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何でもなくこの上ない幸せ

特に何も予定せず迎えた休日
自然に目が覚めた時間に起き、遅めの朝食をとる。
「こんなに天気がいいのにもったいないね」と君。
でも、着替えてどこかに出かけるには出遅れてるし、なんとなく億劫な二人。
「お昼にパン買いに行かない?歩いて」と提案する私。

お昼頃、二人してスエットのまま外へ出る。
雲一つない青空の下、並んで歩きだす。
普段なら車でさっと通り過ぎてしまうだけの道をのんびりと歩く。
晴れているとは言え、冬空の下、できるだけ日向の道を選びながら。

20分ほど歩いていつものパン屋に到着。
「明日の朝の分まで買いなよ」と君に勧められるまま、食べたいパンを次々トレーに乗せていく。
パンの並ぶ中にたこ焼きのパックを見つけて、二人して小さく歓声をあげる。
「しかも1パック350円!安い!」
たくさんのパンとたこ焼きをエコバッグに入れて、ほくほくしながら店をでる。

帰りは少し遠回りでも違う道で帰るのが、
二人のお気に入り。その方が気分が変わって楽しい。いつの間にか空き地になったとこや、真新しいマンションを発見しながら、ぶらぶらと。


家に帰り着き、お茶を淹れて、昼食。
いつも君がキッチンばさみで器用に半分に切ってくれるから、
全種類のパンを半分ずつ一緒に食べる。
しょっぱいのと甘いのを交互に。

昼食後、まだまだ晴れてる空を見上げて、
このまま昼寝してしまうのもなんだからと、また、散歩に出かけることにする。こうなるともはや徘徊だねと二人して苦笑い。
次はリニューアルしたばかりのホームセンターにでも行ってみようか。
徘徊とはいえ、目的地はあった方が楽しい。


川沿いに土手を歩いていく。
唐突に君が言いだす、
「小学校の頃とかにさ、運動会の前に運動場の石拾いしなかった?」
「したした!」
「あれさ、集めた砂利はどこにいったんだろう?」
集めた記憶はあるけど、その後の砂利の行方についてなんて気にしたこともなかったと、二人して考え込む。
そんな他愛もない会話ばかりしながら。


やっとホームセンターに着いた頃には40分くらい歩いてて、少し疲れを感じながらも新しくなった店内を物色する。

アウトドアコーナーで見つけたセール品のメスティン(野外調理に使うアルミ製の飯盒のこと)に目が留まる。
「これ百均のより安くない?!」
「しかもおっきい!袋麺がそのまま入るっていいよね!」
「キャンプで料理する時に便利かも」
そう言えば、去年のキャンプで君のメスティンを壊してしまった(あろうことか空焚きしすぎて底が溶けた)ことを思い出す。
「これ、買ってあげようか?壊したやつの弁償ってことで。」
この一言で、新しいメスティンを買うことが決定する。

その後も資材コーナーの何に使うのか全く分からない部品を眺め、
溶接コーナーで、映画LEONの主人公になれそうな眼鏡を発見して笑いあったり。

結局、メスティンと他に安い日用品をいくつか買い、店を後にする。すっかり西に傾いた太陽の中、寒くなってきたね、と家路を急ぐ。



川では鴨達が忙しなく水中に潜っては、浮き上がってを繰り返しているのが見える。魚が多い時間帯なのだろうか。
少し離れたところに子鴨が一羽、餌をとるのに夢中になっている。鴨の家族は気づいているのかな、心配だねなどと云いあいながら歩き去る。


こんな何でもない休日の、
あまりの尊さと愛おしさに、時々めまいすら覚える。傍からみたら退屈で取るに足らない、
何でもなくこの上ない幸せな一日。


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