シリーズものをうまく続けるコツとは? 秋谷りんこ先生との会食で
みなさんこんにちは、中山祐次郎です。外科医、作家やっております。
先日、「ナースの卯月に視えるもの」で話題沸騰の秋谷りんこ先生とお会いしました。横浜で。
ごく小規模にサクッと、というつもりだったのですが、いろいろとお気遣いをいただいた結果、(文藝春秋社の偉い人二人と秋谷さん) v.s. (幻冬舎の偉い人二人と中山)の6人で食事というなんとも大きな会になりまして。
6人となると、全員が一つの話題で話す上限の人数だと思います。ですが、みなさんに大変なお気遣いをいただいき、秋谷さんとじっくりお話をすることができました(本当はあと2時間くらいしたかった)。二社の皆様、ご馳走様でした!
会食はといえば、話を聞きたすぎる中山が秋谷さんに質問をし、答えていただくと辣腕の編集者さんらしく、みなさん間髪入れずに的確すぎる一言を差し込んでくる、というとんでもないスピード感の会でした。あまりに会話が面白く、ハイコンテクストで、かつ編集者の皆さんの個性がギンギンにでておりました。会話に集中しすぎたせいで、はっきり申し上げて、料理の味を一つも覚えておりません。申し訳ありません。
帰宅後、数日経った今でも「文学熱」が冷めず、どうにも参っております。「中山、文学をやれ」と言われたような心地がいたします。
お話の中で、秋谷さんから「シリーズものを書くコツってなんですか」というようなご質問をいただいたのに、しっかりお答えできなかったのが心残りです。なので、このnoteでお返事をしたいと思います。ご質問の正確な文言を忘れてしまい、ニュアンスが間違っていたらごめんなさい。
シリーズもの。
中山だってベテランではなく、いま幻冬舎の「泣くな研修医」シリーズが7巻、新潮社の「俺たちは神じゃない」シリーズが1巻(今年中に次巻が出ます)というたった2シリーズをやり出したばかりです。ですが、ありがたいことにご好評をいただいているので、コツとまでいきませんが、「中山はこうやっている」というものを記したいと思います。
島耕作かドラえもんか
シリーズものを書くコツとして、まずは自分の想定している物語は島耕作かドラえもんか、と考える必要があるのです。どういう意味か、説明していきます。
余談ですが、私は「泣くな研修医」を書いているとき、明確に「3部作」を意識していました。一冊目が売れなければ出版社は出してくれないという事実は知っていましたが、それでも続編があと二つ出せるものだと勝手に突っ走っていたのです。
シリーズものって、大きく分けて
・島耕作方式(主人公がだんだん成長していくやつ)
・ドラえもん・サザエさん方式(ずっと同じ年齢・舞台のやつ)
の2種類があります。
私は、「泣くな研修医」という研修医の物語は、まさに島耕作方式がぴったりだと思っておりました。主人公の成長は読者自身も楽しめるし、成長してステージが変わるごとにいろんな事件が起きるからです。何を隠そう私は漫画・島耕作の超絶ファンで、全巻をおそらく8回ずつくらいは読んでいますのでだいたい頭に入っています(最近の副知事とかは読めていませんが)。30代から70代になるまで書けるんですから、人気がありさえすれば無限に書けるよなあ・・・という作者側のズルい都合です。そういうわけで、島耕作方式で続けています。これからも続編を書き続ける予定です。
一方で、新潮社の「俺たちは神じゃない」シリーズはドラえもん・サザエさん方式(ずっと同じ年齢・舞台のやつ)を採用しています。秋ごろ出版になる次巻は、バディの剣崎・松島ともに40歳で第1巻と同じ時代です。同じところに、いろんな事件がやってくるわけです。
ですので、シリーズものを書くコツとして、まずは自分の想定している物語は島耕作かドラえもんか、と考える必要があるのです。
それが決まったら、あとは簡単です。
島耕作方式を選んだら
島耕作を選んだら、まずは島耕作を熟読します。妻と娘一人がいる彼は34歳くらいで係長としてオフィスラブ(職場内恋愛・不倫です)をし、ニューヨークへ行き、奇妙な大恋愛をし、帰国して離婚し、会社内の派閥争いに呑まれて知人の探偵とひっくり返し社長を交代させ京都へいき元芸妓と恋愛して帰ってきて福岡へ行きまた恋愛して帰ってきて中国へ行き帰ってきて、などと目まぐるしく展開する本作に心奪われることでしょう。
これでもう分かったと思います。
物語は、以下のものを変更しながら主人公だけを成長させていくのです。
・舞台(地域や会社)
・取り巻く人々(友人、上司部下、恋人)
・トラブル(家庭トラブル、会社からクビと言われる、犯罪に巻き込まれる)
これだけで、もう5巻までは完成です。
泣くな研修医では、
1巻は研修医として初めて医師の仕事をする25歳の主人公を、同期や上司、患者、恋人とともに描き、
2巻では1巻の2年後に後輩医師凛子がきてがん患者を担当し父が倒れ、
3巻ではその2年後、がん患者と富士山に上り、
などという感じで、舞台も取り巻く人々もトラブルもすべていろいろと変化しています。
あなたが作った登場人物を別のところに連れていき、別のトラブルを起こしてみて、どんな事象が起きたかを克明に正確に記録する。私はそうやって書いています。
では、ドラえもん方式を選んだらどうなるか・・・
そちらはまた今度、時間がある時にでもお話ししましょう。それではまた。(なぜか最後は手紙風になってしまった笑)
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