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2月22日(月)

이월 이십이일 월요일

今日も職場では静かに一日が終わり、通常なら祝日でも仕事だけれど、今週は明日カレンダー通りの休みをとって、その代わりに金曜日に働くこととする。時間に余裕もあるので、吉祥寺で下車し、ブックオッフに韓国語の次のテキストを探しに行くことにした。

 昔から何かが欲しいとか会いたいとか思っていると、わりとすぐに機会が巡ってくる。それはわたしの対人(物)運の強さなのかはわからないけれど、そうなのである。引っ越した時にも、ああなんかいい木べらが欲しいななんて思って歩いていたら、駅前でやっていた店を畳んだお食事屋が「ご自由に」といってまさにほしかったような木べらを並べていたり、ああどうしてもDos Monosの荘子itにインタビューしたいなあと思っていたら、急に知り合いが人伝で紹介してくれたり、今月の支払いヤバイなと思っていたら、タイミングよく思いついた地元にいるお婆ちゃんがお金を孫たちに配ったり。何故か不思議なタイミングで世界が動く仕組みになっている。

 今日もブックオフの韓国語コーナーで吟味していてパッとなんとなく目線を落としたら、フランス語のコーナーなのに一冊だけ置かれている教科書があった。それはなんと、わたしが数ヶ月前から目星をつけていた本だった。だけど若干高いので、登録しているU-Nextのデジタル版で使いづらいけど我慢しようかな、やっぱり買おうかなと悩んでいたのだ。いきなり興奮で体が浮き値段をみると1800円くらい。やはりいい本は古本といえどある程度する。でも正規の値段よりずっと安いのでまあいいかと思いパラパラめくると、何かがおかしいことに気づいた。CDが入っていなかったのだ。棚におさまっているはずが何故か一冊だけ違うところに置かれていたし、誰か盗んだか?と汚い心で生きているわたしは見ず知らずの誰かを疑ったが、まあCDは特に必要ないので買うことにした。だけど少しくらいはマケテくれたらいいなあなんて腹黒さでレジの人に相談すると、「それでは6割りで980円にしますね」と言われ、また舞い踊る私。そんなに大きな値引きをされるとは思っていなかったのだ。だってCDがないだけで、中身はとても綺麗な本だったから。それでやたらと「ありがとうございますありがとうございます」と頭を下げていたら、「どうしたの?」といかにも仕事ができそうな女の人が現れた。様子からしてこのフロアの責任者に見える。980円にしてくれた女の子が事情を説明すると「CDないけど買いたいんですか?」と責任者らしき人が私に尋ねた。その尋ね方の声がなんとなく「変わってますねあなた」みたいに聞こえた気がしたけれどそれはまあいいとして「はい」と答えると、「それなら、最低価格をつけさせていただいてもよろしいですか?」と次に尋ねられた。私はきょとんとなり、「さ、い低価格とは?」とまるで怪しいビジネスでもしているかのような話し方で尋ねる。すると「210円で」と即答する責任者。「ぬえ!だ、だってCDないだけですよ!」と得するはずの私が今度は「あたな頭おかしいんですか」という感じで失礼な尋ね方を。「はい、通常売れない欠陥商品なので」と何故かものすごく自信満々に答える責任者らしき女。私の驚きが増し動揺が顕著になるごとに、彼女の目は何故か自信をおびていく。私は「え、あ、じゃ、じゃあ、最低価格をつけていただいてよろしいです」と萎縮しながら、韓国語の前に日本語を学べと言いたくなるような日本語使い。そんなこんなで、数ヶ月入手することを夢見ていた教科書が、なんと210円で手に入ってしまったのである。ラッキーうっふふーんと思い、小学生並みに私は幼稚なので、嬉しさを伝えるがためだけに人に電話をかけた。

 家に帰り再び教科書を手ににやける私。いい大人が古本の教科書を見てにやけているなんて、完全にどうかしているわけだが、誰にも理解できなくても、私の幸せのひとつなのだ。それは誰にも邪魔できない。

 心を踊らせながらグラスにワインを注ぎ、プロジェクターをつけて『人間レッスン』の続きを流してベランダに出た。暖かい季節の夜はここが定位置だ。ベランダの椅子に座り、涼しい風に吹かれ、ドラマの中で血が噴射しているのを見ながら春を感じた。明日も特に出かけず勉強やら制作や読書に勤しむことだろう。ああ、我が家はなんと素晴らしい。


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