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コアシダカグモとおしゃべり

リモートワーク、いや、今っぱやりのワーケーション?とか言いながら、東京をちょっとだけ離れて山荘暮らし中。子どもの頃は、避暑のため、夏に来ることがほとんどで、久しぶりに来て家に入ると、コオロギがコロコロと床に転がっていたり、ブヨに刺されたり、というのが、この家での「虫との遭遇」だった。

しかし、コロナのせい(おかげ)でマレーシアのキャメロンハイランドに戻れず、去年の秋からここに居付き、何年振りかの日本の紅葉を満喫。気づけば年越し蕎麦もお節料理も。そして今もここにいる。何十年ぶりの寒波とやらもやってきて、凍結が怖いし、明日にでもスタッドレス履こうか、と言っていた矢先に雪が降り出し、瞬速で準備し山を下りてタイヤ館に走ったり。

実は、その間ずっと静かに同居してくれているのは、子どもの頃は「タランチェラ」と呼んで恐怖に慄いていた「コアシダカグモ」。脚まで含めると3~4センチくらいのものもいて、存在感抜群。大人になった私は、蜘蛛は害虫の天敵だから益虫、ということくらいは知るようになっていたものの、この子はどれくらいの仕事をしてくれるの?と気になって調べてみた。

すると、なんと「軍曹」という名で呼ばれることもあるくらいの害虫退治力を有する、愛され蜘蛛であることがわかり、一気に親愛の情を感じることに。都会の家では、ゴキブリにも襲い掛かるというからスゴイ。いざ!という時は、猛スピードで動いて獲物を捕食するらしいが、通常はおもむろにそこここに現れ、じっとしている。話しかけるとこちらを向いて聴いている(ようだ)。次の瞬間にはいなくなっていたり、ちょっと謎めいた動きをすることもあるが、また翌日、違う部屋で出会ったり。つい、あらら、今日はこっちに来てたの?あたたかい方に移動ですか?とか、水を飲みにきたのかな?シャワーで流されないように上に登った方がいいですよー、とか、話しかけたり、踏まないように注意するのがすっかり日常となってしまった。

近くで見ると、少しケパケパしていて毛皮っぽいのもかわいい。とも言えるが、やっぱりキモチワルイ。でも、決して、こちらに攻撃してきたり、触れて来たりすることもないので、適度な距離感で話し相手として接するのがベスト。というつかず離れずの関係で、すでにかなりの人数(?)のコアシダカグモたちと交流を深めているが、ネットで調べてみると、越冬して何年も生きる、という彼らも、いつかはその最期を迎える。そしてそれが、今日、という子に遭遇することもよくある。

少しずつ動きが鈍くなり、あれ?死んじゃったの?と思いきや、またいなくなっていて、あ、大丈夫だったのか、と思ったら、翌日また出てきていて、チョンっと触れたり(☜指でではなく)、ふーっと息を吹きかけると少しだけ動いているが、次に気づいたときには、命が無くなっている、ということが多い。最後に会いに来てくれたのかな、と(勝手に)思って、その亡骸を秋に家の裏に植えた月桂樹の小さな樹の下に埋める。他の仲間たちもそこにいるから寂しくないからね、と。

蜘蛛の埋葬をして手を合わせて、傍目から見ると、とうとう頭おかしくなっちゃった?ではあるが、ここで暮らしていると、たまにしか邂逅できない鹿のファミリー、猪親子、へびを加えてウロウロしているタヌキ、おじいさんにロールパンを投げてもらうのが大好きなトンビ、それを横取りするために待機しているカラス、様々な声で鳴く鳥たち、毎朝生活通路トンネルから顔を出した跡を残しているモグラ、それに食べられてもまだまだいるぷくぷくに肥ったミミズ、どういう事情か知らないがわざわざここに捨てられた犬や猫、その子どもたち、そんな生き物すべてがこの山での同居人という気持ちが強くなる。おはよう、晴れてよかったね!昨晩は寒かったよね、大丈夫だった?と声をかける日常。

その中でかなり身近な存在として、コアシダカグモがいる。ネットの動画で、孵化や脱皮の様子などを眺めては感動し、さらに愛着を深める今日この頃。名前は、だいたい「くもじい」か「くもすけ」。代々、みんなそれ。

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