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知らない街で仕事に誘われる

用事があり、長い時間電車に乗った。車内は座席の端と端に一人ずつ座っているくらいで、結構空いている。

濡れた鞄をのせた膝が、だんだん濡れてつめたいのだが、眠気に引きずられてうとうとする。すこんと眠ってふわっと起きて、またすこんと眠ってというのを繰り返しながら目的地を目指す。雨のせいなのか、体調のせいなのかわからないが、眠くて眠くて仕方がない。

駅に着き、広場で地図を見ていると、スーツ姿の女性に声をかけられた。そのひとは「わたしは〇〇生命の〇〇と申しますが、あなたのことをすてきな方だと思ったので、ぜひ一緒に働きたいと思って」と言う。

思わず一瞬、そのひとと働く自分を想像した。スーツを着て、営業している自分。いまと対極の暮らし。ノルマとか、結構あるんだろうか。この女性、いまはやさしそうだけど、働くことになったら急に厳しくあたってきたらやだな、とか。

ただ、そもそも用事があったので、せっかくだけどそのお誘いは断ることにした。街中で仕事に誘われたのは初めての体験だが、この営業(?)が、いつか実を結ぶ日が来るのだろうか。マッチングする確率はかなり低いように思うのだけど。あのあとも彼女は同じように誰かに声をかけるのだろうか。わからないことはたくさんある。

用事をすませたあと、来た道を引き返して帰る。帰りもまたひたすらに眠い。あまりの眠気に、帰宅してすぐ横になった。
こんな日もある。

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