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【良書】玉樹真一郎 著『「ついやってしまう」体験のつくりかた――人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ』

体験のしくみを解説する本 (2019/8/7・ダイヤモンド社)ゆえに、この本自体に仕掛けが施されている…。これから読まれる方はぜひ紙でどうぞ。(私は電子で読んだけど、電子向きではなかったけれど…それでも)とても良い本でした。

「心さえ動けば、それは体験です」

ゲームはUXを学ぶのに格好の題材だ、というのをどこかで読んだことがあります。この本は、任天堂に限らず様々なゲームを題材に、分かりやすい言葉で”「つい」何かさせてしまう仕掛け”について解説しています。

とても分かりやすい本です。(なるべく「ネタバレ」がない状態で読んだ方が面白いので、紹介を書くのが少し難しい…。ちょっとだけ、書いちゃうけど)

たとえば、”デザインにおいてなぜ文脈が大切なのか”(というか、デザインの文脈って何)といった、専門外の人からすると「ちょっと小難しいこと」が、頭ではなく心で分かります。なぜそんな構成なのか。これ自体は第1章に答えがあって、人は、自発的に学んだことは、一生否定できないほどに深く信じる。(略)直感的にわかるものは、もはやおもしろい。から。("直感のデザイン")

著者の玉樹さんは、体験の定義を、「心さえ動けば、それは体験です」と記しています。読み手がなるべく多くの体験をすることで「体験」を学べるように、まるで設計するように執筆されたのだなと感じました。

(それと、個人的にはビジネス本としてだけでなく、子どもの世話をするすべての人にもおすすめなのだと思います。「子育てはマネジメントに活きる」とはよく聞きますが、最初から読み進めてから全体の94%経った頃、そのことが理屈じゃなくて感情で分かるようになります)

この本が誘い掛ける問い

なぜ、スーパーマリオは世界一売れたのか?
何をしたら勝ちなのか。このゲームの一番大切なルールは何なのか?

なぜドラクエは、文字と数字ばかりが並ぶのに、眠気を我慢してでも遊び続けられたのか?

なぜ、文字も言葉も出てこないゲームが、「物語性が優れている」という評価で無数の賞を獲得したのか。

ここで書いてもつまらないので、代わりに本書の目次を添えておきます。

はじめに
目次
第1章 人はなぜ「ついやってしまう」のか

  直感のデザイン
   どんなゲームが売れるのか
   メッセンジャーとしてのマリオ
   クリボーに出会ったプレイヤーが感じる奇妙なこと
   直感のデザインの構造
   おもしろそうと思わせるより大切なこと
   誰もが思わず解いてしまう問題の条件
   シンプルで簡単なものをつくる難しさ
   もうひとつの直感の起点
   ユーザに寄り添うとはどういうことか
第2章 人はなぜ「つい夢中になってしまう」のか
  驚きのデザイン
   ゲームの教科書としてのドラゴンクエスト
   なぜ「ぱふぱふ」なのか
   プレイヤーの予想を外すという体験デザイン
   きっかけは、ふたつの思い込み
   驚きのデザインの構造
   10種のタブーのモチーフ
   コンテンツの基本は直感と驚きの組み合わせ
第3章 人はなぜ「つい誰かに言いたくなってしまう」のか
  物語のデザイン
   物語はどんな形をしているか
   断片的に語る、波をつけて語る、未来に語る
   体験の意義
   成長のモチーフ1 「ない」を集める
   時間は目に見えないし、問題は終わらない
   成長のモチーフ2 選ぶことで得られるもの
   成長をもたらすのにうってつけの体験
   成長のモチーフ3 旅の同行者
   客観を主観へと入れ替える
   成長の果てでなければたどりつけない体験
   なぜ物語はスタートに戻るのか
   物語のデザインの構造/体験と記憶
終章 私たちを突き動かす「体験→感情→記憶」
  体験デザインの正体
   体験と記憶、そして感情
   体験デザインの研究領域
巻末1 「体験の作りかた」の使いかた(実践編)
  1ページでまとめ
  応用1 考える/企画
  応用2 話し合う/ファシリテーション
  応用3 伝える/プレゼンテーション
  応用4 設計する/プロダクトデザイン
  応用5 育てる/マネジメント
おわりに
巻末2 体験デザインをより深く学ぶための参考資料

個人的には

アフォーダンスとシグニファイアの話や、3つの体験デザインのまとめの図など、お気に入りです。勉強になりました。

あと、子育ての実体験を切り口にマネジメントへの活かし方を紹介した話は、「ユニバーサルデザイン」的発想だなと思いました。

タスクを具体的な固有名詞で想起できるか確認せよ
わざとまちがってみせよ/まちがいを体験させよ
教える側と教えられる側がいっしょに未知の体験をせよ

道筋が見えないまま何か指示されたところで、何をどうしていいのか分からないのは大人も子どもも同じ。「子どもにやさしい」とは、「大人にもやさしい」のだな、って。

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