
『もしも高校四年生があったら、英語を話せるようになるか2』 (後編)
3章「私たちのSOS」
3-1「I don’t think so」
あれから数日間、私はずっとモヤモヤとしながら過ごした。
「教壇の上で、胸を張って言えますか? 今、生徒たちに与えている指示が、将来、報われるものになる、と。自分たちの教え方を、今までに疑ったことがありますか?」
今まで私は、塾で沢山の子供たちに、英語を教えてきた。もちろん、中には留学などをして、話者になった子もいるかもしれない。しかし、それは私の知るところではないのだ。話者にさせる責任を何一つ負っていないので、乱暴に言うと、どうでもいい。
「それに、英語が話せるようになりたいんだったら、受験の後でだっていいじゃないか。その後に、好きなように頑張ればいいだろう? だから、まずは受験だ」
松尾さんの言葉も、頭をよぎる。そう、確かに私の仕事は、「合格させる」だ。
「つまり、同じ時代に、二つの英語が同時に存在している、ということです。『日本人が学んでいる英語』と『話者になるための英語』が」
こうして有紀さんの言葉が、ストンと落ちてくる。そう、明らかに「別個な英語」が存在しているので、受験の後に、目標や道を失った日本人が、まるでゾンビの如く、あっちに行ったり、こっちに行ったりして、「話せる方法」を求め、英語難民となっているのだ。
「なー、どうしたんや、由璃ネエ」
その声でふと私は我に返った。四葉が心配そうな顔で、私を下から覗き込んでいた。
「あ、いや・・・ゴメン、何でもない」
「なんか今日、ずっと変やで。恋愛中か? そんなら、うちに任しとき。何とかしたる。誰や、好きなんは。二次元でも妻子持ちでもドンとこいや」
「違うの、そんなんじゃないの」
「じゃあ、何やねん。恋愛以外に、若い女性が何をそんなに悩むことあんねん」
「大人になったら、色々あるのよ。四葉だってそのうち分かる」
「何やねん、その言い草は。うち、由璃ネエのおかげで、こうして前向きに頑張れてんやで? 由璃ネエの悩みは、うちの悩みでもあんねん。さあ、言わんと。何があったん?」
その一音一音が、グッと私の心に食い込んでくる。
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