見出し画像

九州民藝旅2日目①

朝、(正式には明け方?夜明け?)ニワトリの「コケコッコー」で目が覚める。

まさかの時間に起こされ、それから何時間置きなのか何回か鳴き声が聞こえてきた。自分が人生でまさかこんな体験をするとは思ってもみなかった。

それからのそのそと起き、外に出る。思っていたより寒くなく、外の空気が気持ちいい。今日は、おとなりの県、大分にある「小鹿田焼の里」に行く予定だ。

八女から意外と近く、興味深い場所でもあったので行ってみたいと思っていた。
朝ごはんを食べながら運転ルートを確認しつつ、昨日のご夫婦にルートをを聞いてみた。小鹿田焼の里に行ったことがあると昨日聞いていたからだ。

Googleマップを見ながら、あまりに山道のルートは昨日の経験から怖いと思っていたので避けたいところだった。そこで、ご夫婦が教えてくれたルートが良さそうだったのでその道で行くことにした。

出発直前、ご夫婦が連絡先を教えてくれて感動した。「また会いましょう。」と話し、こうやって全国に知り合いが増えていくことは本当にうれしくて楽しいなと思った。
オーナーさんも「間に合って良かった。」とお見送りに来てくれた。来てすぐにニワトリ小屋のニワトリを外に出していたから面白かった。



いよいよ超難関な車を出す作業。一度バックして切り返し、前から出さねばならぬ。狭すぎてできるか不安だったけど、オーナーさんが外から誘導してくれて本当に心強くて助かった。切り返した後、前にニワトリがいたので

「ニワトリがいるーーー!!!怖いーー!!!」

と叫んでいると、

「引いても大丈夫。」

とサラッと言っていたことが今回の旅で一番面白かった出来事かもしれない。

切り返しができ、前に進めるようになり感謝の気持ちを伝え、天空の茶屋敷を後にした。帰りも細い山道なので気を張りながら運転した。
そこからなんとか普通の道になり、安心して運転していた。
が、しかし、小鹿田焼の里に近づいてきてやっと着くぞ!という直前、まさかの道が通行止め…。

「え・・・ここまで来たのに・・・。」

と絶望を感じながらも一度止まって考える。Googleマップを見るともう一つの道があった。
しかし、地図で見る限りかなり道が細い。「これ、だいぶ細い道なんじゃ…。」と不安がよぎる。進むべきか、いやあきらめるか、迷いに迷ったあげく勇気を出して進むことにした。

道はギリギリの本当に細い山道で、ガードレールやコンクリートのある道ではない。「こんなところ車通ることあるのか?!」と思いながらも一応車が通っているであろうタイヤの通った跡があり、工事現場が近くにあったのでおそらく軽トラなどが通っているかもしれない道だから通れるはず!と思って運転した。

後々考えてみたら、こんな一本道、前から車が来たり、通行止めであればもう終わりだと思った。あのときの自分は、ここまでやっと来たから行きたい!という想いがあったのかもしれない。大袈裟かもしれないけど、本気で「死」を感じた運転だった。

時速10kmぐらいのほぼ歩いているようなヒヤヒヤする運転がやっと終わり、前の道が開けてきた。ほっとすると、そこはもう「小鹿田焼の里」だった。


車を駐車し、スマホを見ると圏外なことに驚く。

「ここの里の人たちはいったいどうやって生活しているんだろう・・・。」

そう思わずにはいられなかった。

少し歩くと何やら「ギー、ゴトン、ギー、ゴトン」という大きな音が響いている。
小鹿田焼特有の「唐臼」の音だ。


ここでは、土を20〜30日ほどかけてじっくり唐臼でこなごなにする。
その砕かれた土の粉を使って陶器を作っているのである。
この事実を知ったときはあまりにも衝撃的で、陶磁器を作る過程でそんな工程があることも知らなかったし、あまりにも時間がかかる原始的なやり方が現代でも残っていることに信じられなかった。

この唐臼が一つだけでなく、里のあちこちにあり、かなり大きな音がずーっと響いているのである。もはや生活の一部。
そんな唐臼に興奮しながらわずか9件しかない窯元を巡る。



この里一体が窯元であり、生活をしている場なので、それぞれ家と工房などが一緒になっており、庭にはたくさんのうつわたちが干されていたり、作業中の土が山盛り置かれていたり、職人さんたちはろくろを回していたり、本当に普段の暮らしの様子を見させてもらった気分だった。



それぞれの工房に併設されたお店を見るが、あれ?と思うほど商品がない。
何件か回っても品薄なのだ。お店によってはたくさんあったけれど、全体として少なく、来たシーズンが悪かったかなと思いつつ「ピン!」とくるものはないか探してみる。

どこのお店でうつわを見ていてなんとなく感じた違和感。
今まで行った窯元や工房やお店などはお客さんや観光客と話すことがなれていたり、話してくれたのだが、ここはなんだか違う。職人気質が強い人が多いのか、作ることに専念しているような雰囲気で、なんだか話しかけてはいけないような見えない何かを肌で感じたのだ。
これがいわゆる人里離れた集落の雰囲気なのか、「小鹿田焼の里」独特の雰囲気なのかはわからないが、私はそういう雰囲気を感じとってしまった。(あくまで個人の感想)

最終的に、自分好みのうつわが多かったお店に出会った。入った瞬間に「これだ!」と思ううつわに出会ったのでお持ち帰りした。


なんだか現代とは思えない不思議な場所だった。それでも、実際に見て体感できて本当に良かった。



そして、きょうから3泊予定のゲストハウスに向かう。
向かうまでの道や昨日の道でも思ったが、やはり山道は土砂崩れや災害が多いのか工事をしていることが多かった。山道は本当に怖いなと今回の旅で勉強になった。

②へつづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?