概念と概念の機能とは何か。
私は立教大学大学院のリーダーシップ開発コース修士2年生で、組織開発や人材開発の研究をしています。絶賛、修士論文を執筆中です。
修士論文を執筆する中で、「この組織の課題の中心にある学術概念は何か」という質問を何度も自分に問うています。
研究する上で、とても重要な学術概念。
今回は「概念」について以下の本を参考にまとめていこうと思います。
参考文献:組織行動論の考え方・使い方 -- 良質のエビデンスを手にするために/服部泰宏 (著)
概念とは
そもそも、概念とは何でしょうか。この本では、概念の定義をこう記しています。
平たく言えば、「物事に共通した事柄を言葉で表現したもの」と言えます。
本の中では、「犬」という言葉を聞けば、ほとんどの人が「犬」ををイメージすることができるのは、「概念」があるからだ、と述べています。
社会学者のタルコット・パーソンズは、こうした概念の働きを「サーチライト」にたとえています。(Parsons,1937)
サーチライトとしての概念の2つの機能
パーソンズのサーチライトとしての概念には2つの機能があると言われています。
1つ目は、それまでに一括りにされていた事柄を区別し、違いを示すことで、その現象に光を当てるという機能。
ここでは例として、「フリーター」と「ニート」を出しています。就業年齢に達していながら正社員として働かない人々のことを「フリーター」と呼んでいたのが、2000年代に「働く意思もなく進学等もしていない無業の人」のことを指す「ニート」という概念が登場してから、働く意思はあるが何らかの理由により正社員としての職を得ていないフリーターと、働く意思のない無業者であるニートが、明確に区別されました。概念が、私たちの社会に対する見方を変えた、とここでは述べています。
2つ目は、その概念が登場するまではバラバラでしかなかった物事の間に新しい共通性を見つけて、関係性を見出すことです。
ここでは例として「ハラスメント」という概念を出しています。「ハラスメント」という概念の登場によって、これまで別々に見られていた言動が「セクシャル・ハラスメント」「パワー・ハラスメント」「アルコール・ハラスメント」というように、共通のカテゴリに属するものとして理解されるようになりました。
概念のバリエーション
具体的に、概念には大きく分けて2種類あると言われています。
一般変数概念(general variable)
文化や時間の制約を受けない連続体のことを言います。(Hage,1972,p.12)
国際化、離職率、年齢のように「高い」から「低い」といった幅を持つ値を取りうる、単独もしくは複数の変量の組み合わせによって現象を捉えるものを指します。
特定非変数概念(specific variable)
歴史的に制約された範疇を指します。(Hage,1972,p.12)
温度や年齢のように、歴史的な時期や場所、文化に制約されることなく幅広い現象に適用しうる概念とは異なり、「資本主義」や「ホワイトカラー」のように歴史上のある時点において生起する現象であったり、仮にどの時期にも生起するとしてもその意味合いが時代・文化・社会によって異なったりするものを指します。
どちらもアンケート調査によって測ることができ、分析に用いることもできますが、特定非変数概念は、一般変数概念に比べて、適用できる分析の種類など様々な点が制約されるため、実際の分析は困難を伴うことが多いとのことです。
この本では、「特定非変数はとても便利だが、特定非変数を用いると、身近な現象の機微をつかみ損ねる可能性がある」と警鐘をならしています。
概念にはバリエーションがあり、概念が登場することで、社会に対する見方を変えることもあれば、見落としてしまいがちな差異の認識が難しくなることもあります。概念そのものの意味や、概念の性質を理解した上で、取り扱うことが大切な気がします。
次回のnoteでは、概念の構成要素と、構成概念とは何か、についてまとめます!