暑気と生ハムとわたし
昨日の朝の話である。
目覚めると、頭がかち割れそうに痛かった。
瞬きの振動すら辛く感じるレベルといっても差し支えない。
体調不良ネタが続いて申し訳ないのだが、まったく笑えないくらい真剣に「え…もうわたし死ぬ?」と思うほどの痛みだったので致し方ない。
なんやこれ。
昨日までの「なんか頭重い」とは明らかにわけが違う。
そうか、頭痛とはこういうものであったか、と変に納得してしまうほどにわかりやすく、いかにも頭痛らしい頭痛であった。
薬を飲んで一刻も早く鎮めたいが、そのために起き上がることすら困難である。
気持ち的には七転八倒しているのだが、実際ちょっとでも頭を動かすとそのたびに激痛が走る。
わたしはめそめそと半泣きになりながら、
「うーーー…」という感じで枕に顔を押し付けていることしかできなかった。
いやはやまじでつらい。ひとり暮らしやめたいと思う瞬間である。
そんな情けない体勢のまま(多分)20分ほどが過ぎたのち、わたしはようやく起き上がった。
恐ろしくのろのろとした動作でみかんのゼリーをぬるぬると食べ、よぼよぼと薬を飲み込み、わたしは再び倒れるように眠った。
ぱちんと目を覚ますと、ずいぶんと痛みが和らいでいた。
歩くと若干つらいものの、じっとしていても涙が出てくるほどのおぞましい痛みはお薬のおかげでなりを潜めたようである。
ありがとうお薬。プレコール。
夕方になり、さすがに胃がからっぽで気持ちが悪くなってきたので、雑炊の残りを食べようと思い電子レンジであたためる。
あたため終わってラップをあけると、なんともいえぬ酸い匂いが鼻をついた、ような気がした。
…ん?と思いつつもちょっとだけ口に運ぶと、明らかに、イっている。
冷蔵庫にしまい忘れて一晩放置してしまったのがだめだったらしい。
7月の熱帯夜というのはなんと恐ろしいものか。
つい昨日まで食欲をそそるいい匂いをさせていたものがかなしいかな、使用済みの赤ちゃんのオムツみたいな酸っぱい匂いに様変わりしているのである。
ごめんなさい、と小さく言いながらビニール袋に詰めてわたしは雑炊だったものを捨てた。
悲しい気持ちでいっぱいだった。
じゅくじゅくとした気持ちのまま母にLINEでその旨を伝えると、
「なんでもすぐ冷蔵庫に♪」と愉快な感じの返事がきたのでちょっと元気がでた。
気を取り直して、わたしは買い出しに行くことにした。
マンションから最寄りのコンビニ(ファミマ)までは徒歩2分ほどである。
寝まきのだるーんとしたトップスを着替えもせず、ましてやお化粧などはもっとせず、必殺技マスクとともにあかるい店内へとずんずん入る。
いつもならあれもこれも食べたくなって困っちゃうところなのに、あまりになぁーーんにも食べたくないものだからびっくりしてしまう。
炭水化物は論外だし、かといってお惣菜もほしくない、大好きなお菓子も食べたくない…と思いつつ、とりあえず「スーパーカップ クッキー&バニラ(クッキーが新しくなったよ!)」をカゴに入れてうろうろしていると、突如すうっと一点に目が引き寄せられた。
「生ハム」
これやーーーーーーー!!! って思った。
たくさん汗をかいたせいか、体は塩っ気を求めている。でも重いのはイヤ。そんなに食べごたえもいらない。もっとつめたくて、シンプルな……
生ハムしかないやん!!!
しかも、お値段はおさいふに優しい100円+税。ありがとうファミマ、と思いながら水とアイスと生ハムっていう珍妙な組み合わせでお会計を済ませ、わたしは足取りも軽く帰路へとついた。
結論から言うと、生ハムは病み上がりの体に最適でした。
あの塩気。あのつめたさ。やわらかいけれどしっかり咀嚼出来て満足感もあるところ。
重たくなく物足りなくなく、ビバ生ハム!という気持ちになったよ、深夜に一人。
これからは、食欲がなくなったらぜったい生ハムを食べることに決めた。
体調は回復したものの、あまりの暑さに依然食欲が戻ってこなかった今日もまた、わたしは生ハムを食べることにした。
今度はスーパー(もちろん京都市民御用達のフレスコ)で調達してきたたっぷり100グラム入りのものである。
晩御飯がわりにちまちまと食べた。
もはや岩塩が食べたいと思うレベルで塩気を欲していたわたしは、今日も今日とて虜になった。
っんまい。すこぶるうまい。たまらない。
そうして気が付けば、無意識のうちに半分以上を食べてしまっていたのである。
これはいかんと慌てて自分から生ハムを取り上げるももう手遅れ。
その後、のどが渇いて仕方がなかったのでした。
食べすぎには注意やで。
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