怖い緊急手術 第69回 月刊中山祐次郎

備忘録のために書いておきたいのだが、僕はいま、週に3, 4件ほどの予定手術をし、週に3, 4件ほどの緊急手術をしている。

この比率はけっこう恐るべきものがあって、やっている手術の半分は緊急手術なのである。

緊急手術と言われると皆さんはどういうイメージをするだろうか。

泣き叫ぶ患者が救急車から運ばれてくる、階段をダッシュする外科医、ほとばしる血しぶき、廊下に響く怒号・・・こんな感じだろうか。

実際にそういうことが無いわけではないが、リアルな緊急手術は大きく違っている。まず、患者さんは救急車で来るとは限らない。しっとりと静かに外来を受診し、初めて診た医師が「なんじゃこりゃあ!」となり、外科医に電話がいく。たいていは若手外科医がファーストタッチをし、これはほんまもんだ、手術が必要だ、と思えば僕に電話が来る。

そのあとは、僕は電話口で若手のまとまらないプレゼンテーションを聞きつつ、電子カルテの前によっこいしょと座りCT検査の画像なんかをポチポチ見るのだ。それで、「うん、そうだね、これは緊急オペだね」となったところで救急外来なり外科外来なり患者さんに会いに行く。そして、頭にデータは入っているので、さっと診察して、どれくらい急がねばならないかを決めるのだ。人によってはASAP(As soon as possible、大至急)だし、人によってはまあ今日の予定手術が終わった後でも大丈夫、ということもある。

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