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書評:『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』

『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著、池村千秋訳、東洋経済新報社

「何が幸せかは自分で見つけなければ」


 人生100年時代と言われて久しい。これからバリバリと働いていく中年層や希望に満ちた若年層にとって、100年という時間はどんな意味を持つのだろうか。老後の資金は持つのか、病気をせずに健康でいられるのか。そんな人達に特に読んでもらいたい。

 著者は、ロンドンビジネススクールで教鞭を振るうグラットン、スコットの両教授。この本の中で、著者は100年という時間軸で見ると、老年層、中年層、若年層はどのような人生が考えられるか、複数のモデルシナリオを提示している。さらに、そのシナリオにもとづいて各年代のライフステージでは何に気をつけ、どんな準備が必要かを教えてくれる。

 老年層が送ってきた従来型の教育・仕事・リタイアという「3ステージの人生」は、医療の進歩やビジネス環境の変化などによって終焉を迎える。中年層や若年層が3ステージの人生を送りたくても、若い時にためた貯金だけで生活を送るのは資金的に難しくなる。これからの人生は、やりたいことを見つけるために様々な経験に挑戦する「エクスプローラー(探検者)」、自分自身で自分の仕事を生み出す「インディペンデント・プロデューサー」、複数の仕事を同時に行う「ポートフォリオ・ワーカー」という役割を繰り返す「マルチステージ」型になっていく。
 その中で、人は金銭という有形資産だけでなく、自分自身のスキルや知識などの「生産性資産」、健康などの「活力資産」新しいステージに移行するための「変身資産」という異なる種類の資産を蓄積・使用していく。
 マルチステージの人生では何が正解かというものはなく、一人ひとりが自分の人生を設計していくのだ。ゲーテは「人生は自分探しの旅だ」と言ったが、まさにこの言葉が強く意識される時代になった。

 60歳で定年退職を迎え100歳まで生きる場合、残りの40年をどう過ごすのかを考えると少し途方に暮れてしまう人も多いだろう。毎日ゴルフ三昧?40年も続きます?
 過去にオーナー系の食品会社の海外事業開発の支援をしたことがあった。オーナーはその時にはもう90歳近くだったが、ひじょうにハツラツとしていて、我々と一緒に厚いステーキを食べていた。その人はまさに100年時代を生きるモデルだが、もしかしたら今の時代には稀なケースなのかもしれない。
 しかし、マルチステージの人生になって、自分の過去の資産を活かしながら、シニアでも新しいことに挑戦できる世の中になるという未来には希望が持てる。

 私は、特定の企業に属さずにコンサルティングを続けている。この書籍で提唱されている「インディペンデント・プロデューサー」の形態に近い。通常の企業勤務であればやるべきことや役割が決められていて、ある意味で継続性が保証されいてる。しかし、「インディペンデント・プロデューサー」の場合は、自分のスキル・経験が活かせる案件が選べるというフレキシビリティー(柔軟性)はあるものの、継続性という点ではデメリットもある。
 独立したサービス提供者としてこのようなメリット・デメリットを理解した上で臨めるか、さらに受け手側の企業としてシニアな外部パートナーを使いこなせるかなど社会全体が新しい労働形態に伴う課題を解決しなければならない。

自分自身のこれまでの人生を振り返る時の参考にもなるし、今後どんな人生を歩んでいくのかを考える時にも使える一冊です。


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