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サービスを一時停止した話


子育て家庭のためのミールシェアサービス「マチルダ」のα版を運営していますが、この度、サービスを一時停止することにしました。

先月末からサービス停止ラインを定めていたため、この決断に関しては何ら後悔はありませんが、備忘録のためにこのnoteに経緯と学びをまとめます。


ミールシェアとは


端的にいうと「おすそ分けをデリバリーする」サービスです。1年前に始めたのですが、その時にもnoteを書いています。

出産後に経験をした

「何でこんなにも子育てって課題が残り続けているのだろう」
「育児って孤独だよな。もっとみんなで助け合えないかな」

という孤独な育児に対しての課題感と、

「あー、娘の健康は気になるけど時間ないし面倒だし、料理してられない」
「料理代行、ミールキット、いろいろ試したけど我が家には合わない...」
「家庭料理のUberEatsみたいなサービスないのかな」

という子育て家庭の食事に対する課題感を持ったことで、
「こどもの食事を中心として、みんなで子育てをする社会を作りたいなぁ」
と始めたサービスが、ミールシェアサービス「マチルダ」です。

そんなミールシェアには、リーガルの課題があります。

食事を販売するには通常、飲食店営業許可が必要であり、飲食店営業許可は自宅では取得できません。自宅でカフェをやりたい場合などは、それ用にキッチンを改造する必要があります。
「おすそ分け」という概念は昔からありますが、飲食店営業との線引きが明確にないため、マチルダはリーガル的にも大変チャレンジングな状況でテスト版を運営しています。

リーガルの問題をクリアするために、色々なことをやっている(学びが多いのでいつかまとめたいです)わけですが、保健所に相談をしつつ、ひっそりと運営をしていました。


安全を第一に考える


こどもの食事を扱うことから、マチルダは「安全を第一に考える」ことを徹底して運営してきました。

【マチルダの食品衛生に関する施策(一部)】
・サポーターの資格保有マスト
・マチルダ運営によるサポーターキッチンおよび衛生観念のチェック、事前審査
・衛生ガイドラインのシェア
・衛生的な梱包材の支給
・サポーター家庭での体調不良時の即キャンセルルール
・保険加入
・ユーザーへの食品衛生についての呼びかけ
・サポーター/ユーザーへの食中毒予防の基本知識のシェア

その上で、新型コロナウイルスの問題が顕在化してきた2月末より、順次以下の対応をしてきました。


2020年2月末:新型コロナウイルスへの対応方針を作成


主には、配達時のユーザーと配達員の接触感染を防止する対応でした。
「ピックアップ時に、必ず手指消毒をする事」「ユーザーに直接渡さないよう、置き配をする事」などです。

新型コロナウイルスへの対応方針20200228.001

新型コロナウイルスへの対応方針20200228.002

新型コロナウイルスへの対応方針20200228.003


2020年3月26日:新型コロナウイルスへの対応方針を追加


小池都知事の外出自粛要請を受けて、より厳格に、配達員とユーザーが接触することがないように、また、サポーターと配達員の検温を必須にしました。

新型コロナウイルスへの対応方針20200326


2020年3月31日:サービス停止ラインの通知


事態の深刻さを受け止め、「外出禁止を伴ういわゆるロックダウン措置が取られた場合」もしくは「マチルダのユーザー/サポーター/配達員いずれかに感染者が出た場合」にサービスを停止することを、全てのステークホルダーに通知しました。

新型コロナウイルスへの対応方針20200331.001

新型コロナウイルスへの対応方針20200331.002


2020年4月8日:サービス停止


そして昨日、安倍総理大臣より、緊急事態宣言が発令されました。
また、小池都知事から、緊急事態宣言の発令にあたり、「徹底した外出自粛を要請」する発表がありました。


マチルダは「ロックダウン的措置が取られた場合にはサービスを停止する」とラインを決めていましたが、日本ではいわゆるロックダウンはできないので、この線引きでは不十分でした。
ただ、今回の要請では「徹底した外出自粛」が伴います。
そのため、マチルダは今日、8日からサービスを停止することにしました。

マチルダは小さなサービスなので、各サポーター、配達員、そしてほぼ毎日利用頂いているユーザーには昨日個別に連絡をし、そのほかのユーザーには先ほどサービス内にて通知をしました。

マチルダサービス停止


今回の件で学んだこと


このパンデミックは未だおさまるどころか、ここからが本番だと言わん限りに猛威を奮っているわけですが、サービス停止までには学びが多かったと思います。

理性的な意思決定をすること

これがいかに重要か、そして難しいかを学びました。

給食がなくなり、こどもたちの栄養が偏ったり、在宅勤務での子育てになり、子育て世帯がより大変になるという課題が明確にあるなかで、こういう時こそおすそ分けで助け合いたい、「みんなで子育てをする社会」を体現したい、という気持ちがあるので、正直、私はサービスを継続したかったです。

家事代行サービスや、UberEatsなどのサービスが「生活必需サービス」としてむしろ伸ばしてきている中で、マチルダもここぞとばかりに必要性をアピールできる可能性もありました。

子育て家庭の役に立ちたいから始めたのに、一番大変な時に役に立てないなんてという気持ちの中、
「現状知り得る情報からリスクを把握し、意思決定をする」
ことは、今の私には極めて難しいことでした。

ちなみに私には、身近に統計およびリスク管理に長けた親族がいて、彼の助言をもらいながら、情報が錯綜する中で必要な情報を集めていくことが出来たので、かなりラッキーな方だと思っています。

それでも、当たり前ですが、意思決定は代表である私がしないといけないので、「如何に自分が理性的であるか」が重要だなと、実感しました。(本当に基本的なことなんですけどね...)


その意思決定が正しかったかどうかなんて、いつまでたっても分からない事の方が多いですが、理性的な判断をしている限りは後悔することはありません。


もう1つ、

小さいサービスは無力である

ということも強く感じました。

これは大きな大きな反省なのですが、α版を開始してから1年経過したにも関わらず、サービスの拡大どころか事業と言えるところまでも持っていく事が出来ていません。
「安全に運営する」を免罪符に、だらだらと小さく運営してきたのです。

今回、「こどもたち、そして子育て世帯の役に立つ」というリターンと、「リーガル的にチャレンジングな状況で、もしマチルダが感染を広げてしまうことになった場合」のリスクを天秤にかけた時に、マチルダはサービスとして小さすぎる=「こどもたち、そして子育て世帯の役に立つ」というリターンも小さすぎて、リスクを全く上回ることが出来ませんでした。


「少なくとも今のユーザーの役には立てている」という事を支えに運営をしてきたのに、サービスが小さいが故に、一番大変な時に「今のユーザーの役にも立てない」ことが分かったのです。


何だか暗い感じで終わってしまいましたが、サポーターから、配達員から、ユーザーから続々と嬉しい言葉をもらえていて、これを書き終わった今は「よし!」という気持ちです。

もはや生活の一部のマチルダさんなので、サービス再開の際には引き続き利用させてください。
共働きで幼い子供の居る我が家の夕飯をいつも助けて下さり本当に感謝しております!
頼んでいる日は今日はマチルダだと思うと仕事から帰宅するのが楽しみでした。またこの素晴らしいサービスが再開するのを楽しみにしております
私はやっぱりマチルダの理念に共感しています。
ので私たちの安心安全が確立され、また再開されるのをお待ちしています!

こんなメッセージを沢山沢山もらった私には、力がムクムクと溢れています。

数週間サービスを停止させる期間に何をして、サービス再開時にどの程度アップデートするのか、出来上がってきているβ版をどうリリースさせるのか(ワクワク)、未来を考えたいと思います。

料理写真


頂いたサポートは全て本となり、私の知識となります。