ミャンマーで多い法務関連のトラブル

第1.トラブルの概要
 ミャンマーでは契約書の作成、法令調査、会社設立やライセンス申請、M&A関連のご相談が多いですが、トラブル関連のご相談も一定程度存在します。
 特に多いトラブルとしては、契約書を作成せずに口約束のみで話を進め、後になって以前言っていた条件と違うなどのトラブルになることが多いです。それ以外には、例えば送り出し機関のライセンスなどはミャンマー内資100%の会社しか取得できないため、ミャンマー人の方に名義を借りて事業を行っている中での名義人とのトラブル。また、十分な調査を行わずに安いコンサル会社などに依頼して会社だけ設立したものの、実はライセンスなどが必要で後からライセンスを取得していないことが問題になった事例なども存在します。今回は特に契約書作成の必要性について記載します。 

第2.契約書の意味
日本では口頭のみで信用して取引を行うことも未だにありますが、ミャンマーも含め海外で契約書を作成せずに取引を開始することは欧米企業においてはほとんどありません。
また、一般的に、新興国の裁判所では多くの場合は自国企業が有利で、日系企業など外国企業が不利になる傾向にあります。ミャンマーにおいては周辺国以上に裁判官の質が低く、汚職も多いことから、裁判を行うことをできる限り避けるべきです。
そのためには、どうすれば紛争を予防できるかという視点が重要です。最初に述べたとおり、トラブルの多くの原因は書面が存在しないことです。すなわち、相談の内容として、相手方が●●を行うと約束していたけど、約束を履行してくれないのでどうすれば良いかという話がなされ、その約束が記載されている書面を見せて欲しいと伝えると、口約束だということが多いです。
そうすると、言った言わないの水掛け論になり、弁護士としても対応しようがないときがあります。したがって、このような水掛け論を防ぐためという点のみでも、契約書をしっかりと作成してサインすることの意味は大きいと言えます。
もちろん、契約書を作成していてもその内容に相手方が違反することもありますが、それはミャンマーだけでなく日本においても同様です。ミャンマーにおいては、契約書を作成しても当然に内容を守らなくて良いという考え方の人は少ないと感じます。
多くのトラブルの背景には、前提となる考え方が違い、きちんと意思疎通ができていないにもかかわらず、詳細な契約を作成しなかったがために、その齟齬が表面化しないまま取引を進めてしまい、後から齟齬が表面化するといった事態が多いです。

第3.小括
 以上より、繰り返しとなりますが、何らかの合意をした上で取引や事業を開始する場合には、必ず契約書を作成するようにして下さい。契約書の作成を弁護士に依頼した場合、費用が必要となります。しかし、契約書を作成せずにトラブルになった場合にも弁護士に依頼する必要があり、その場合には、通常は契約書作成時に必要となる費用以上に多くの費用が必要となり、かつ、時間や負担も大きくなります。
 したがって、長期的視点から、海外で事業を行う上で必要なコストと考え、契約書を作成することを意識して下さい。


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