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推し用紙と推しフォントで作る小説同人誌装丁note.2

2024年6月末のイベントで新刊が出ます(小声)

二次創作も小説も自ジャンル以外で書くことは1000%ないと思っていたのに、普段あれこれお世話になっている絵師友からの「表紙絵を描くから私の推しカプで小説を書いてくれ」という熱烈依頼に相乗りし、彼女への献本というかたちでオンリーイベント祝いに一冊奏上することになりました。一冊では足りないくらい日々こちらも供給いただいているので書くしかない。
しかし世間の子どもよりも読み込みの浅い別ジャンル(kmt)、さらにマイナー(鬼)腐カプの成人向け、という初体験三重苦でしたが、書き出してみると割と楽しく、時代背景など新たな学びを得ながら友人の推しカプを愛で、なにより友人も大層喜んでくれたので、結果とてもいい経験になったと思います。
原稿が締め切り間際だったので新しい挑戦はできなかったものの、今回始めて絵師友によるイラスト表紙というめちゃくちゃ同人誌らしい装丁になりました。自カプの本では絶対にしないだろうという出来になったので、記録としてnoteしておきます。

本当は先に新テニ最新話の感想を書こうと思ってたんだけどな…5月6日の下書きから先に進まない。好きが募りすぎるとクソデカ感情すぎて言葉にならない。kmtくらい斜めから眺められるジャンルのほうが適度に距離感があっていいのかもしれない。
次回こそ新テニのことを書くから(涙)

1:表紙絵が先に出来ました

絵師友からは「どんな内容か読みながら表紙イメージを考えたい」と言われていたので、彼女が表紙絵を描ける3月にあわせて連載原稿を少しずつ提出していく、という感じで執筆を始めました。今までは本が完成するまでたったひとりの作業だったので、途中で担当が原稿を取りに来るみたいな状況はある意味新鮮でいい刺激にもなったし、各月締切に追われるというプレッシャーも初めて経験しながら、とりあえず全体の半分まで書いたところで表紙イメージができてきました。
設定が平安時代なので当たり前ですが、純和風…!
彼女が「やってみたかった」という屏風絵をイメージした四面割り付け。
二つ折りにするともったいないくらいなので、むしろ本にせずに布印刷して部屋に吊るしたほうがいいんじゃないでしょうか。
ちなみに頒布には同じ絵柄で4枚組PPしおりを作られていたので、オマケにつきます。むしろ小説がおまけでは?

友人の激推しカプです 美少女すぎる


光に満ちた生を求めながらも、
闇の中でしか生きることを許されなかった二人。
明けるのが惜しいほどに目眩く夜の邂逅も
朝を迎えれば彼の人の記憶とともに消失してしまう。
逢うべき人の姿を求めて夜に沈み、淡い夢に耽溺する。

ほのかな暁の光を感じる闇の色。
彼の人の夢のように淡くゆるやかな光に浸された幻想の花々。
通い合う度に互いの心をひらいていく、ふたりの表情。
そんな二人の逢瀬の間(あわい)をそのままに描いたような、透明感あふれるイラストを献上いただきました。改めて多謝。

2:挿絵をリクエストする

早々に表紙を仕上げてくれた友人ですが、自分の本はさらに早くてイベント半年以上前に入稿済みという脅威的な段取り上手さんなので、私が「原稿が…」などと言ってる時期にはすでに暇そうで、落書きやグッズ制作などをゆるやかに楽しんでおられました。なので「もしGWに余裕あったらかんたんな挿絵描いてくれると嬉しい」と頼んでみました。かんたんな絵と言っても決して侮ってるのではなくて、彼女の生み出す落書きは落書きといえど喉から手が出るほど大事な装丁アイテム!目次ページに添えるようなラフなイラストがあったらいいなぁ、という位の感じでお願いしたのですが。
「できたよー」
と言ってLINEで届いたのは挿絵ではなくて漫画

美麗すぎてやばいのでここでは公開できない


自分の話が漫画になってる!!!(号泣)
こんな感動することあるか。ないです。

彼女いわく「(序盤で)一番印象に残ったシーンを描いた」とのことですが、このシーンと台詞は結構自分の中では重きを置いていたので、伝わってよかったと感無量でした。
けれど出来がよすぎて、もはや挿絵どころではない。
目次ページの挿絵というにはご立派すぎるし、本のどこに差し挟めばこの1ページ漫画の良さをPRしつつ小説の体裁を保てるか、ということについては最後まで悩みましたが、最終的には目次より前、冒頭部においてイントロダクションとして物語に吸引してもらうことをお願いいたしました。

扉をひらいたらいきなり漫画が始まるけど!
これは小説です。申し訳なさすぎて埋まりたい。

3:製本に使った用紙


表紙用紙| マーメイドスノーホワイト153K マットPP
遊  び  紙| ビオトープGA-FSミッドナイトブルー60K
本文用紙| 淡クリームキンマリ62K

このイラストにはこの紙しかない、と選んだのは、STARBOOKS様の取扱用紙の中でも手触りがめちゃくちゃ良い「マーメイドスノーホワイト」です。水彩画用紙みたいな凹凸のある、眩しすぎないマットな白感が上質さを醸し出す、大好きな紙。
友人のイラストの繊細さや透明感を活かしつつ、平安絵巻のようなアナログ感を表現するのにぴったりかなと思ったからです。マーメイドはそのままでも良いのですが、STARBOOKS様の用紙説明にある通り「マットPP」加工をかけることを激烈におすすめします。手触り・質感が数倍UPするし、濃色の保護をしてくれつつ耐久性も高まります。STARBOOKS様はPP加工がデフォルトではないのでお値段はその分高くなるのですが、このマーメイド+マットPPは本当におすすめしたいです。
以前自分の本でも使って死ぬほど気に入った&仕上がりが予想できたというのはありますが、白ベースの表紙でも余白が映えるし、こういう全面イラストでも紙敗けしないし、雰囲気重視な表紙にしたい場合は是非!

PP加工前だとこんな感じ。表2
色乗せ&マット加工で少しだけ光沢がつきますが、手触りがやんごとない


遊び紙は本を開いて最初に見ていただくページになるので、タイトルやストーリーのイメージをどこまで再現できるかという観点で、最後まで二人で悩みました。
①「夜」の雰囲気にしたいけれど、真っ黒なのはNG
②表紙も濃紺なので、「夜明け前」みたいなほのかな色味を感じる紺色が良い
③二人とも透け感のあるトレーシングが好き
④しかしトレーシングの紺色は発注時在庫なし(そして意外と青味が強い)
STARBOOKSの遊び紙サンプルを前に、あーでもないこーでもない、と二人であれこれ悩んだ結果決まったのが
ビオトープGA-FSミッドナイトブルー60K
という用紙です。

ミッドナイト「ブルー」なのが大切。ブラックではないこの上質さ!

このビオトープは透ける紙ではないのですが、質感と発色がえも言われぬエモさを醸し出している(エモエモ)

薄さ◎(厚すぎず薄すぎずめくりやすい、ちょうどよさ)
手触り◎(少しざらっとした感じでクラフト感あり)
質感◎(和風にも洋風にも馴染む、そこはかとない上質さ)
色味◎(漆黒でもなく紺でもない、限りなく黒に近い濃紺。まさにミッドナイトブルー)

という感じで、表現したかった世界観にぴったりな用紙でした。「透け感」というただ一点の希望以外ではすべて兼ね備えてくれていたので、今回はこちらの用紙を遊び紙に選ばせていただきました。

スタブさんは本当に紙の種類が豊富で、表紙も遊び紙も迷いすぎるくらいに贅沢に選ばせていただける。
ただ本文用紙はそんなに選択肢がなくて(むしろそれが普通?)B6以下、ページ数の多い小説本だと淡クリームキンマリ62k一択になるかもしれません。
以前は62kがなくて、もう少し厚みのあるキンマリだけだったのです。漫画同人誌ならいいんだど、ページの多い小説では62kをおすすめします。ハラハラとめくるときの軽さは随一ですよね。ややクリームが強めかな?という感じもしますが、白色よりも目に優しく、黒ベタ(k100%)の発色もとてもいい感じです。

STARBOOKS以外の印刷所さんでも本を作ってみたいな…という思いもチラホラあるのものの、結局いろんな点を総合すると、小部数小説書き+装丁オタクの夢を気軽に叶えてくれるのはここ以外にないのかもしれない。

4: さらなる世界観の再現へ、別注帯

自分としてはギリギリ入稿…だったんですが、納品希望日の1ヶ月以上前、想像以上に早く本が出来上がってきました。これまでで一番早かったかも。
(スタブさんの入稿予約システム、多分印刷業界の中ではあまりない珍しい形態なのかな?と思うのですが、どのようなスケジュールで印刷に回っていくのかいまいちよくわかっていません笑笑)

イベントまで少しばかり余裕ができたのもあり、本をお迎えしてくださる方に世界観が少しでも伝わるように何かできないかな&せっかく本を作るので、装丁でやってみたいことをひとつずつ実現していこう!ということでやってみました

トレペ帯。

エモ…
えろ…

ハードカバーの本でもたまにお見かけする、表紙が透けるトレーシングペーパー帯。
二人の逢瀬は「夢の中でだけ」実現するお話なので、実態のない不確かな世界を表現するのにはクラシコトレーシングが必要不可欠だったのです。遊び紙で採用しなかったので余計思いが募りました。
帯を通してうっすら透ける表紙にエモ(&エロ)さ倍増間違いなし。私としては前回の本で採用を見送った紙でもあり、友人の好きな用紙を使って何かしてみたいという思いもありました。

両袖(内側に折り込む部分)には、友人の描いた蓮のイラストを入れています。
実はこの帯作成よりも少し前に、友人が「頒布するときに、神社でお守りとかを入れてもらうような薄紙の袋に入れてお渡ししたい」と言って、自宅で某架空宗教のグッズ袋を印刷しようと試行錯誤していたのですが、紙が繊細すぎてインクジェットプリンタではうまく印刷できない&B5の漫画本を入れるサイズの袋(A4より大きい)が自宅プリンタには入らない…と悲嘆にくれていたので、このトレーシングの帯で繊細な蓮のイラストを印刷して献本できたら!と思ったのもありました。

トレーシングに印刷すべき蓮の絵柄

帯とか、それに付随するキャッチコピー(グラフィック)いうのは、通常販促のためにつけられるものなので「自分の本にコピーをつけて広報する」という創作を世に出す以上の自意識過剰さに悶絶間違いなしの作業になるのですが、今回は「友人の推しとイラストを映えさせる」という大義名分の元になんとか仕事モードで割り切っていきます。

版面は背幅にあわせてイラレでトンボとガイドを設定します。袖(両側の折り返し)と表紙の横幅は決まったサイズで。
帯の縦幅、プリンパの規定では(多分文庫本を想定して?)「40〜55mm」となっていたのですが、すみません正直55mmだと表現したいものが収まりきらない。
というより、個人的には表紙の一部がチラ見えするような「寸足らずカバー」というものに激烈な憧れを抱いていたのもあり、帯というより幅広帯、表紙と一体になるようなものにできたらいいなあ…などと思ってもいました。
けれどそんな私の個人的な思い入れで、せっかくの尊いイラストを隠してしまっては本末転倒。これは個人の本というよりもむしろ友人に献本することが最終目的の本なので
あくまで主体はイラストで、ギリギリの幅広を微調整。

表紙・裏表紙とあわせて、展開したイメージを元に作成します

帯用紙|クラシコトレーシング-FS 90kg
サイズ|縦72mm×横415.4mm

B6版の縦幅が182mmなので3分の1超くらいのサイズ感です。普通の帯よりは大きい、という印象になるかも。幅広になることで外れにくいのはメリットかもしれません。
タイトルを縦書きで入れたかったので、縦幅はどうしても必要でした。イラストを3分の1隠してしまうというわがままを聞いてくれてありがとう。

発注先はこちらも選べる用紙の豊富さがありがたすぎる「プリンパ」様です。
規定サイズにはない発注だったのに問い合わせに応じていただき、本当にありがとうございました!

5:フォントと文字組み、版サイズ


使用書体| 筑紫Aオールド明朝Pr6N L
文字組み| サイズ 13Q 42字×17行
レイアウト| 天 26mm 地 19.5mm ノド 19.75mm 小口 14mm
版・ページ|  B6版(大判コミックサイズ)一段組  192ページ

またこれ。
思考放棄しているのではなくて、これが自分の中でベストな文字組みだから(言い訳すればするほどに手抜き感が溢れる)。

私の最推しフォント、「筑紫オールド明朝体」。前回の本で使い尽くして満足したはずでした。なのに
設定が平安時代(古典)、そしてまだ病弱な人間だった頃の鬼の始祖による単一視点(繊細)ときて、このフォント以外に世界観を表現できるフォントを、私は知らない。
オールド体は有料無料他にも色々あるし、筑紫もアンティーク明朝とかもあるのですが、どれもやっぱりちょっと違う。

圧倒的な美しい流線と、そこに残る余韻。
印刷した書籍だからこそ固定フォントで世界を表現できるという醍醐味があるので、フォントについては「物語にいかにフィットするか」という観点で選んでいます。
版面の校正はIndesignからe-pubを書き出して電子書籍にして読んでいるのですが、筑紫オールドは電子にしたときも目に優しく、紙に印刷しても馴染みの良い、Adobeフォントで利用できる細明朝としてはトップクラスの美しさ。
独特の癖というか雰囲気はあるものの、押しつけがましさがなくスルスルと読みやすいし、タイトルやキャッチコピーにしてもデザイン性の高さで作品を格調高くキメてくれる、もう私は筑紫オールドなしで生きていけない…

…というフォントの好みは個人の性癖の問題なので、全然同意してくれなくて大丈夫。ただ筑紫オールドが好きなだけで他の趣向を放棄しているのかもしれないけど、それでもいい。推しは一点集中で長く愛でるタイプです。

本文フォント。漢字が多いのですが圧が少ない。
地の文も多めですが、全面文字で埋められていても圧のない感じが大変に好きです。天地ノド小口の余白も余裕があっていい。これは多分文庫では叶わない。


B6版の小説本
と言うのも、私の中ではもうこれ以外選択肢がない、と言える領域になってきました。今後も同人誌を作ることがあるとしても、多分文庫やA5サイズは(どうしてもという事情でない限りは)進んで作ることはないと思います。
一般的には文庫小説というのが愛されているのは知っている。本棚の中でもきっと収まりがいいと思うし、他の方の作品にも寄り添うサイズ感なのもわかってる。
けれどやっぱり前回までと同様に「文芸書ハードカバーみたいな外観にできるだけ寄せたい」という願いは捨てきれないし、今回はイラスト表紙が主体だったので、できるだけ大きく彼女の絵を見せたかったのです。
通常、イラスト表紙だとA5サイズ(2段組)で作成される方が多いと思いますが、もうひとつ「どうしても段組が嫌」という、これも自分のこだわりのためにA5サイズの採用を見送っています。
いわゆる『二次創作同人らしさ』を追求するならA5、一般小説文庫に似せた外観や手に取りやすさを求めるなら文庫版とかが断然おすすめで、テンプレも見本も多くて作りやすいとは思います。
が、外観と装丁にこだわりたいという方には、ぜひB6版の良さも知っていただきたいな。

6:写真撮影&とうとうPVまで作成する


本ができたら次は広報、PRですね!

「新刊でます」でよくあるのは、表紙画像とサンプルの公開とか、推しぬいに囲まれた実本写真ツイートとかが一般的。なぜなら、それが最も二次創作界隈のみなさまに好まれる、そして正しい広報形態であるからなのだと思うのです。ジャンルの民にカプ愛と内容が簡潔に伝わる過不足のなさ。


でもなんかね、物足りないんだ…(自分が)

そして多分だけど、この「物足りなさ」の一線を、Twitter(X)というオタクの沼で(ただの底辺字書きが)越えてしまうからよくないんだとうっすらわかってはいるのだけど、もうこれは性分なので、
自分のメディア欄を愛するためなので、仕方ないです!

ビジュアルは大事。

たとえTwitterであろうとも、映えは大事。

良き装丁の本を最高に見せるためにはどうしたらいいか。写真でしか雰囲気が掴めない通販組の皆さまにも正しく伝わるビジュアルで撮るにはどうしたらよいか。

だいたいいつもそんな感じなので、私にとって完成した本はただの被写体と化します。

間違ってもすぐにページをひらいて自分の書いた話に没頭したりはしません(読むのはもう校正段階で死ぬほど読んだからもういいくらい自分の話に飽きてもいる)。そんなことよりも、美しい装丁を後世に残したい。
このnoteのために撮影した写真もありますが、そうではなくて完全に趣味の範囲に足を突っ込でいる。写真を撮るのは好きだけど、撮影機材はただのiPhoneです。

二次創作らしさのかけらもない雰囲気写真

そして今回とうとう
この写真たちを使ってショート動画(PV)を作るという狂気にまで足を突っ込んでしまいました。ただの二次創作なのに完全にインスタのやりすぎ。気取ってんじゃねぇ、とセルフ突っ込みをしつつ、PVも含めて献本です(押しつけがましい)。
インスタのおかげでびっくりするくらい簡単に動画作成できるのですが、さすがにやりすぎなのでこれ以上は控えます。本人には送ったので、どこかの宇宙の彼方の鍵垢で公開できたらいいな…

7:小説同人誌こそ装丁と広報で世界を表現していきたい

こんな感じで中身だけでなく外見までも大風呂敷を広げてしまった新刊ではございますが、完結後もアニメや映画で絶賛放映中という、まだ連載中なのに過去のものにされがちなテニスの民にとっては羨ましいがすぎる覇権ジャンルなのに、鬼マイナーカプの、さらに小説ということもあるので、びっくりするくらい少部数での頒布です。
そもそも二次創作同人誌だし、広報なんて本来は限られた需要の先だけにむけてひっそりすべきなのにもかかわらず、こんなに装丁や広報に力を入れるのは理由があります。


素人が作った同人誌、特に小説って、一見しただけだとその内容まではわからない。試し読みサンプルがあってもかなりの分量読まないと、その作風やカプ傾向が自分の趣向にあうかどうか、分かりづらいですよね。
読んでくれたら合う合わないがわかるだろうけど、そもそも知らない人に文章をある程度読んでもらうとか、最初からハードルが高すぎる。

イラスト表紙だとカプ絵がもろなので、その分内容のイメージは湧きやすいかもしれませんが、誰もがカプイラストを依頼できるわけでもないし…
(今回はたまたま友人の推しカプということでイラスト表紙になってますが、こんなことは奇跡なので、基本表紙はイチからデザインで素材探すのから必須です。たいへんに大変。)

けれど、イベントごとに膨大な数の同人誌が生まれ、そして日々タイムラインに流れていくこの時代、
小説という(同人界隈ではメインになれない)コンテンツの魅力を伝えていくために、
というよりも、小説であるからこそ、ビジュアルをいかに見せるか、ぱっと見のイメージで内容をどこまで伝えられるか、というところに重きを置いた同人誌作りや装丁PRも、あっていいのかなと思います。

中身読まなくていいから装丁だけでも楽しんでもらえたら嬉しいし、
内容で伝えたかった雰囲気を表紙というビジュアルイメージでも表現できたら最高だし、
「あ、きれいだな」と表紙に目を止めてくれた方が、帯にのせたコピーや本文の抜粋で「読んでみたい」と思ってくれたら最&高じゃないですか?

そして、選び抜かれた紙の手触りやページ送り、文字組が醸し出す雰囲気や空気感、
そんなリアルな体感
も得ながら、小説という想像の沼におちてもらいたい。


読書の醍醐味は「想像」です。
イラストや漫画のような、シーンやビジュアルを想像しなくてもよいコンテンツとは違う。自分で自分の脳が気持ちよい映像を想像しなければなりません。

デジタル全盛の時代「見て見ぬふり」の名の下に許された表現方法、二次創作同人誌の実本頒布。
この時代の実本だからこそ、五感を刺激し、五感で想像力をかきたててくれるような本作り、装丁やビジュアル広報とも、もっともっと仲良くなっていけたらなと。
きっと自意識の狭間に陥り、苦しむこともまた必須にはなりますが、これからも時間と状況が許される限りは続けていきたいなと思える趣味になりました。

最後に私的通信にはなりますが、ここまで褒めておだててありがたい感想をくれながら伴走してくれた友人に、心から感謝の意を表します。もし私に自カプしかなかったら、今頃はクソデカ感情を抱えたまま沈んで溺れたままで「私だって王子が好きなのに…」とか言いながら海の泡か藻屑となっていたかもしれない。


長い文章、お読みいただきありがとうございました。書いてびっくり8000字超。
こんなに一度に文字が打てるなら短編でもさくっと書けそうなのに、さっぱり前に進みません。好きも度が過ぎると情緒が暴走して、適切な言葉をつなげなくなるのです。

「好き」との距離感を覚えたいと感じた初夏のnoteでした。おわり。