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何度聞いてもまた明日君の声が欲しくなる ー aiko LLP23京都公演レポ

なにもかも忘れたくない。この空間と感情まるごと、真空パックにして覚えていたい。

そんな切実な気持ちと、今この瞬間、何も考えずただただ全力で楽しみたい、という想いが激しくせめぎ合う。aikoに逢った日はいつもそうだ。

以下、LOVE LIKE POP vol.23 京都公演のネタバレ(セトリも)を大いに含みます。
参戦の予定がある方はご注意くださいませ。

7月28日、去年の8月ぶりにaikoのライブに参戦した。
ロームシアター京都に来るのは一昨年の8月ぶり。大学時代を過ごした街ということもあり、京都のライブはなんだか特別に感じる。

今回の楽しみは、なんといっても席の場所。
8年来のaiko友だちが引き当ててくれたチケットは、なんと1階4列目!

入場してみると、ステージが目前に迫る近さ、しかもお立ち台の真正面だった。あまりの幸運にくらくらする。
友だちと言葉少なに顔を見合わせ、二人してお腹を痛くしていると、さあっと会場が暗くなった。

もう20回はとうに超えている。もしかしたら30回以上?
途中で数えるのをやめてしまったくらいにはたくさん参戦しているのだけども、何回来ても慣れることはない。
開演前のどきどきも、その日はじめてaikoが目に映ったときの「ほんまにおる……」という感激も、一向に褪せない。



そして、こんだけ来ててもまだ初めて経験することってあるんやね。
開演と同時に、足が攣りました。

あまりの近さに興奮しすぎて、両足にめいっぱい力をこめた結果だった。
「号泣中」のイントロとともに幕が開く。するとすぐそこにaikoが立っていて、うわっaiko……!と思った瞬間、左の太ももに激痛が走った。
えっやばいやばいやばい、と思っていたら、次の瞬間、右の太ももも攣った。終わった。

どうにか筋を伸ばそうと、前の席に手をついたり足を浮かせたりしてみるも、痛みがおさまる気配は一向になく、え、退場……?という思いすら頭をよぎる。
泣き出しそうな痛みの中、でも少し視線を上げるとすぐそばにaiko……!歌ってるaiko……!白いかわいい歌うまい……!いや足いった。情緒がめちゃくちゃになった。

あわやリタイアかとすら思ったが、号泣中の終盤にようやく痛みは落ち着いて、ほっと胸をなでおろした。

そして2曲目、「荒れた唇は恋を失くす」!
絶対これが1曲目やと思ってた。否が応でも気持ちが高まるグリッサンドと気持ちいいブラスの音、一気に身体が熱くなる。まず第一に曲名が良すぎるねんな。
ここでようやく、aikoの存在を全身全霊で享受する。ああ、どこも痛くないって本当に幸せ!

このあたりから、あまり瞳が乾くひまがなかった。
「ぶどうじゅーす」(aikoおる……ターン泣き)、「恋堕ちる時」(わ〜っおひさしぶりです!やっぱり好き!泣き)、「横顔」(改めて歌詞がうつくしすぎるんですが……泣き)。
いつもは3曲くらいで一度MCに入るのに、5曲目まで一気に歌いきった。気持ちが落ち着く隙がない。

横顔のあとでようやく一度目のMC。
へんな話だけれども、aikoが喋っているのを聞くと、ようやくひと心地つける。目の前で喋っているのも十分に異常事態なのに、するする自然に観客を巻き込んで、けらけら笑って話すから、気づけば楽しさが上回る。

この日も例に漏れずそうだった。
後ろにいたサングラスのお兄さんに『あんなイケイケやのに「恋堕ちる時」(初期のアルバム曲)ぜんぶ歌っててん!やばくない?』とツッこんだり、わたしの二席隣のお兄さんに『お兄さんR指定に似てるなあ』と話しかけたりするaiko。一緒にけらけら笑ううち、いつのまにかリラックスしてしまい、うっかり手中に収められる。

と、油断したところからの歌唱がまたすごい。
さっきまでふざけ倒していた人と同じとは思えないくらい一瞬で歌手モードに入るので、またも情緒を乱されながら、一気に世界観に引き込まれる。



9曲目の「ワンツースリー」が終わり、弾き語りに入るため、aikoがピアノの前に座ろうとしたときのこと。

『あいこー!今きた!』
『大学でテストやって!タクシーで今きたー!』
という女の子の声が、後方の席から聞こえてきた。

『えー、そうなんー?』と言いながら(うろ覚え)、いったんはけようとしているメンバーの後ろから『ちょっとちょっと!』とドラムの方を引き留めて座らせたかと思うと、おもむろに歌い始めた。1曲目の「号泣中」を。

ざわめく会場をさらに試すように、2曲目以降も短いフレーズを次々歌いつなぐ。そうこうしていると残りのバンドメンバーもみんな戻ってきて、MCまでの全9曲、本編さながらの演奏で歌いきった。
沸きたつ観客に向かって、『前半戦、ダイジェストでお届けしました』とにっこり笑う。
やばいって。サービス精神が過ぎるって。

興奮冷めやらぬまま、今度はしっとり弾き語り。
「のぼせ」「KissHug」を歌い上げたのち、『聴いてくれてありがとう』と笑うaiko。おもむろに客席を見渡して、

『え、もしかして……。今来た?』

会場、爆笑。またも遅れてきた人がいたらしい。

まさかと思っていたら、なんとダイジェスト2回目がスタート。
しかも、1回目のダイジェストとはアレンジを変えたりふざけたり、我々が飽きないよう(飽きるわけないけど)随所に工夫が凝らされたバージョン。
さすがにホスピタリティが過ぎるって。会場のテンションは最高潮に。

と思っていたのに、このあとがさらにすごかった。

色気あふれる「あかときリロード」にノックアウトされ、ドラムが4つ打ちにアレンジされた「58cm」で飛び跳ねれば、「シアワセ」で楽曲の良さを噛みしめる。

恋愛前線から離れて久しいはずなのに、「気づかれないように」を聴くと、解像度の高い切なさで胸がいっぱいになる。
恋愛の追体験において、aikoの楽曲の右に出るものはまずない。



そして、本ライブのハイライト「アップルパイ」。

最新アルバム「今の二人がお互いを見てる」の中で、もっとも心をわしづかみにされた。
過去の作品を含めても、かなり上位に食い込むんじゃないかと思うほど大好きな曲(友人談:aikoの真骨頂やんな←わかる)。

本当に好きでよく聴いてるなと思ったら、Apple Musicの2023年聴いた曲ランキング2位だった(ちなみに1位は「荒れた唇は恋を失くす」でした)。

ミドルテンポでかわいらしい曲調なので、やるなら前半だろうと思っていたから、てっきり今日は歌わないのだと諦めていた。
だから余計に、イントロの時点で胸がいっぱいになってしまって、涙がとめどなく、とめどなく

すごく明るくて楽しい曲なのに、歌詞は切なくてたまらない。わたしの大好きなaikoだ。

アップルパイが好きなの?
意外に甘いものが好きなんだね
そんな美味しい顔して食べるなよ
ひとくち頂戴 目的はそれじゃないけど
一瞬の想いだったとしても
心の中に貼っておいてね

良すぎる……良すぎる……。
「目的はそれじゃないけど」の歌詞の破壊力と「ない〜け〜どォ〜⤴︎」の歌い上げ方の切なさよ。

2番が終わって間奏のところで、メンバー紹介があった。
明るく輝くステージで、aikoがひとりずつメンバーを紹介してね、その光景がなんかもう美しくてさ、なんて尊い景色なんやろうって思う。

全員紹介し終わったあとに、そしてボーカルはー?って言って、みんなで『aikoー!!!』って叫ぶねんか。
もうそこで、かろうじて食い止めていたものがすべて決壊した。号泣してしまった。
ひさしぶりの声出しライブ。これまで長かったよなあ。戻ってきたんやな。ほんまにうれしい。

aikoのことずっと見てたいのに感情がたかぶりすぎて足が震えて無理で、前の席に手をついてなんとか身体を支えながら、グッズのタオルに顔を埋めて嗚咽した。
こんなに、こんなに心が動くことってない。こんな気持ちになれることって他にないよ。

映画を見に行った時も
帰りの車の中でも
あなたの手だけが気になってしまって
ワンシーンのヒロインにも彼女にもなれないまま
またねと冷たい空気吸い込んだ 



いつしか切なさより楽しさが上回るようになった、aikoがにこにこしながら歌うようになった「あたしの向こう」、ライブの定番となりつつある「ハナガサイタ」で本編ラスト。

アンコールに次ぐダブルアンコールで駆け抜けて、興奮冷めやらぬホカホカの心身で終演を迎えた。

個人的には、ダブルアンコールで「アスパラ」をやったのがかなりアツかった。
ぜったいダブルアンコールで歌う曲じゃないんよ(褒め言葉)。イントロがかかった瞬間、隣の友人と手を取りあって飛び跳ねた。手拍子が楽しすぎました。



終演後、別の席に座っていたふたりの友人と合流したとき、たまらず4人で抱き合った。

過去最長ちゃう?最高ちゃう?ときゃいきゃい言いながら、とりあえず河原町のファミリーマートのベンチで乾杯。
終電の時間を気にしながら、どうにも別れがたくて仕方なく、そのままカラオケオールと相成ったのだった。

ちなみにわたしは大学生ぶりのオール。朝帰り→4時間睡眠→行動→3時間睡眠→行動→夜〜翌昼にかけて10時間睡眠でようやく疲れがリセットされる有様だった……。
でもまだいける!朝まで楽しめることはわかったのでうれしい。ただ次からは翌日に予定を入れないこと。

サプライズでお祝いしてもらってびっくり
うれし〜かった!




ライブのとき、たまに客席を見渡すのが好きだ。
この人たちみんなaikoのこと好きなんや、わたしと同じ気持ちなんやって思うとたまらなくうれしい。キラキラの笑顔がまぶしくて泣けてくる。

客席にいる全員にそれぞれの人生があることを思う。
ひとりひとりにaikoと出会ったきっかけがあって、今も好きでいて繋がっているのだと思うと、こうして一堂に会していることが果てしない奇跡のように思える。

ふと舞台脇に目をやると、スタッフの方がニコニコしながら曲にのって揺れているのが見えた。
そんなささいなワンシーンで、ああ音楽を好きで良かったなとすら感じてしまうのだった。

aikoを好きで心底愛して、わたしは本当にしあわせだ。
これからも一緒に年を重ねていこうね。

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