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ついに売れてしまうかニューヨーク!

キングオブコント2020のファイナリストになったニューヨーク。

昨年のM-1グランプリファイナリストでもあり、いわゆるダブルファイナリスト。間違いなく快挙。

しかし、ニューヨークのM-1決勝進出は昨年が初。
キングオブコントの決勝進出も今年が初。

なんだかんだで屋敷も嶋佐も30歳を超え
フレッシュな若手ではない。芸歴も10年を超えた。

昔から注目はずっとされていた。
長期にわたって売れかけており
ネクストブレイクと言われ続けていた2人。

ついに…時が来たのか?

ただ、よく考えたら当たり前の話だ。

ニューヨークは、ずっとおもしろかった。

業界にもファンが多く、間違いなく芸人界隈でも一目置かれている。

ニューヨークの入門編は
ネタの切れ味に酔いしれるところからスタートする。

このベストオブニューヨークというニューヨークのネタを詰め合わせたDVD。

まず、これを観てほしい。

そして、これは誕生日プレゼントなどにも最適。

少し性格のひねくれた友達の誕生日が近ければ、このDVDを差し上げてみましょう。
確実に喜んでもらえます。

このDVDを観て響くか響かないか?

ある種の、心理テストみたいなものだ。
普段、あまり面白いと評価されていない友達でも、このDVDを観て喜んでいれば、きっちりアンテナを張っていると認定していい。

それほどにセンスの詰め合わせで、このDVDは構成されております。なんにせよ必見です。

ネタのクオリティは言わずもがな…
それなのに、ニューヨークが売れ切ることはなかった。

その理由を私なりの見解で紐解いていくと…

まず、既存のテレビとの相性が悪かった。

これは大きいだろう。

ニューヨークが20代の頃、テレビの世界は何となくMCが決まっていた。

今でこそ少し世代交代しつつあるが、当時は同じMCが番組を回すことが主流であり、その中で一枠食い込むことは至難の業だった。

まず、キャラクターやイジられポイントは必須。
ニューヨークの同期にはマテンロウのアントニーやデニスの植野などハーフ芸人や、おかずクラブ、横澤夏子など個性豊かな女芸人もいた。

その中で考えれば、ニューヨークは見た目に特徴があるわけでもなく、明確なイジりポイントもない。
MC目線で考えれば、「どこをどう触って面白くすればいいの?」と、頭を悩ませることになる。

回しにくいし、台本も書きづらい。

テレビの決められた枠組みの中では、せっかくのセンスも活かしづらかった。
この手の悩みを持つ若手は、本当にたくさんいると思われる。

イジられるのは不得意だったかもしれないが
ニューヨークはネタの芸人として突破口を切り開く。
芸人は元来ネタなのだ。

単独ライブは毎回超満員。
ネタのクオリティは抜群。
業界関係者もたくさん観に来る。

仕事として観に行く意識はなく、本当に楽しみに観れるライブ。素人に戻って素で笑う。
正直、仕事上のお付き合いで行ったお笑いライブは何度かあるが、やはり楽しめることは少ない。

あとで感想なんて言おう…?
ライブを観ながら考えることもしばしば。
これは、あるあるだと思います。

しかし、ニューヨークは本当に笑わせてくれるし、本当に観てよかったと心から思わせてくれる。
鬼越トマホークとニューヨークが裏切ったことは1度もない。

笑えるし、刺さる。

そう、ネタが刺してくる場合がある。

どういう意味?って聞かれても答えにくい。

着眼点がいちいち絶妙とでも言うのか…
とにかく、目線遊びとテーマが抜群。

ニューヨークのネタは意地悪かつイジっていく目線を漂わせるものが多くを占めるが、こちらが構えている目線を余裕で超えてくる。

職業病かもしれないが、ある程度ネタの設定を観て、こちらもタカを括る。
ようは、このあと、こんな展開で来そうだなと勝手に予想してしまう。

エピソードトークでもよくあるが、だいたいオチまでの流れを予想してしまうクセがついてしまった。

何百、何千というエピソードトークを聞いてきた結果、私はある程度オチまでの流れを当ててしまえる脳みそになってしまった。
もはや、これは特技かもしれないが、純粋に笑えることは少なくなってきている。

しかし、ニューヨークのネタは毎回超えてくる。
展開力で超えてくるというよりは、細かい部分で超えてくる独特の色味がある。

例えば、このシェアハウスのコント。

流れもやりとりも最高なのだが、やっぱり絶妙なタイミングで出てくる水タバコはおもろい。

この感性は、なかなか人を選ぶかもしれませんが、選ばれた時にはハマらざるをえない。

ピンポイントを狙う共感と独特な意外性。
この2つの武器を常にぶら下げ、ニューヨークはホーム試合では全線全勝とも言えるほどの強さだった。

さらには、漫才もコントもできる二刀流がゆえ
M-1グランプリとキングオブコント
賞レースをキッカケに羽ばたく…はずだった。

しかし、ニューヨークはM-1でもキングオブコントでも決勝へ行けなかった。
なんと、10年。
あのニューヨークが10年も大きな賞レースで日の目を見なかった。

既存のテレビの型にハマらない。
M-1、KOCで決勝へ行けない。

この2つの共通点はアウェイ試合。

ホームでは圧倒的に強いニューヨークだが
アウェイに乗り込むと、なりを潜めた。

ここの原因については、きっちりと説明できるロジックがある。

ニューヨークは観る側と共犯関係があってこそ光る芸人だということ。

個性と得意技を最初に知ってもらう必要があるのだ。

一緒に楽しめる準備が整い次第、爆発を起こすという、一種の時限爆弾型の笑いを生業としていた。

ゆえに、どうしてもスロースターターとなり、瞬発力で対応するのが難しい。
格闘技で例えれば、「5ラウンドまでいけば、あの技が出ますよ」と言われているようなもの。

ホームでは何ラウンドでも観てくれるが、アウェイの場は5ラウンドまで待ってくれない。
基本が1ラウンド一本勝負なのだ。

どこに得意技が隠れているのか不明なまま、終了のゴングが鳴り響く。

5ラウンドまで待ってもらうためには、賞レースで結果を残すしかなかった。
しかし、賞レースでの予選でも無情のゴングが鳴り続けた。

ネタの選択ミスなど、初歩的な部分でつまずくこともあり、アウェイでの戦い方に戸惑っていた可能性もある。

だが、2016年のM-1グランプリの準決勝…

漫才に魂を込めたニューヨークがそこにはいた。

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