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第百五話:夫が部下の解雇を求めていた理由

 そのあとも相変わらず夫婦関係は上手くいっていなかった。むしろセックスを拒否するようになってから、夫は常にイライラして関係は悪化していた。そこで夫がどのような反応をするかは分からなかったが、正直に自分の気持ちを話す機会を設けた。そこで夫に愛情を感じておらず、息子の父親としてしか見れていないこと、またこのままお互いイライラして過ごすよりは、距離を置き息子の父親母親として協力し合える関係を将来のために作りたいことなどを話した。思った通り全く理解されることはなかった。

 いま愛情がないということは、昔からなかったということだと決めつけられ、俺の時間を無駄にした、家賃などの生活費を払っているからって偉そうに振舞うな、妻らしく夫を立てろなどと言われてしまった。

 次の日も次の日も同じように話し合った。そしてその次の日夫から「二週間自分に時間をくれ!お前の気持ちを変えて見せるから!」と宣言された。内心自分の気持ちは急に変わった訳ではなく徐々に起こっていたことで、二週間で気持ちが変わるとは到底思うことができなかった。ただそれを最初から決めつけるのもどうかと思ったので、その条件を呑むことにした。

 それで一旦落ち着いたと思った数時間後だった。また凄い剣幕で夫が私のところへやって来て、「マイケルをクビにしろ」と言ってきた。「アイツが俺たちを別れさせようと企んでいる、だからこういう風になっているのはアイツのせいなんだ。俺たちのことが大事ならクビにできるよな。」と凄まれた。意味が全く分からなかったので、別れさせようとしているというのはどういうことなのか説明を求めたが、なかなか話そうとしない。詳しく説明してもらえない状態で、部下をクビにすることはできないことをきっぱりと言った。

 マイケルと浮気しているから、擁護するのかと言われ続けたが、詳細を話してと言い続けた。すると一時間くらい経ったころ、「アイツは黒魔術師に頻繁に連絡を取って、俺たちが別れるようにお願いしていることを俺はつきとめた」と大真面目な顔して言い出した。それを聞いて、もうこの人とは理解し合えることはないだろうなと感じた。そして、自分が黒魔術の存在を信じていないこと、そんな理由でそれが誰であってもクビにはできないことを何度も伝えた。夫は激怒していたが、数時間後言い争いは収まった。でも今思うと、夫はこの時私が説明したことに少しも納得などしていなかったのだと思う。

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