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<ラグビー>ブレディスローカップ第4戦兼TN(トライネーションズ)第2戦,プレビュー

参考とした記事
https://www.allblacks.com/news/all-blacks-team-named-for-investec-tri-nations-brisbane-test/
https://www.nzherald.co.nz/sport/bledisloe-cup-rugby-all-blacks-coach-ian-foster-keeps-faith-in-rieko-ioane-with-start-at-wing-against-wallabies/KVJ3OTVP6UKZMUSV27GVQ7WJ3U/
https://www.nzherald.co.nz/sport/bledisloe-cup-rugby-felt-like-giving-up-rugby-new-all-black-akira-ioane-opens-up-on-mental-struggles/SYQXMX73RDVINO5KMY2OO2Z7EQ/
https://www.nzherald.co.nz/sport/bledisloe-cup-rugby-updates-all-blacks-team-naming-for-fourth-test-against-wallabies/W74Z4TKQQLIHJRWGTTKLR3YNME/
https://www.nzherald.co.nz/sport/bledisloe-cup-rugby-wallabies-pick-reece-hodge-at-first-five-for-clash-against-all-blacks-in-brisbane/CDJYFZ7NKLBKLTMDRRF3BR2DSQ/
https://www.nzherald.co.nz/sport/bledisloe-cup-rugby-all-blacks-name-four-new-faces-as-ian-foster-makes-changes-to-team-to-face-the-wallabies-in-brisbane/QTULLVTZZAQTAFD6L6FGFJFKKE/
https://www.rugby.com.au/news/2020/11/05/reece-hodge-named-at-flyhalf-against-all-blacks-in-bledisloe-4-2020

日時:2020年11月7日(土) 18:45キックオフ
場所:サンコープスタジアム,ブリスベン
レフェリー:ニック・ベリー
アシスタントレフェリー1:ベン・オキーフ
アシスタントレフェリー2:アンガス・ガードナー
TMO:ポール・ウィリアムス

オールブラックス:( )内はキャップ数。
カール・ツイヌクアフェ(15),コーディ・テイラー(53),オファ・トゥンガファシ(38),
スコット・バレット(38),サムエル・ホワイトロック(119),
アキラ・イオアネ(初),サム・ケーン(71,キャプテン),アーディ・サヴェア(46),
TJ・ペレナラ(67),ボーデン・バレット(85),
リエコ・イオアネ(31),ナガニ・ラウマフィー(14),アントン・リエナートブラウン(46),セヴ・リース(7),
ジョルディ・バレット(20)
(リザーブ)
アサフォ・アウムア(初),アレックス・ホッジマン(2),タイレル・ローマックス(3),パトリック・ツイプロツ(33),カレン・グレイス(初),ブラッド・ウェバー(5),ダミアン・マッケンジー(25),ウィル・ジョーダン(初)

オーストラリア・ワラビーズ:
ジェイムズ・スリッパー,ブランドン・パエンガアモサ,アラン・アラアラトア,
ロブ・シモンズ,マット・フィリップ,
ラッチー・スウィントン,マイケル・フーパー(キャプテン),ハリー・ウィルソン,
ニック・ホワイト,リース・ホッジ,
マリカ・コロイベテ,ハンター・パイサミ,ジョーダン・ペタイア,トム・ライト,
トム・バンクス
(リザーブ)
フォラウ・ファインガア,アンガス・ベル,タニエラ・ツポウ,ネド・ハニガン,リアム・ライト,テイト・マクダーモント,ノア・ロレシオ,フィリッポ・ダウグヌ

プレビュー:
オールブラックスのイアン・フォスター監督は,既にブレディスローカップ保持を決めていることもあり,大幅な選手交代をさせてきた。第1戦から連続出場している,HOダン・コールズ,FLシャノン・フリッゼル,NO.8ホスキンス・ソツツ,SHアーロン・スミス,SOリッチー・モウンガ,CTBジャック・グッドヒュー,WTBカレブ・クラークを休ませる。また,PRジョー・ムーディ,PRネポ・ラウララ,WTBジョージ・ブリッジは怪我などで欠場する一方,LOツポウ・ヴァアイ,FLダルトン・パパリイはメンバー外となっている。

23人の試合メンバーからは4人が初先発となる。6番FLアキラ・イオアネは,2017年の北半球遠征では,ノンキャップ試合でプレーしただけだったが,今回初キャップを得る。16番HOアサフォ・アウムアも,2017年にノンキャップの2試合でプレーしただけであり,今回プレーすれば初キャップとなる。さらに2020年U20代表の20歳のFLカレン・グレイスと,22歳の今シーズンのスーパーラグビーで大活躍したWTB/FBウィル・ジョーダンが,リザーブからの出場で初キャップを目指す。

その他の交代では,2番HOの先発にコーディ・テイラーが入り,4番LOにスコット・バレットが19番リザーブのパトリック・ツイプロツとローテーションしている。また,妻の出産で欠場していたアーディ・サヴェアがNO.8に戻った。20番FLリザーブには,ダルトン・パパリイに代わって,初キャップでタックルが売り物のカレン・グレイスが入った。

BKでは,TJ・ペレナラがSHで先発し,21番SHリザーブには今シーズン初登場となるブラッド・ウェバーが入った。SOはボーデン・バレットが先発し,22番のリザーブにはダミアン・マッケンジーが入った。12番CTBはナガニ・ラウマフィーが先発する。ボーデンの弟ジョルディは,14番WTBからFBに移動し,11番WTBにはリエコ・イオアネが入り,14番WTBのセヴ・リーズは今シーズン初登場となる。

なお,この試合では,イオアネ兄弟が,6番と11番で,バレット3兄弟が,6番,10番,15番で,それぞれ兄弟で同時先発するという珍しいケースとなった。

大ベテランの5番LOサムエル・ホワイトロックは,120キャップ目となるこの試合で100試合目の先発をし,歴代オールブラックスでは5人目の達成となる。

参考となる数字:
・ジョルディ・バレットは,これまでの過去5試合のテストマッチですべてトライを記録している。
・ブリスベンのサンコープスタジアムはワラビーズが有利な場所で,過去4試合でワラビーズは1敗しかしておらず,前回の2017年10月の対戦では23-18で勝利している。
・通算成績は,170試合,オールブラックス117勝,ワラビーズ44勝,8引き分け。ブレディスローカップは2003年以来オールブラックスが保持している。

イアン・フォスター監督のコメント:
「今週はリセットをし,チームの目標をトライネーションズ優勝に切り替えている。しかし,オールブラックスとワラビーズとのテストマッチは特別なものだ。我々はワラビーズがさらに必死になって戦ってくると予想しているので,我々も対抗せねばならない。我々はどのような状況であっても,弁解は許されないからだ」

「我々はスコッドの選手たちには大変に満足している。その中でも数人の選手は必死にアピールしており,その成果として今回のメンバー入りを勝ち取った」
「オーストラリアで3週続くテストマッチがあり,今週は引き続き厳しいゲームが予想されるので,我々は新鮮なメンバーを入れることで,チームにエネルギーを注ぎこみたい。そして,(新たに入った)選手たちは,プレーしたくてうずうずしている」

「彼らは,これまでの3~4試合のテストマッチで多くを学んでいる。また,全員を信頼している。彼らは自分たちのスキルに自信を持つべきであり,直感に基づきプレーすべきだ。それらは,過去数年で獲得したものなので,今この瞬間のひらめきに活用できるだろう」
「我々が彼らに期待するのは,そうしたことだ。細かいプレーの調整は必要であり,小さなエラーは誰にでもあるものだ。特に新たな選手はそうだ。しかし,新たな選手がプレーするチャンスを得るのは,我々としても喜びであり,チーム全体への信頼に迷いはない」

「我々は,アキラ・イオアネには非常に良い印象を持っている。彼は本当に初キャップを楽しみにしており,特別なものになっている。またアサフォ・アウムアは,リザーブからのプレーとなるが,チームにエネルギーと情熱を加えるべく,プレーを楽しみにしている」
「カレン・グレイスは,若いながら非常に良い印象を与えている。彼は好感が持てるもの静かな青年だが,もちろん試合をわくわくしながら待っている。ウィル・ジョーダンは,仕事量が非常に多いので,ポジションを勝ち取るのに値する選手だが,非常に落ち着いている。また,グランド外でのサポートを良くやってくれていることも,我々が彼を評価した理由となっている」

(COVID19のため,チームはシドニーからブリスベンに試合の数時間前の飛行機で移動し,試合後はシドニーに戻るという異例な移動になるが)
「我々は,ゲーム当日の準備を変更しているが,ゲームに臨む対応そのものを変更しているわけではない。もちろん,いつものテストマッチとは異なるが,それで影響が出るわけではない。我々は土曜日に,与えられた条件の中で試合の準備を一所懸命に行う。そして,試合開始のホイッスルが鳴るときには,万全な状態になっている」

(23歳のリエコ・イオアネは,第1戦ではトライになるボールを片手でタッチダウンしてためにノッコンした。そして,第3戦でも同じように片手でタッチダウンすることをしたが)
「リエコは,速さが戻ってきている。先々週は,ハムストリングスを痛めて欠場したが,それからかなり良くなった。第3戦ではリザーブからWTBに起用した。それも,いつもの左ではなく右だった。彼は速く,強くプレーしており,彼のそうしたプレーを評価している。そのため,今回彼に別のチャンスを与えることにした」

「リエコは,良いWTBであるとともに良いCTBでもある。(どちらをプレーするかは)そのときの状況で異なってくるだろう。我々は決してCTBからWTBに移動させたわけではない。しかし,アントン・リエナートブラウンが13番CTBで非常に良いプレーをしているので,BKラインを変更している。我々は,アントンは今現在チームで最高の13番CTBだと認識している」
「一方,我々はリエコをCTB,WTBのいずれで起用するかは決めていない。また,彼は両方で良いプレーをしている」
アキラ・イオアネのコメント等:
アキラ・イオアネは,2015年にブルーズで活躍した後オールブラックスのスコッド入りを果たした。しかし,FW3列には,サム・ケーン,アーディ・サヴェア,キアラン・リード,リアム・スクアイアー,ジェローム・カイノ,シャノン・フリッゼルらの競争相手がおり,これまでの4年間はキャップを得るチャンスがなかった。そのため,一時はラグビーを辞めることまで考えたという。

「当時は自分の頭の中では,良くない方向に行っていた。ラグビーを辞めたいと思っていたが,自分の人生で非常に苦しい時期だった」
しかし,COVID19でラグビーができなくなった時,アキラは自分を見つめ直すことができた。また,父に9~17時までの普通の仕事に就くことを相談した時,即座に「NO」という返事があったのも,「父は,背中を強く押してくれた」とアキラは感謝している。

また,前オーブルブラックス監督のスティーブ・ハンセンから,アキラはフィットネスと仕事量に欠けると指摘されたことも,問題解決に役立った。そして,2020年のスーパーラグビーで結果を出し,今回リエコと兄弟揃ってテストマッチに先発する栄誉を得た。

「兄弟でテストマッチに出るのは,長年の夢だった。それは,リエコと家族がずっと願っていたことだった」とアキラは,今回のメンバー入りを非常に喜んでいる。


ワラビーズのデイヴ・レニー監督は,引き続きチームの中心であるSOジェイムズ・オコナーの怪我が癒えていないため,先発SOには,バックスリーが専門のリース・ホッジを起用する。ホッジは,これまでテストマッチレベルでSOをプレーしたのは2試合しかなく,前の試合は,2017年に東京で日本代表に63-30と圧勝したゲームになる。また,スーパーラグビーレベルでも,バックスリーが主なポジションとなっている。なお,第3戦で先発したNZ生まれの若いSOノア・ロレシオは,22番のリザーブに下がった。

BKでは,第3戦の12番CTBで先発した若いイラエ・シモーネがメンバー外となり,代わりにハンター・パイサミを12番で先発させる。FBはダン・ハイレットペティがメンバー外となって,トム・バンクスが復帰し,14番WTBには初キャップとなるトム・ライトを先発させ,フィリポ・ダウグヌを23番のリザーブに下げた。これは,キッキングゲームへの対応とみられている。

FWでは,LOルッカン・サラカイアロトがメンバー外になった他,FLネド・ハニガンが19番のリザーブに下がり,4番LOには大ベテランのロブ・シモンズ,6番FLにはラッチー・スウィントンが入った。また,1番PRジェイムズ・スリッパーがワラビーズ13人目の100キャップ達成となる。リザーブの17番PRには,スコット・シオに代えて初キャップとなるアンガス・ベルを入れた。

オールブラックスに連敗し,ブロディスローカップを取り返せなかったデイヴ・レニー監督は,「チーム全員は先週の結果に非常にがっかりしている。そして,土曜のブリスベンのゲームで,我々の存在価値を示したい」と言葉少なに述べている。

【個人的見解】
オールブラックスは,既にブレディスローカップ保持を決めている他,来週はアルゼンチン戦を控えている(新人をアルゼンチン戦でいきなり先発デビューさせるのは不安なため,ワラビーズ戦のリザーブに入れる)こともあり,大幅な選手交代をしてきました。しかし,選手交代とは言え,ワラビーズと異なって選手層が非常に厚いオールブラックスですから,先週までのメンバーとまったく見劣りしないばかりか,このままRWC決勝でプレーしても遜色ないメンバーとなっています。

また,重要なリーダーシップグループも,コーディ・テイラー,サムエル・ホワイトロック,サム・ケーン,アーディ・サヴェア,TJ・ペレナラ,ボーデン・バレット,アントン・リエナートブラン,パトリック・ツイプロツらの,既にグループ入りしている又はこれからグループ入りすることが予想される選手が揃っています。さらに,23人の試合メンバー以外でも,リッチー・モウンガ,ダン・コールズ,アーロン・スミス,ジャック・グッドヒューらがいますので,試合のメンタル面の準備は心配ありません。

アタックについては,1番から23番までトライを取れるスキルの高い選手が揃っているので,これがはまれば先週以上の大量得点が期待されます。他方,ディフェンスについては一抹の不安が残ります。特にアキラとリエコのイオアネ兄弟,リザーブのダミアン・マッケンジーが心配される対象ですが,彼らもオールブラックスでプレーする意味を理解しているでしょうし,リザーブにはディフェンスでオールブラックス入りしたと言っても過言ではないカレン・グレイスがデビューを待っているので,十分に期待して良いでしょう。

一方のワラビーズは,さすがに先週のロレシオも苦肉の策でしたが,今週のホッジも選手層の薄さを実感させられる人選です。特にBKでは,SHニック・ホワイト以外は経験値のある選手がいないので,メンバー交代したとはいえ経験値がある選手が揃うオールブラックスには,引き続き歯が立たないのではないでしょうか。

ワラビーズが期待できるのは,ホッジのキック力であり,バックスリーの交代も先週のようなキッキングゲームで対応するためでしょう。しかし,相性の良いブリスベンとはいえ,天候が良ければ,昨年までのハリケーンズのBKをそろえたオールブラックスのBKは,ランニングゲームを仕掛けてくる可能性が高く(SOボーデン・バレットが得意とするものです),もしそうなれば後手になるワラビーズとしては,更に苦しくなりそうです。

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