見出し画像

世界で働く: 服装について

国連職員と聞くとどんな服装をしているイメージを持つだろうか。

ニューヨークの国連本部で各国の代表団と共に、スーツやジャケット姿で会議に参加している姿だろうか。
もしくは、危険地帯で防弾チョッキとヘルメットを身につけ、国連平和維持軍の兵士たちと共にある姿だろうか。
それとも、ユニセフ親善大使の仕事でアフリカを訪問した時のオードリーヘップバーンの様に、シンプルなシャツやポロシャツとパンツ姿で現地の人達と話している姿だろうか。

どんな職場でもそうだろうが、その場にあった、ふさわしい服装、というものがある様に思う。
自分や相手の立場、そしてその場、国や地域の文化などを考慮した、ふさわしい服装。相手に不快な思いをさせないことは重要だ。
国連で働いていた間は、働いていた環境により服装も変化した。特に現地の文化の影響は大きかった。

私はタジキスタン、スーダン、イエメンと、イスラム教徒が国民の大半を占める国で働いていた期間が結構長い。
これらの赴任地では、基本体のラインがあまり出ない、長袖長ズボンが基本であった。タジキスタンはソ連時代の名残か例外も多く、もう少し露出の多い服装でも大丈夫だったが、イエメンでは女性は冒頭の写真のような顔までヴェールで隠すような黒づくめの服装だったので、気を使った。何日かイエメンの女性の様にヒジャーブ(顔を覆うヴェール)やアバヤ(服の上から全身を覆うガウン)を身につけて通勤してみたが、唯一出ている目の部分と、おそらく歩き方で外国人とわかってしまったらしく、ものすごく注目を集めてしまって逆効果であった。それ以来、できるだけ地味な長袖長ズボンで通していた。

イエメン勤務の後、ローマに転勤になったのだが、その際服装を見直した。長期休暇の間に肉体改造に取り組んだこともあり、それまできていた服は全てサイズが合わなかったので、一式全部揃える必要があったのだ。親切な友人二人とデパートに赴き、いろいろ試着して服を選んだ際に驚いたことがある。例え膝丈のスカートでも足を出すことに抵抗を覚える自分がいた。もう隠さなくてもよいのに、である。長年仕事のためとは言え、服装を規制していた事で、自分の感じ方も変わっていることに驚いた。そこで、そんな規制をかけていた自分から脱却しようと、以来職場での服装はフェミニンなスカートやワンピースにジャケットというスタイルに一変した。服装が変わると、心持ちも随分変わるものだと思った。なかなか楽しい経験だった。

もちろん、人によっては国が変わっても服装はほとんど変わらない人もいる。皆自分が気持ちよく仕事のできる服装があり、多国籍チームならではの、多様性に対する懐の深さもあった。特に外部との会議などなければ、ジーンズで出勤する同僚もいたし、色鮮やかなアフリカの民族衣装を着ている同僚を見ると、こちらまで明るい気分になったものだ。

余談だが、イエメンで結婚祝いのパーティーに出席して、皆の服装に驚いたことがあった。普段外では黒いヴェールを被っている反動か、パーティーのために着飾った女性達は圧巻だった。お化粧も濃く、極彩色のドレスを身に纏っている様はまるで別人で、同僚なのに一見誰だかわからない人もいたくらいだ。外で自己表現ができない分、家の中や、パーティーなどでは好きな格好をしてバランスをとっているのかも知れない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?