<ラグビー>2024年シーズン(2月第四週)
(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)
現在のことは良く知らないが、初期仏教にはサンガと称する修行者(仏弟子)たちが集団生活するものがあった。いわゆる出家である。ここで行われる修行として「戒律」があるが、この「戒」と「律」は、それぞれ別の意味を持った言葉であって、中国語(漢文)に翻訳する際に誤って一つの言葉「戒律」とされ、それがそのまま日本に伝わっているのだという。
その「戒」と「律」だが、「戒」は個人が自らを規制するものであり、「律」は集団生活における規則というのが、サンスクリットの原義だそうだ。従って、「律」はそのまま「法律」や「規律」と同じ概念として、現在の日本語でも通用するし、また「律」を遵守しているか否かは他者が確認できる(相互に規制できる)。
一方、「戒」は、例えば禁煙などの他者から確認できる行為でない限りは、個々人がそれを遵守しているか否かはわからない。また、そもそも個々人がどのような「戒」を行っているのかなどを他者は知らないから、そこに規則違反などの判断が入り込む余地はない。従って、「戒」を遵守するのは、相当に強固な意志を必要とする。そのため、「戒」を「律」に拡大解釈してこれを実施するために、サンガという集団ができたことになる。
では、個人で修業することはできないのかと言えば、私は出来ると思う。実際、始祖であるブッダはそうせざるを得なかったし、達磨大師は孤独に修業することで大悟を得た。だから、必ずしもサンガ=集団生活することが、修行の前提かつ必要条件ではないと思う。
1.リーグワン(第7節後半)結果
三菱相模原ダイナボアーズ53-45静岡ブルーレヴズ
接戦になりそうな実力接近チーム同士の対戦。そして試合は、両チーム合わせて14トライという乱打戦になった。前半を26-26の同点で折り返したが、後半はダイナボアーズが、SOジェイムズ・グレーソンの優れたアタック及びコンバージョンと2PGで勝利した。ブルーレヴズは、WTBマロ・ツイタマが個人技でハットトリックを記録したが及ばなかった。ダイナボアーズの見事な勝利だった。
ブレイブルーパス東京27-7横浜イーグルス
今シーズン好調のブレイブルーパスが真価を見せるチャンス。試合は、前後半ともブレイブルーパスが堅いゲーム運びでイーグルスに完勝した。今シーズンのブレイブルーパスは、かなり強い。また、ブレイブルーパスLOワーナー・ディアンズの進化は驚くものがある。彼は、既に日本代表史上最高のLOになっているのではないか。そして、今後10年間、世界最高のLOの一人として、ラグビー界の歴史になるような予感がする。
花園ライナーズ19-56スピアーズ東京ベイ・浦安
ライナーズSOクエード・クーパーとスピアーズHOダン・コールズに注目したが、スピアーズが前半に0-39と早々に圧倒した。後半は19-17と競ったものの、そのまま流れは変わらずスピアーズが圧勝した。ライナーズは、ディフェンスがザル状態で、これでは勝負にならない。
ブラックラムズ東京17-27神戸スティーラーズ
どちらもベストメンバーを揃えてきたが、スティーラーズのアタックが爆発することと期待した。試合は、前半は10-10の同点となり、後半も64分に17-20の3点差になるなど最後まで競ったが、66分のスティーラーズ14番WTB山下楽平の見事なキックパスを拾い上げるスーパートライで勝負を決めた。ブラックラムズは反則の多さがスコアに影響してしまった。
2.シックスネーションズ結果
アイルランド31-7ウェールズ(HT17-0)
ウェールズはSOにサムエル・コステロウを先発させ、イオアン・ロイドをリザーブに下げた以外は、イングランド戦と同じメンバーで臨む。アイルランドは、怪我で欠場のFBヒューゴ・キーナンに代えてキアラン・フラウレイを先発させた。
試合は、好調のアイルランドが2枚のシンビンを出しながらも、FWでウェールズを圧倒し、完勝する結果となった。このアイルランドが7月にオールブラックスと対戦するのはとても楽しみだ。
スコットランド30-21イングランド(HT17-13)
142回目となる伝統のカルカッタカップ。イングランドは、FBをフレディー・スチュアートからジョージ・ファーバンクにするなど先発5人を代えた。スコットランドは、怪我で欠場していたFBブレアー・キングホーン、WTBカイル・ステイン、FLジェイミー・リッチーが戻ってきて、宿敵イングランドに勝利するチャンスとなった。
そして、スコットランドは、WTBデューハン・ファンデルメルヴァが、ノーサイド直前にリフトタックルでシンビンになったが、チームの全トライとなるハットトリックの貢献から、見事にイングランドに快勝し、4連勝という歴史的快挙を成し遂げた。イングランドは、SOジョージ・フォードの得意とするDGやキッキングゲームで優勢に試合を進めたが、スコットランドの強固なディフェンスとトライを取りきる決定力に負けた。
フランス13-13イタリア(HT10-3)
フランスは、怪我によりフランソワ・グロをNO.8で先発させた他、5番LOにサモア人の期待の若手ポソロ・ツイランギを先発させた。ツイランギはこれがフランス代表初キャップとなった。経験値の浅い選手が多いイタリアにも勝つチャンスがあると期待した。
そして、イタリアは九分九厘勝てたチャンスを逸してしまった。フランスはゲームを優勢に進めたが、40分にCTBジョナサン・ダンティーが頭部同士をぶつける危険なタックルで退場(レッドカード)になり、後半は14人で戦うことになったのが影響した。また、36分にはSOマチュウ・ジャリベールが怪我で退場したが、リザーブのBKはSOを除いた2人しかいないこともあり、FBトマス・ラモスが代わりにSOに入った。しかし、まったく機能せず、SO不在が課題となった。
後半反撃したイタリアは、69分のFBアンジュ・カプオッツォのトライで13-13の同点に追いつき、ノーサイド直前に左中間38mのPGチャンスを得たが、ボールがティーから倒れるアクシデントもあり、SOパオロ・ガルビシがポストに当てて外してしまい、ほぼ手中にしていた敵地での大勝利を逃してしまった。
イタリアのキャプテンであるFLミケーレ・ラマノが素晴らしい活躍をした。一方のフランスは、またもやSOの怪我に泣かされることになり、リザーブにSOを入れなかったファビアン・ガルティエ監督の采配の失敗と、ジャリベールに代わるSOを誰にするかが当面の課題として残ることになった。
3.スーパーラグビー第一週結果
チーフス33-29クルセイダーズ
クルセイダーズSOは、先発がライヴェズ・ライハナ、リザーブがタハ・カマラ。12番CTBにオールブラックス候補のレヴィ・アウムアが入った。チーフスSOは、先発ダミアン・マッケンジー、リザーブがジョシュ・イオアネ。
試合は、チーフスが下馬評を覆してクルセイダーズに辛勝した。前半を27-10とリードしたのが大きかった。クルセイダーズは、後半よく反撃したがイージーミスが多く、勝利に至らなかった。チーフスはSOマッケンジーが怪我で後半はリタイアしたが、リザーブからプレーのイオアネが、マッケンジーに劣らぬプレーで勝利に貢献した。
レベルズ3-30ブランビーズ
レベルズSOはカーター・ゴードン。ブランビーズはノア・ロレシオ。試合は、ブランビーズが実力を発揮して、ボーナスポイント付きで完勝した。ブランビーズWTBコリー・トールがスキルあるプレーで2トライを記録した。
フォース14-44ハリケーンズ
ハリケーンズSHは先発が20歳のジョルディ・フィルヨーン、リザーブがキャメロン・ロイガード。TJ・ペレナラはメンバー外。SOはブレット・キャメロン。フォースSOはベン・ドナルドソン。
ハリケーンズが、FBルーベン・ラヴの活躍もあり、前半を22-0とリードして早々に勝負を決めた。FBラヴの突破からパスをつなぎSHフィルヨーンが初トライを記録した。フォースは、反則の多さとハンドリングエラー、さらにミスタックルの多さが影響した。
ブルーズ34-10フィジードルア
ブルーズSOはオールブラックス先発候補のスティーヴン・ペロフェタ。ブルーズは、NO.8ホスキンス・ソツツの2トライを筆頭に前後半ともにトライを重ね、ドルアを圧倒した。ペロフェタもオールブラックス入りに向けて良いプレーを見せた。
ハイランダーズ35-21モアラパシフィカ
ハイランダーズSOは、元ウェールズ代表のリーズ・パッチェル。SHはフォラウ・ファカタバ。モアラの12番CTBは元オールブラックスWTBジュリアン・サヴェア。ハイランダーズは、前半を14-18とリードされたが、後半に3トライを連取して逆転勝ちした。
レッズ40-22ワラターズ
レッズSOはマイケル・ライナーの次男トム・ライナー。ワラターズSOは、テイン・エドモンド。クイーンズランド対ニューサウスウェールズの伝統の一戦だが、クイーンズランドがFWの優勢を基盤に圧勝した。
4.ヴァンクーヴァーセヴンズ結果
試合会場は、屋根付きで素晴らしいのだが、真ん中に四面の大きなTVモニターが釣り下がっている。サッカーなどのゲームでは問題ないのだろうが、ラグビーのハイパントキックの場合はぶつかってしまうのではないかと心配してしまう。
女子
9-10位準決勝 日本24-5南アフリカ アイルランド21-7英国
同決勝 日本7-12アイルランド(日本は10位)
準々決勝 アメリカ10-12カナダ、NZ36-0スペイン、フランス24-5ブラジル、オーストラリア35-19フィジー
準決勝 カナダ7-15NZ、フランス21-19オーストラリア
決勝 NZ35-19フランス
ブラックファーンズセヴンズのポーシャ・ウッドマンウィクリフがハットトリックの活躍で、見事に優勝した。
男子
準々決勝 アメリカ27-0英国 アルゼンチン14-12サモア NZ21-19フィジー フランス12-5アイルランド
準決勝 アメリカ19-35アルゼンチン NZ28-26フランス
決勝 アルゼンチン36-12NZ
ベテランを多く入れたNZは、2トライで先行したものの、その後らしくないミスが出てアルゼンチンに逆転される。さらに、フランス人レフェリーがアルゼンチン選手のパスカットを反則に取らなかった上に、ノーサイド直前に連続してNZ選手にシンビンにするなど、レフェリングにも負けた結果となった。
5.その他のニュースなど
(1)ウィル・ジョーダンが怪我で長期離脱
オールブラックスのトライゲッターとして、31試合で31トライを記録しているウィル・ジョーダン、24歳は、先のプレシーズンマッチで肩を負傷して手術をすることになったが、復帰までに6ヶ月かかることを公表した。そのため、クルセイダーズの試合に加え、7月のイングランドとのテストマッチ、またザラグビーチャンピオンシップの前半の試合を欠場することとなった。
ジョーダンの長期離脱は、クルセイダーズのみならず、オールブラックスとしても痛手となるが、RWC開催年でなかったことが不幸中の幸いとなった。
(2)スコット・ロバートソンの見方
オールブラックス監督のスコット・ロバートソンは、今シーズンから指揮するオールブラックスのラグビーについて、自身の考えをメディアに答える形で公表している。
それによると、2011から15年までオールブラックスは、優れたFW前5人と偉大なSOであるダニエル・カーターを要して、続けて世界制覇した。しかし、2019から23年にかけては、スプリングボクスが、ディフェンス、セットピース、キッキングゲーム、正確なキッカーによってRWCを連覇している。例えば、サッカー、アメリカンフットボール、ラグビーリーグ、そしてラグビーというフットボールは、キックで勝敗が決まっている。そのため、オールブラックスが得意とするフリースタイルのラグビーだけでは勝てないので、2~3種類のゲームスタイルを作り上げる必要があると述べている。
また、今シーズンは、イーサン・デグルートとタイレル・ローマックスという二人のPRが大きく成長したことはプラス材料だが、一方ブロディー・レタリックとサムエル・ホワイトロックという二人の偉大なLOがテストマッチから引退し、さらにSHアーロン・スミスもテストマッチから去った。LOではパトリック・ツイプロツが後継者候補になるだろうが、その他の後継者をどうするかが当面の課題になると見ている。
(3)ジョン・カーワンとジェフ・ウィルソンが期待するオールブラックスの選手
ジョン・カーワンは、ホスキンス・ソツツはかつてのジンザン・ブルックのようなスーパープレヤーになれると期待しており、アーディ・サヴェアが日本から戻ってきた後、サヴェアとの連携は大きな力になるだろうと見ている。また、ジェフ・ウィルソンは、ソツツに次ぐNO.8候補としてアキラ・イオアネに期待しており、スーパーラグビーでの活躍に注目している。
一方SO候補としては、スコット・ロバートソン監督は、日本に移籍したリッチー・モウンガのオールブラックス復帰の可能性を検討しているようだが、現行の規則を変更することは難しいだろう。また、ボーデン・バレットについても年齢から多くは期待できない。そのため、ウィルソンは、スティーヴン・ペロフェタがオールブラックスのSOとして最適な人材であると見ている。
(私見)
NO.8はソツツ、7番はサヴェア(キャプテン)、6番はシャノン・フリッゼルが良いと思う。ダルトン・パパリイ、ルーク・ジェイコブソン、アントン・セグナーがリザーブ候補。SOは、モウンガが特例になれば彼しかいないが、ダミアン・マッケンジーとペロフェタの争いになると思う。そこに、若手のルーベン・ラヴが入ってくるのではないか。ラヴは、ペロフェタ同様にFBでもかなり良いプレーをするので、イメージとしてはバレットの後継者になる気がする。LOは、スコット・バレットとツイプロツが一番手で、次にツポウ・ヴァアイ、ジョシュ・ロード。SHは、なんといってもキャメロン・ロイガードだ。その次にフォラウ・ファカタバ、コルテス・ラティマ―だと思う。
(4)スーパーラグビーNZチームの歴代ベスト
NZヘラルドが、スーパーラグビーの開幕に合わせて、NZ5チームの歴代ベストメンバーを選出している。各チームのメンバーを見ると、ハイランダーズとチーフスはやはり見劣りしてしまう。また、ハリケーンズのジョナ・ロムーは魅力的だが、LOに人材がいない。一方、ブルーズとクルセイダーズはオールブラックスとしてもベストに入る人材が豊富にいる。そして、やはりリチャード・マコウとダニエル・カーターがいるクルセイダーズがベストチームと言えそうだ。
ブルーズ
クルセイダーズ
ハリケーンズ
チーフス
ハイランダーズ
パシフィックラグビー(所属チームに関係なく選出)
(5)エディー・ジョーンズのドキュメンタリーが話題
昨年のRWCでエディー・ジョーンズ率いるオーストラリア・ワラビーズは、プールマッチ敗退という歴史的汚点を残したが、この時のドキュメンタリーがオーストラリアのTVで放送された。
その中で、RWCの前に開催されたブロディスローカップで、オールブラックスとフォーサイスバースタジアムで対戦した試合で、SOクエード・クーパーがゴールキックを蹴ろうとしたときに、ワラビーズベンチからすぐにキックティーを持って行かなかったことに対して、ジョーンズが「くそったれティーを早くもっていけ!」とトランシーバーをテーブルに叩きつけながら連呼しつつ激昂する場面が、ラグビーファンの間で大きく話題になっている。
XなどのSNSでは、「(キック)ティーTee」と「お茶Tea」とをわざと混同して、「早くお茶を持って行け!」という書き込みや、「トランシーバーが壊れているので、早く交換しろ!」という書き込みがあふれた。
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