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『何かしらの世界1位』

 さて2024年7月12日に『40周年キャンペーン』が終了し、7月15日に41周年を迎えたファミリーコンピュータ――『ファミコン』。熱気冷めやらぬまま同じ週の木曜日(一般的なゲームのリリース曜日)には

『Nintendo World Championships ファミコン世界大会』

 が発売された。往年の名作ゲームのワンシーンを実際にプレイして、目標達成までのタイムを競おうというソフトだ。ごくシンプルなものから少し時間のかかるものまで、150種類以上の競技が用意されている。買わねばなるまい。そりゃもう。ファミコンと共に生まれ育ったものの宿命というか運命というか、まあそういうアレである。他のゲームソフトでは普段滅多に手を出さない限定版まで買ってしまったぜ。ウヒョー。

 ところでゲーム中に設定できる項目に『当時好きだったゲーム』と並んで『キャッチコピー』というのがある。当時好きだったゲームはその名の通り、ファミコン発売当時に遊んだ思い入れのあるタイトルを選んで表示できるもの。キャッチコピーはあらかじめ用意された候補の中から一つを選んで、これも好きだったソフトとともに画面に表示することができる。ファミコン世代のあるあるネタや好きなキャラに関するものなどいくらか用意された中で、私は『何かしらの世界1位』というキャッチコピーを選んだ。

という存在は世界にただ一人、私は私としてオンリーワンつまりナンバーワン』みたいな屁理屈をこねながら選んだが、そのキャッチコピーを選んだ時点では別段、何かにおいて世界1位を取ったことなどはなかった。そのうち、ゲームでも何でもいいからとりあえず何かしらの世界1位になれればいいなあ、くらいの感覚だ。現代の最先端技術と比べればそれこそお遊びみたいなムカシのゲームでも、トップを獲るとなれば世界の広さが身に染みる。孤独なゆるゲーマーひとりで挑むには高すぎる頂……。

 しかしながらこのゲームは『ファミコン世界大会』、大会なのだから参加してナンボ、競ってナンボである。週ごとに競技を変えて行われる『世界ランキング大会』の第1回はソフトの発売とともに開催され、翌月曜日の7月22日に終了した。もちろん参加したとも。自信はあまり無くとも、競い合うくらいはやってみたいものだろう。俺より強い奴に会いに行く。ゲームはファミコンでも気分はストリートファイターである。5種の競技それぞれに何度もトライし、それなりに良いであろうタイムを出しても、やはり『これで完璧』とまでは思えなかった。たとえばスーパーマリオブラザーズのW1-1だって、普通にBダッシュのスピードを保ったままゴールポールに到達すると出る『21.16秒』のタイムは最速ではない。極めし者の手にかかれば、私のタイムくらいはいとも容易く抜かれるものと思っていた。

そしたら、

まさかの。

獲れてしまった。世界1位が。

 まさかの展開だ。同タイム1位の人がたくさんいるのはこの際置いておくがいい。シンプルかつ制限の多い昔のゲーム、まったく同じタイミングでボタンを押していけばまったく同じタイムが出るのは至極当然だ。他に何人いようが、数字の上では1位なのに間違いない。これまでの人生において何かしらで世界1位になったことがあったろうか? いやない。この『ファミコン世界大会』というゲームにおいてさえ、今後さらにトップが獲れるかどうかもわからない。しかしたった一度、ひとつの競技だけでも世界1位になったという事実は揺るがない。『何かしらの世界1位』というキャッチコピーは、実にスピーディに現実のものとなったのである。我が心のレホール先生がはしゃぎ倒すぜウッヒョー!!

 ただこの記録も、本当に自分だけの力しか頼れない状態では出せなかったものだ。文明の発達にただただ感謝するしかない。インターネットを通じてノウハウを共有してくれる誰かがいる、そのどれほどありがたいことか。自分で見つけた手順だけではせいぜい『この辺で最強』がいいところ、『世界最強クラス』にはなっていなかったろう。仲間でもなければ知り合いでさえないが、同じゲームをプレイしている人が世界中にいる、それも最新のものでなく、元となったゲーム自体は40年も前のものだのに――というのは、決して色褪せないハード&ソフトの魅力を今一度感じられてどこか嬉しい。最後に友達の家でゲームして盛り上がったのは、さていつのことだったろう……。

 ま、とにかく。このゲームこの競技(オクタロック全倒し競争)においては、私は名実ともに世界1位になったわけである。ウッヒョオオォォ!!!


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