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書きたいことがない人は、書き方を学んでも上手くならない

ものごとは、「失敗」と「経験」と「比較」でしか上達しないと思っていて、そのどれもが「行動」を起こさないと得られないもので、そう考えると「行動」を起こせない人は何も上手くならない。
私はいつもそのように考えています

20代の時に英会話教室に通っていました。授業の始めに What's Up タイムというのがあって、最近あったことについて、英語で話をするという時間でした。もちろん授業の一環です。
私は、友達と何かを食べに行ったら美味しかったとか、最近観た映画が面白かったとか、またそういうイベントごとじゃなくても、今日電車の中に面白い人がいたとか、道端で見つけた花が綺麗だったとか、そういうことを題材にして、英語で話すことに挑んでいました。そうすると、先生が言い回しを修正してくれたり、間違いに気づかせてくれたり、まあ、恥をかきますよ。が、確実に上手くなりました。当然ですよね?言語の間違いはその言語を知っている人に修正してもらわないと、なかなか気が付かないもの。私たちも赤ちゃんの頃からそうやって日本語を習得してきました。

同じクラスに、超有名大学の女子大生がいたんですが、その人はいつもこう答えていました。
nothing
「何もないはずはないでしょう?」と先生は発言を促すんですが「特別なことは何もない」と答えないんですね。この時間は、英語で自分の考えてることを表現して、通じるか通じないか試す機会だし、間違いがあれば修正してもらう機会だし、人が話すのを聞いて自分のヒアリング力もアップする機会だし、とにかくチャンスの宝庫。なのにその子はいつも「nothing」で通していました。義務教育の教室にいる消極的な子じゃないんですよ。高い授業料を払って習いに来ている成人女性なんです。

その時、先生からは「ゆかは伸びる。言いたいことがある人だから」と言われました。その時は、意味がよく分からなかったんですが、いざ教える立場に立つと、本当によく分かるんです。

意見文を書かせようとすると、驚くことに「書きたい意見なんかない」「書きたいことが見つからない」そう答える人がいます。耳を疑います。これで、文章をどう添削しろと?(笑)
でも、文章術を学びに来ている。
多分、仕事で使う文章力を上げたいという気持ちなんでしょうが、申し訳ないけれども、書きたいことがないタイプの人は、文章術アップの前に、仕事をなくす危険性が高いです。今、chatGPTに「こんなこと言いたいんだけど」と言うと完璧な文章を書いてくれます。それでいいじゃないですか。いや、あなたがいいんじゃないですよ。会社の人事が「これでいいか」と思っていると思います。
でも、chatGPTに質問を投入する人も、問いの文章を組み立てる文章術が必要ですけどね。

書きたいことがないのに、文章を習いに来る人って、
特に泳ぎたくはないけど、泳ぎを習いに来るとか
特に描きたい絵はないけど、絵を習いに来るとか
特に歌いたい歌はないけど、歌を習いに来るとか
そういう感じで、「ちょっと虫がいい」を通り過ぎて、正直、何を言ってるか分からない人になっちゃっています。

それでも、どこかに「表現したい気持ち」や「言い表したい」という「種」が残っているんだったら、私は教師だから、そのその種に水をやり、一緒に育てることはできる。でも育てたいという気持ちを持っていない人は、一緒に育てられないんです。

What's up? に答えられないのは、そういう気持ちを持っていないから。

もちろん、そこに気がつけていない場合もある。特に経験の浅い、小中学生などはそう。「自分の意見なんかないと思ったこともある」これ、小学生の言葉です。最初はそう思っていたけど、繰り返し書き方をガイドすることで、だんだんと書けるようになってくると、むしろ逆に意見が持てるようになってくるんですね。
「別に……」何を聞いても、こんな返事しかしない子もいます。自分の意見をいつも親が否定する。そういうタイプのお子さんに多いかな。子どもには、何を言っても叱られない、むしろ発言したことを褒められる。そういう経験が山のように必要なんです。
そういうことに気がつかせるのも教師の役目だと思っています。
が、大人に「nothing」と言われてしまうと、もうなす術がない。書きたいことがないんだったら、書かなければいいじゃん!と、匙を投げたくなる時もあります(笑)

そして、書きたいことがないという人は、書き方を教わっても書けるようにならないんです。こうしたら?という提案に意地でも従わない、「ここはどう思う?」と聞いても、考える前に「別に」「特に何も」と答える。
子どもの場合は、気持ちを解きほぐしてあげるところから始める時もあります。緊張が原因のことがほとんどだから。
でも、大人でこの態度だと、教える方が試合を放棄したくなります。

しかも、ぶっきらぼうに「nothing」というなら、まだ「反抗期かよ」で笑って対処できるけど、「書きたいことが思い浮かばないんです」と真顔で言われると、ほんと「もう、無理して書かなくていいんじゃないかな」と答えたくなります。

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