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<ラグビー>スーパーラグビーパシフィック2023年シーズンを終えて(私的提言)

 先週元オールブラックス監督のスティーヴ・ハンセンが、現在のスーパーラグビーパシフィックの状態を憂えている記事を紹介した。日本のリーグワンもそうだが、ラグビーがプロスポーツとして生き残るためには、現在のような観客が十分に楽しめない内容では、将来が不安になるのも当然だろう。

 そのため、ハンセンはTMOの短縮、レッドカード基準の緩和、キックオフの時間帯を昼間に戻すこと等を提案している。これにならって私もいくつか提案してみたい。

(1)モールの廃止

 なんと言っても、PK→ゴール前ラインアウト→モール→トライというのは、見ていて全く面白くない。このプレーを見るために、お金を払ってみたいと私は思わない。ラグビー・リーグにならって廃止すべきだと思う。

(2)ラックで手を使うことの許可

 モール同様に、見ていて良くわからない上に、レフェリーの判断によってPKを取る基準や取られる側が一定していない。ラグビーの持つ曖昧さの代表的なプレーだが、もしラックで手を使うことができれば、単純なボールの奪い合いになるため、現状よりレフェリーが判断すべき反則が減少し、かつプレーの停滞時間が減少するのではないか。

(3)ラインアウトのノットストレートの緩和

 正当なコンテストをするためには、ノットストレートを判定することは必要だが、これを厳密にやっていると、ラインアウトのプレーに要する選手のエネルギーが増大してしまい、フィールドプレーなどへ影響すると思う。従って、以前は違法であったリフティングを認可したように、判断基準を大幅に緩和すれば、プレーの中断が減少する。

(4)ドロップゴールの廃止

 ラグビーはトライを取り合うスポーツである。しかし、悪質な反則については、PGで加点することも必要だ。しかし、トライできない状況で多く使用されるドロップゴールは不要だと思う。また、ドロップゴールは延長戦の場合に多く使用されるが、ドロップゴールで得点させるよりは、同点で終わった場合は、延長戦にせず、キッキングコンペティションで勝敗を決めた方が、選手の健康のためにも良いと思う。

(5)スクラムがつぶれても、ボールが出る限りは笛を吹かない。

 スクラムもレフェリーの反則を取る判断が難しいし、観客には良くわからないことが多い。しかし、ラグビーからスクラムを無くすことやラグビー・リーグのように形だけにすることは避けたい。そのため、例えスクラムがつぶれても、ボールが出せる状態であれば、そのままプレーオンを宣告してプレーを継続させた方が、観客には理解しやすい。

(6)TMOはトライしたか否かの確認(レフェリーのグランドレベルでの判定を参考にしても、これを前提にしない)及び悪質な反則の確認のみに適用する。

 これは、ハンセンの提案に同意する。現行のTMOとレフェリングを同時進行するのは良いことだと考えるが、レフェリーからTMOに諮られる事案は限定すべきだと思う。それは、レフェリーからトライしたか否かの提案をすることなく、またそうした前提なしの形で、トライの有無をTMOで確認することと、悪質な反則があった場合にカードの種類を判断する際の参考にTMOを利用することに限定したい。その他のプレーでは、選手に余程の酷いダメージがない場合は、そのままレフェリーの判定のみでプレーを流してよいのではないか。もちろん、サッカーで良く見られるように、あたかも酷いダメージがあるかのように嘘をつく行為には、防止の観点からそのままレッドカードにすべきだと思う。

(7)レッドカードは20分間の退場にする一方、裁定委員会での出場禁止処分は、何週間という期間ではなく何試合というものに変更する。

 レッドカードが出た時点から、一方のチームが少ない人数で最後までプレーするのは、選手の健康にも良くない上に、ゲームがスポイルされてしまう。しかし、シンビン同様に10分間の退場では、レッドカードとなる意味がないので、倍の20分間退場にすること、さらに試合後の裁定委員会で追加処分を厳重に判断することが防止策につながる。また、出場停止期間を日数で決めるのではなく、試合数で決めればより実効的な措置になる。

(8)高額な座席と低額な座席を半々にする。高額な座席については試合前の食事会等の種々のインセンティヴを付ける。

 現行のラグビーのチケットは、他のスポーツに比べれば安価かも知れないが、プロ化以前に比べれば、かなり高価になっている。そのため、以前は観戦できた人も経済的な理由で観戦を諦める場合もあるだろう。また、子供や学生などの将来ラグビーをプレーしてくれる年齢層に多く観戦してもらうためには、より安価な座席を用意すべきだ。

 一方、現状の価格でも問題なく支払える観客は一定数いるし、またもっと高額になっても大丈夫な観客層もいる。こうした観客に対応するためには、試合前のスタジアム内または最寄りの会場での食事会や、試合後の選手たちとの交歓会などをインセンティヴとして付加した、多種類の高額チケットを設定することで、現状以上の顧客増加と経済収益が期待できる。

(9)スタジアムは、人工芝及び全面屋根付きにし、天候を気にせずにゲームを予定通り開催できるようにする。これは、興行を保証する重要な条件であるばかりか、スタジアムの効率的な運用(他用途への貸し出し)と維持(収入増)につながる。

 秩父宮改築・移転案に反対する方々は、この意見にも反対すると思う。曰く「ラグビーは、屋外でやるスポーツだ」、「雨が降ろうが雪が降ろうが、ラグビーは絶対にやるスポーツだ」、「ラグビー場を他用途に使用するのは、ラグビーへの冒涜だ」云々と。

 しかし、そうした意見を尊重した場合、ラグビーは未来永劫マイナースポーツのままで終わる以上に、リーグワンなどのプロチームの運営・維持すらも難しくなることが容易に予想される。ラグビーが、プロスポーツとして生き残るためには、経済面は決して無視できない条件だ。そして、それをクリアーできるのは、屋根付き・人工芝のスタジアムを作り、ラグビー開催以外の日は、音楽イベントなどに貸し出すことにしか、生き残る選択肢はないと思う。

*以下は、日本のリーグワンで是非実施してもらいたい項目を挙げた。リーグワンが、今後日本のプロ野球やサッカーに比して、プロスポーツとして生き残るためには、現状の旧態依然としたラグビーを、また旧態依然とした興行形態を続けていたら、時間とともに尻すぼみになることは明瞭だ。

(10)リーグワンのチーム名に例えば10文字以内などの文字数制限を行う。

 リーグワンのチーム名については、前身の社会人リーグ及びトップリーグからの軋轢があることは理解する。また、独立運営といいながら、メジャーなスポンサーが固定している場合は、どうしても資金提供してくれるスポンサーに考慮しなくてはならない。そのため、登録のための正式名称は、スポンサー名などを明記した長文でも良いが、観客が呼称するチーム名は、呼びやすく読みやすい名前にすべきだと思う。

 そのためには、単純に文字数の制限で対応できるのではないか。そして、これを常時使用して行けば、時間の経過とともに馴染んでくると思う。

(11)リーグワンの試合後、新たに運営・チーム・ファンの各代表によって組織した「エンターテイメント委員会」による、チームのプレー評価を行う。

 これは、純粋にエンターテイメントなプレーであったか否かを基準にして判定するものとする。よりエンターテイメントなプレーが多かったと判定されたチームは、勝敗に関係なく勝ち点1を付与される。また、「エンターテイメント委員会」の委員は、偏向防止のため、二週間毎に入れ替える。

 この「エンターテイメント委員会」が機能すれば、例えばひたすらキックで反則を取りに行き、その後タッチキック→モール→トライという、非エンターテイメントなプレーが減少し、PKをもらった後にパス&ランで攻撃するオプションが増加することが期待できる。

 そうなれば、私が最も望む「ラグビーらしいトライを取るために走りまくるプレー」、「エンターテイメントなラグビー」、「面白いラグビー」が実現できると思う。


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