナレッジを収集するのですが。
なかなか日本語はおろか英語でも十分な情報がなかったりすることがあるんですね。

でも、たまにQiitaなどでAzure ADに関する素晴らしく情報が丁寧にまとまった素敵な記事を見かけて、有り難く読ませていただくのですが。

ふとそういった記事のいいね(LGTM)の数を見ると、両手に足りるか足りないか程度の数しかついていなくて、椅子からひっくり返りたくなるほどたまげることが少なくないんです。


逆にユーザー数が多い言語ジャンルでは、メモ程度に過ぎないものすごく雑な解説の記事だなと思っても、随分とたくさんのLGTMがついていたりする。

私は雑でもアウトプットすること自体は否定しません。
が、だからといって前者より後者の方がエンジニアの実力が上だと評価されかねないシステムだとしたら、私はその信憑性に甚だ疑問が浮かびます。

大事なことだけど世間からの関心がないので注目を浴びないもの】
エンジニアとして仕事をするようになってから、そんな世の中のものをたくさん見てきました。

noteにランキングがない理由と、エンジニアの評価軸

PVやいいねでエンジニアの実力を評価する弊害は、分野による不平等の他に
エンジニアのキャリアとして過激で実態とズレた論説が蔓延しがち」の部分も発生してると感じます。

なぜそんなことが起こるのか。

その理由は、この記事を書いているnoteに「なぜランキングシステムがないのか」の話を踏まえると推測がつきます。

深津氏が認識している、現在のインターネットの課題は「スキャンダラスだったり、あおったりすることが一番お金になる設計になっていて、ユーザーがそれに最適化した行動をとっている」点だ。
ランキング導入2つのデメリット
・多様性が失われる
・極端化する

エンジニアの場合は、PV数=実力と解釈されると、転職などで給与水準を上げられる可能性がありますよね。
PVを得ることで広告収入でお金を稼ぐインセンティブがあるインターネットの世界と、似たような構図があるわけです。

そうするとエンジニアのキャリアに関する発信も、ネット同様スキャンダラスで人の危機感を煽るものばかり発信され、バズるという構図ができあがっちゃうんですね。


エンジニアというお仕事に対し、こんなことを語る記事がバズるのをよく見かけます。

やれ夜や休日も猛烈に技術の勉強もしなきゃいけないとか。
三度の飯より技術が好きじゃないとこの仕事は務まらないとか。
技術の知識の賞味期限は凄く短いから今までの知識は常にアンラーニングして最新知識をキャッチアップせよとか。


私は趣味でオフの時間も技術の勉強をしてるし、勉強に夢中になるあまり飯をすっぽかすこともあるし、大学でコンピュータサイエンスを学んだりしました、が。
そんな人間から言わせていただくと


オフの時間に勉強をしなきゃいけないほど教育制度が整ってないからこの業界は人材不足になるんだとか。

技術が好きな人間ばかりが集まって技術が好きな人間による技術が好きな人間のためのプロダクトばかり作るから、別に技術が好きではない一般に人に広まるプロダクトが作れないじゃないのかとか。

特に大学で学んだコンピュータサイエンスの知識なんか、賞味期限が来るどころか絶賛役に立つし、なんならまだまだ足りないところだらけだし。

まぁ、いろいろ異論を挟みたくなるわけです。



アマゾンの採用AIが女性差別をした件など、AIのアルゴリズムは公正なのかに関する議論がようやく日本でも盛んになってきた印象があります。



GAFAと数えられる世界屈指のテック企業・アマゾンですらこうなのに、エンジニアのアウトプットで実力を評価するアルゴリズム系の新興サービスって、本当にエンジニアの実力を公平にジャッジできるのかなぁ。

ちゃんと発信分野ごとのPV不均衡を是正して、純粋なアウトプットの内容から実力を判定するアルゴリズムになっているのかなぁ。


と、Twitterでこの類のサービス広告が流れてくる度に、私は感じてしまうのです。

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