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やわらかな夕焼けと朝焼け

 夜勤が続いたのもあり、少し間が空いてしまった。遅い梅雨明けの猛暑日は夜でもかなり暑く、体力も気力もだいぶ削られた。

 仕事終わりが近くなると地平線から上る朝陽は、湿気が多いためかまさしく真っ赤、というか濃い朱色という色味だった。朝焼けの赤は夕焼けとまったく質感が違う。柔らかく湿って、それでいて矢が飛ぶようにまっすぐ光が射す。落ちる日よりも昇る日のほうが近くに見えると思う。
 夜の暗さに慣れた疲れた目で、それを容赦なく灼く太陽を眺めながら、朱(シュ)を朱(あけ)と読むのだなあとつくづく思いだしていた。

 つい先日の日本の朝陽は、真冬の北イタリアの夕陽をどこか彷彿とさせる。
 湿気のせいだろう、しっとりした質感に茫洋とする遠景、柔らかくぶれる輪郭。ほかのどの色とも違う、赤。
 季節や緯度の差は大きく、太陽の沈む方を見ていても日本ほど眩しくはない。また太陽が隠れた直後の空の、薔薇を思わせるまろやかな赤に、ピンクの帯を挟み宵の紺碧の天井が広がる様はだいぶ趣が異なる。

 そういえばイタリアで日の出を見たことがないと気がついた。どうもあの国にいるとのんびりしてしまうようだ。あなおそろしや。

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