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<ラグビー>2024年シーズン(5月第四週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 イエスは、もともとユダヤ教徒だったから、生まれてから8日目に割礼(つまり包茎切除)をした。この切除した後の皮は「主の聖肉片(Praeputium Domini)」とされて、ローマのラテラノ大聖堂に安置されていたが、神聖ローマ皇帝カール五世による1527年の「ローマ略奪」の際に何者かに盗難されて行方不明になった。その後、ヨーロッパ各地の教会(例えば、フランスのポワトゥー地方シャルルゥーの修道院)が、この聖遺物を所有していると主張しているが、その真贋を確認する手段がない(DNA鑑定は想定されていない)ため、その答えは出ていない。しかし、そもそも「聖遺物」と称されているものは、いずれもその真贋は未確認となっているわけで、敢えて確認しないのが「聖遺物」たる所以なのかも知れない。
 
 なお、この聖遺物という概念で最も有名なものは、「最後の晩餐」でワインを回し飲みしたときに使用した「聖杯」と、ソロモンが作らせた「契約の箱」の二つだろう。この「契約の箱」には、「アーロンの杖(モーセの弟アーロンが持っていた、植物に花を吹かせる魔法の杖)」、「十戒(モーセが神から授かった十条からなる戒律が書かれた石板。元は二十条あったとされるが、石板が壊れてしまった由)」、「マナ(古代の宗教的意味を持った食物。おそらくは蜂蜜入りの堅いパン?)」が入っている。21世紀的に解釈すれば、「アーロンの杖」=武器を兼ねた万能器具としての棒、「十戒」=ラップトップPC、「マナ」=非常食ではないだろうか。


 1.リーグワン決勝及び入替戦結果


3位決定戦

東京サンゴリアス33-40横浜イーグルス

 3位と争いは言え、お互いの意地が関わる対戦であり、現時点のベストメンバーで臨む。サンゴリアスSO高本幹也は、イーグルスSO田村優との世代交代を印象付け、日本代表入りを確実にしたい。

 秩父宮の試合ながら、予想外に観客数が少なかったのは、残念な情景だった。こんな状況では、新秩父宮スタジアムの観客席が少ないとクレームをつけられないだろう。

 試合の前半は、イーグルスが良いラグビーで26-7までリードを拡げるが、36分にサンゴリアスにトライを返され、さらに43分まで継続して攻め込まれるがトライを防いで終える。後半は、イーグルスが41分にトライを挙げて33-14とし、ほぼ勝利を手中にしたかと思われた。しかし、サンゴリアスが44分、51分、74分と三連続トライを挙げて、ついに33-33の同点にするが、勝ち越しのコンバージョンを外してしまう。ところが、79分にサンゴリアスは、イーグルスのパスミスから23番WTB江見翔太が右タッチライン際を快走して勝ち越しのトライを挙げ、劇的な逆転勝ちを収めた。

 この試合では、ラックからの球出し時間制限をカウントしており、それがアタック側のSHにかなりプレッシャーを与えていたが、プレーのスピードアップには有効だった。また、イーグルスSO田村優は、ベテランらしい攻守にわたる高いスキルを見せていたが、サンゴリアスの高本幹也は、74分の難しくないコンバージョンを外したり、ハイボールキャッチをミスしたりするなど、日本代表入りにはまだ少し足りない印象を残してしまった。

決勝

埼玉ワイルドナイツ20-24ブレイブルーパス東京

 ワイルドナイツCTBダミアン・ダアレンデが指の怪我で欠場が心配されたが、先発からプレーした。一方好調だったFL大西樹は怪我で欠場し、福井翔太がNO.8で先発する。ブレイブルーパスもLOジェイコブ・ピアーズの怪我が心配されたが、先発からプレーしており、両チームともに現時点のベストメンバーを揃えた。

 試合は、国立競技場の満員の観客が見守る中、ワイルドナイツがキックオフから猛攻を繰り返すが、これをブレイブルーパスがよく守り、2PGだけの6点に抑える。そして、アタックのチャンスが来た27分に良いトライを挙げて6-7と逆転し、さらに33分にはPGを加えて6-10とする。その後38分にワイルドナイツにシンビンが出るが、ワイルドナイツはどうにか4点差で終えた。

 後半は、ブレイブルーパスが、数的有利な状況から44分にトライを挙げ、6-17とリードを拡げる。しかし、シンビンが明けて15人対15人になった後、ワイルドナイツが流れを取り戻し、62分に6番FLベン・ガンターがゴール前のラックで相手ボールをもぎ取ってタッチダウンする力技のトライ(この日のベストトライ)を挙げ、これに続き67分には、素晴らしいキックパスからのつなぎによるトライで、ついに20-17と逆転した。

 ここで勝負あったかと思われたが、73分にブレイブルーパスがワンチャンスからのトライを挙げて、20-24と再逆転する。残り時間から、やはりブレイブルーパスが念願の優勝となるのかと誰もが思ったトライだった。しかし、執念のワイルドナイツは、78分に見事なパスワークからトライを挙げ、25-24と逆転したかに見えた。ところが、TMOが3フェーズ前のプレーでスローフォワードがあると確認して、逆転トライは取り消しとなった(得点は20-24のまま)。そして、自陣35m付近でブレイブルーパスボールのスクラムとなる。

 しかし、まだドラマは終わらなかった。80分のこのスクラムでワイルドナイツが反則を勝ち取り、22m付近のラインアウトからトライを目指して再びアタックを仕掛けた。誰もがワイルドナイツの華麗なアタックを期待したが、残念ながら81分にラックでターンーバーされ、この誰もが予想しえない二転三転した劇的なゲームは、ついにノーサイドとなった。

 ワイルドナイツは、昨シーズンに続き快調なリーグ戦の後、最後の決勝で泣く結果となったが、今シーズンは力を出し切ったという満足感があったのではないか。一方のブレイブルーパスは、選手生活で一度も日本一を経験していないマイケル・リーチが、やっと念願の日本一を勝ち取ったことを純粋に祝福したい。また80分を通じて、優勝チームに相応しい素晴らしいゲームをしており、最後の最後で100点満点のプレーができたことを誇りにして良いと思う。

 なお、この試合はTMOの判定により勝負が決まった印象が強く、実際微妙な判定もいくつかあり、それによって勝者と敗者が入れ替わる可能性もあったが、それらは皆ラグビーが昔から持っている許容範囲であったと言える。最後まで難しい判定に対して誠実に対応したレフェリー陣に感謝したい。

入替戦(D1とD2)


第1戦
浦安Dロックス21-12花園ライナーズ
第2戦
花園ライナーズ30-35浦安Dロックス
 ライナーズは、第1戦欠場のSHウィル・ゲニアが戻り、セミシ・マシレワを14番WTBにして、FBに竹田宣純が入った効果が期待された。しかし、前半をリードしたものの、後半はペナルティートライでシンビンとなり、さらに2連続トライ及びPGでDロックスに点差を拡げられ、ノーサイド直前のトライも及ばずライナーズは連敗となってしまった。奮闘したゲニア&クエード・クーパーの元ワラビーズHB団から、田村熙&オテレ・ブラックの若手SOへ世代交代したかのような完敗となった。この結果、来シーズンのDロックスのディビジョン1昇格、ライナーズのディビジョン2降格が決まった。

第1戦
シャトルズ愛知39-57三重ヒート
第2戦
三重ヒート15-24シャトルズ愛知
 1勝1敗となったが、得失点差でヒートがディビジョン1残留を決めた。昇格を逃したとはいえ、シャトルズはディビジョン1チーム相手に勝てる力を示したので、来シーズン以降もチャンスがあるだろう。

第1戦
グリーンロケッツ東葛21-40ブラックラムズ東京
第2戦
ブラックラムズ東京55-0グリーンロケッツ東葛
 ブラックラムズが第2戦も圧勝して、ディビジョン1残留を決めた。グリーンロケッツは、開始早々にレッドカードとシンビンを続けて出してしまい、これでゲームが崩壊してしまった。もともとディビジョン1レベルでプレーしていた他、トップリーグ時代には優勝したこともあるので、ここで苦戦しているのが実に惜しい。ちょっとしたことで改善されると思うので、来シーズン以降の巻き返しを期待したい。
 

2.スーパーラグビー第14週結果


チーフス17-20ハリケーンズ


 2位対3位の戦いであり、プレーオフでの再戦を想定した対戦となる。チーフスは、SHのリザーブに元オールブラックスのテトイロア・タフリオランギが入った。ハリケーンズは、HO以外はほぼベストメンバー。TJ・ペレナラがトライ記録更新を目指した。

 8分、ハリケーンズはHOレイモンド・ツプツプをレッドカードで失うが、それでも0-14と前半をリードする。後半はチーフスに追い上げられ、72分には17-17の同点にされたが、79分のSOブレット・キャメロンのPGでどうにか勝利した。ブレット・キャメロンの勝負強さはハリケーンズの勝利にたびたび貢献しており、オールブラックス入り(復帰)が近づいている。また、高校時代にCTBをプレーした経験のある1番PRザヴィエール・ヌミアは、フロントローとは思えぬ素晴らしいランニングからのトライを記録した。

ブランビーズ53-17レベルズ


 ブランビーズが有利であり、HB団が不慣れな陣容となったレベルズがどこまでやれるかと予想された。しかし、ここでブランビーズが負けたら面白くなると期待したが、ホームのブランビーズが大勝してしまった。レベルズは、後半既に勝敗が決した時間帯に、ブランビーズにシンビンが出ることでトライできただけという、情けない内容だった。

モアナパシフィカ27-12ワラターズ


 ワラターズが不調なので、モアナに勝機があると予想したが、予想通りに前半を14-0とリードしたモアナは、後半も13-12とまとめてワラターズに快勝した。昨シーズンは連敗が続いたモアナだったが、今シーズンは中位レベルの実力を発揮しており、この成果はパシフィックアイランダーのチーム(トンガとサモア)に良い影響を与えることが期待される。

クルセイダーズ29-27ブルーズ


 普通なら上位対決の伝統の一戦だが、クルセイダーズの不調で盛り上がらない。しかし、ブルーズが楽に勝てるような相手ではないし、一方ではオールブラックスのセレクションでもある。

 試合は、クルセイダーズが前半を12-15と3点差で終えると、後半61分に24-22と逆転し、その後トライを取り合ったがどうにか逃げ切った。SOファーガス・バークがよくアタックをリードしており、ようやくゲームに勝てるSOがチームに出てきたようだ。今シーズン不調のクルセイダーズにとっては、ブルーズ相手に意地を見せた他、解任要求が高まっている監督ロブ・ペニーに対する批判を軽減させる結果となった。

レッズ59-13フォース


 不調のチーム同士の対戦で、選手としては勝敗以外にワラビーズ入りへアピールしたいゲームだった。また、フォースSOベン・ドナルドソンとFBカートリー・ビールの二人は、先週のゲームで良いプレーを見せていたので、ここでもそれが出来ればワラビーズ入り当確になるかと期待された。しかし、ゲームはレッズが大勝したため、ドナルドソンとビールのプレーを評価するのは難しい結果となった。フォースは、このようにパフォーマンスが安定していないことが致命傷になっている。

ハイランダーズ39-3フィジードルア


 ホームゲームなので、ハイランダーズが勝てるだろうと予想した。しかし、SOは不慣れなアジャイ・ファレガガなので、どこまでやれるかが心配された。ところが試合では、ハイランダーズが前半を18-0とリードし、後半もドルアに1PGを与えただけで完勝した。SOファレガガはとりあえず合格点となった。

3.ヨーロッパクラブ選手権結果


(二部相当)ヨーロピアンラグビーチャレンジカップ決勝

グロスター22-36シャークス


 南アフリカのクラブが、初めて「ヨーロッパ」を冠するタイトルを獲得した。シャークスSOシヤ・マスクが、ゴールキックで勝利に貢献している。

(一部相当)ヨーロピアンラグビーチャンピオンズカップ決勝

レンスター22-31ツールーズ


 15-15で80分を終え、その後15分の延長戦に入った。そして、レンスターがシンビンを出していた一方、ツールーズもレッドカードを出すなどしたが、ツールーズが肉弾戦を制し、6回目の優勝となった。ツールーズSHアントワーヌ・デュポンが活躍したが、レンスターのNZ人SHジャミソン・ギブソンパークも良く健闘していた。

4.その他のニュースなど


(1)NZ協会とRPA(選手組合)との対立が深刻化


 2021年にNZ協会がアメリカの投資会社シルヴァーレイクと資本提携を結んだ時、NZ協会とRPA(選手組合)は激しい対立をし、これらは「シヴィルウォー(内戦)」と称された。しかし、現在もこれらの問題は最終的に解決されておらず、来る5月30日のNZ各州組合による投票結果次第では、RPAがNZ協会に反旗をかざし、選手の肖像権などを許可しない可能性が危惧されている。

 また、2021年当時の内紛では、オールブラックス監督イアン・フォスターやオールブラックスの選手たちに大きく影響したため、しばらくオールブラックスが低迷する遠因となってしまった。今回の内紛でも、スコット・ロバートソン監督及びオールブラックスの選手たちに及ぼす影響が心配されている。

(2)レフェリーに対応できなかったブラックファーンズ


 先週カナダに初めて負けたブラックファーンズのアラン・バウンティング監督は、選手たちのプレー振りは良かったが、レフェリーに対応できなかったのが敗因だったと述べている。先週私が書いたように、カナダのノッコンを見逃したトライを筆頭に、スコットランドによるレフェリー団の判定が、ことごとくブラックファーンズ不利に働いており、これが選手たちにプレッシャーとなったのは間違いない。ただし、レフェリング自体はどうしようもないものなので、チームとしてうまく対応し、またレフェリングの不利を覆すような実力差を発揮するしか方法はない。

(3)ブラックファーンズは、オーストラリア・ワラルーズに圧勝


 パシフィックフォーシリーズの最終戦で、ブラックファーンズは、オーストラリア・ワラルーズ相手に11トライの猛攻で、67-19(前半45-7)と圧勝した。14番WTBメレランギ・ポールがハットトリックを記録した他、7番FLケネディ・サイモンの強烈な突破、12番CTBシルヴィア・ブルントの優れたラインブレイクなどが目立っていた。先週はレフェリングの不利からカナダにまさかの敗戦を喫したが、そのうっ憤を晴らす快勝となった。

(4)アーロン・スミスが、オールブラックスに海外でプレーする選手も入れるべきと提言


 オールブラックスのSHとして100キャップを達成しているアーロン・スミスは、昨年のRWCで南アフリカが優勝したのは、海外でプレーした選手にも広く代表資格を与えている結果だとして、オールブラックスも同様にすべきだと提言している。

(5)NZ協会と南アフリカ協会が、従来の遠征試合復活に合意


 南アフリカのメディアによれば、南アフリカとNZの両協会は、2026年から4年毎に交互に遠征をすることに合意したと報道している。2026年は、オールブラックスが南アフリカへ遠征し、テストマッチ3試合を行う一方、ブルズ、ライオンズ、シャークス、ストーマーズ及び南アフリカAと週半ば(ミッドウィーク)の試合をする。また、4試合目のテストマッチを中立地位で行う。その後2030年には、今度はスプリングボクスがNZへ遠征する。

 2026年のオールブラックスの南アフリカ遠征は、1996年以来30年ぶりとなる。この1996年の遠征では、オールブラックスがテストマッチを2勝1敗で終えている。また、2026年の遠征はザ・ラグビーチャンピオンシップに代えて実施されるため、アルゼンチンとオーストラリアも別のテストマッチを組むことになる。なお、2026年にもワールドラグビーのネイションズカップが開催されるが、このリーグ戦には両国の遠征による試合はカウントしないということだ。

 また、オールブラックスが南アフリカ遠征を行うことで、南アフリカ協会は、ブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズの来征と同等以上の利益を得られることが見込まれている。本来多額の収益が期待された2021年のライオンズシリーズでは、新型コロナウィルスのため無観客で試合を行ったため、この損益をオールブラックスの南アフリカ遠征でリカバリーしたい意向だ。

 次の2030年のスプリングボクスのNZ遠征では、ブルーズ、チーフス、ハリケーンズ、クルセイダーズ、ハイランダーズのスーパーラグビー5チームに加えて、マオリオールブラックスとの試合が加わる見込みだ。また、ブラックファーンズ対スプリングボクス女子代表の試合も開催されるとの報道がある。

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