<ラグビー>2024年シーズン(5月第二週)
(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)
今週は、リーグワンの試合がないので、珍しくラグビー関係の話題に触れたい。
リーグワンに来ている外国人選手は、母国でのプレー以上にラグビーを楽しんでいると思う。昔、オールブラックスSOダニエル・カーターは、フランストップ14にサブバティカルで移籍して、骨折させられただけでNZに帰ってきたが、一方FLジェローム・カイノは、トヨタでプレーすることでより機動力を増した選手に成長してNZに戻ってきた。今日本でプレーしている、SOリッチー・モウンガ、FLシャノン・フリッゼル、SHアーロン・スミス、SOボーデン・バレット、SOブリン・ゲイトランド、SOジェイムズ・グレイソンらは、日本でプレーすることで、ラグビーの質が明らかに向上している(特にオールブラックスに入れなかったゲイトランドとイングランド代表に入れなかったグレイソンの二人)。また、FLマイケル・リーチやLOワーナー・ディアンズは、もしNZでプレーしていたら、州代表止まりで終わっていたと思うが、今や二人とも日本が世界に誇る名選手及び名選手候補になっている。特にリーチは、次回RWC後にラグビーの殿堂入りをしないのがおかしいくらいだと思う。
1.スーパーラグビー第12週結果
第11週終了時点では、1位ハリケーンズ、2位ブルーズ、3位ブランビーズ、4位チーフスとなっており、この4チームがプレーオフのベスト4にそのまま入るものと思われる。そのため、第12週を含めてあと4週を残すだけとなった状況から、この4チーム同士のレギュラーシーズンでの対戦は、プレーオフでの対戦を想定したものとなった。
モアナパシフィカ7-43チーフス
モアナのジュリアン・サヴェアは、休場でトライ記録更新もお休み。一方のチーフスも、大黒柱のSOダミアン・マッケンジーが休場で、先発SOはジョシュ・ジェイコブとなった。
試合は、モアラはシンビンを続けて2枚出したことが影響して、0-12で前半を終えた後、後半もBチーム中心メンバーのチーフスにいいようにアタックされて完敗した。SOジェイコブはスーパーラグビー初トライを含む活躍をしたが、それよりもモアラのディフェンスの粗さが目立った試合だった。
レッズ26-22レベルズ
レッズのリザーブ22番に大ベテランのジェイムズ・オコナーが入った。試合は、レベルズが先行したが、後半はシーソーゲームとなり、最後はホームのレッズが接戦を勝ち取った。
ブルーズ31-27ハリケーンズ
プレーオフの前哨戦となるため、お互いに隠したいプレーがあるだろう。しかし、勝った方が1位としてプレーオフを有利に戦えるので、負けるわけにはいかない。どちらもほぼベストメンバーとなった。ハリケーンズのTJ・ペレナラがトライ記録の63をさらに伸ばすかが注目された。
試合は、ホームのブルーズが前半を14-10とリードしたが、後半はシーソーゲームとなり、68分には、ハリケーンズがSHのTJ・ペレナラが64個目となるスーパーラグビー記録を更新するトライを挙げ、12番CTBジョルディ・バレットのコンバージョンも決まって、28-27の1点差に迫り、ハリケーンズ逆転の期待が高まった。しかしブルーズは、SOハリー・プランマ―が確実にPGを決めて4点差とし、そのまま逃げ切って勝利した。この結果、ブルーズ1位、ハリケーンズ2位と順位が入れ替わることになった。ハリケーンズは、キャンベラのブランビーズ戦に続いて、苦手とするオークランドのブルーズ戦でも勝てなかったが、プレーオフでの両チームの再戦がいっそう楽しみになった。
ハイランダーズ32-29クルセイダーズ
ハイランダーズはベスト8生き残りに、またクルセイダーズはベスト8入りが難しいなかでも、チームの意地をかけて、お互いにマストウィンのゲームとなった。クルセイダーズは2番HOにコーディ・テイラーが戻るなど、かなり重厚なメンバーで臨んだ。またSHは、先週の試合内容から、先発はノア・ホッサム、リザーブがミッチェル・ドルモンドとなった。ハイランダーズのオールブラックス選手は、1番PRイーサン・デグルードとSHファラウ・ファカタヴァの二人しかないが、一方のクルセイダーズは、大勢のオールブラックスがいるので、これで勝てないのはおかしいというしかない。
試合は、ハイランダーズが元U20代表のSOキャメロン・ミラーの活躍で、前半を26-14とリードする。そして、後半もハイランダーズがリードを守りきり、3点差で勝利した。これで、クルセイダーズのプレーオフ進出の希望は消滅した。クルセイダーズ11番WTBセヴ・リースが2トライと奮闘したが、チームは勝利に一歩及ばなかった。ハイランダーズSHフォラウ・ファカタヴァは、シンビンになるプレーがあったものの、チームの勝利に貢献する良いプレーを見せていたので、オールブラックスに呼ばれる可能性が高いだろう。
ワラターズ21-29ブランビーズ
ブランビーズが実力的に上だが、ワラターズも歴史あるチームとしての意地を見せたい試合となった。ワラターズSOは、代表候補として注目されている若手のウィル・ハリソン。一方ブランビーズは、元ワラビーズのノア・ノレシオを休ませて、ジャック・デブラジーニがSOで先発した。そして試合は、途中から豪雨になった悪条件下で接戦となったが、ブランビーズがFWの実力差で最後に勝ち越した。
フォース48-10フィジードルア
フォースFBカートリー・ビールが順調にプレーした。アウェイだと弱くなるドルアは、この試合も精彩がなく、フォースにいいようにアタックされて大敗した。
2.ザ・ラグビーチャンピオンシップU20大会結果
今年から、SANZARの南アフリカ、アルゼンチン、NZ、オーストラリア4ヶ国のU20チームによる大会が、オーストラリアのブリスベンで開始された。試合日程は以下のとおり。この4ヶ国にとってU20の強化は、代表選手育成に重要なものになっているため、参加各国とも力が入る大会になった。
<試合結果>
5月 7日
NZ43-20アルゼンチン
オーストラリアに勝ったアルゼンチンに対してNZは、BKのパス回しとランニングで上回って完勝した。アルゼンチンは、攻め手がFW戦しかなかったのがスコアの差となった。NZのSHディラン・プレッジャーと13番CTBザヴィエール・タエレが良いプレーを見せているので、近いうちにオールブラックスに入るだろう。
オーストラリア24-19南アフリカ
初戦でアルゼンチンに負けたオーストラリアが、南アフリカに勝って本大会初勝利となった
5月12日
南アフリカ30-28アルゼンチン
前半7-21とリードされた南アフリカが、後半に猛攻を続け、最後のPGで逆転勝ちした。
オーストラリア25-36NZ
PGで先行されたNZはすぐにトライで逆転し、前半を6-12でリードした。後半もリードを拡げたが、52分のシンビンの数的不利からオーストラリアに25-19と逆転される。NZは、さらに68分にも二人目のシンビンを出したが、数的不利をものともせずに良いアタックを続け、71分のPGと76分のトライで勝利を勝ち取った。この結果、第一回大会の優勝を飾ることとなった。
NZの11番WTBスタンレイ・ソロモンは、自身で2トライを記録した他、ディフェンスでも度々貢献する活躍振りだった。また、13番CTBザヴィエール・タエレは、多くのトライアシストをした上に、76分に値千金のトライを挙げるなど、目覚ましい活躍をアルゼンチン戦に続いてしていた。この二人は、来シーズンのオールブラックス入りする有力候補になるだろう。一方、オーストラリアも良いアタックを度々見せていたが、NZの粘り強いディフェンスで3~4トライを取り損なっており、最大の勝因はNZのディフェンスであったと言える。
最終結果
NZ 2勝1分
南アフリカ 1勝1敗1分
アルゼンチン 1勝2敗
オーストラリア 1勝2敗
3.その他のニュースなど
(1)NZ協会は、リッチー・モウンガを早期にNZに戻したい
SOリッチー・モウンガは、現在リーグワンのブレイブルーパスと3年契約でプレーしている。一方、今シーズンのオールブラックスのSO候補としては、ダミアン・マッケンジー、ボーデン・バレット、スティーブン・ペロフェタらがいるものの、スコット・ロバートソン監督をはじめとするNZ協会としては、モウンガをNO.1候補に考えており、そのためブレイブルーパスとの契約を早期に打ち切り、2027年RWCに間に合うようにして欲しいと願っているようだ。
なお、NZ協会のオールブラックス選出基準(NZ国内でプレーするという条件)の緩和については、まだまだ先の課題と捉えているため、現行のブレイブルーパスとの契約に解約条項がない中で、またモウンガの高額のサラリーをどこまで維持できるかを勘案しつつ、できるだけ早くモウンガをNZに戻せるかが、NZ協会とロバートソン監督の悩ましい問題となっている。
このほか、NZのチームでなくとも、スーパーラグビーに参加しているチームでプレーすれば良いという条件に、もしもオールブラックス選出基準が緩和できるのであれば、近い将来にリーグワンのチーム(例えばワイルドナイツとブレイブルーパス)がスーパーラグビーに参加することで、現状の契約であってもモウンガがオールブラックスに戻れる可能性が出てくるかもしれない。
(2)試行ルールの採用
WRは、さらなるラグビーのファン拡大等のために、(1)フリーキックからのスクラム禁止、(2)いわゆる「デュポンロウ」と呼ばれるキック時のオフサイド解消方法を限定する、(3)「クロコダイルロール」の禁止を、来る7月1日以降に正式採用する。
また、(4)レッドカードの数的不利は20分間に限定(20分後にカードを受けた選手を除いた別の選手がプレーすることが可能)、(5)スクラムとラインアウトのショットクロック(30秒の時間制限)、(6)トライ後のコンバージョンキックは現行の90秒を60秒に縮小、(7)SHの保護のため、スクラム・ラック・モールではディフェンス側のSHはスクラムの中央がオフサイドラインとなる、(7)モールは1回停止で相手ボールになる、(8)ラインアウトがコンテスト(競争)されていない場合は、ノットストレートを許容する、(9)リスタートのキックしたボールを22m以内でキャッチした場合のマークを認める、等の規則を今年7月1日以降に試行する。これらは、来年2月にWRで再協議され、11月の定例会議で正式な議題となる予定だが、各国ラグビー協会が早期に導入することも可能としている。
上記(1)から(3)の新ルールは、今年のU20ワールドチャンピオンシップから採用され、また他のゲームには来年から適用となる。この新ルールでは、特にフリーキックからスクラムを禁止することで、キックやタップによるリスタートによるスピードアップが期待されている。また、キックテニスと称されるキックをやりとりした場合のオフサイド解消方法は、現行のボールをキャッチして5m以上走るあるいはパスすれば良いというのを禁止し、オフサイドの選手の後退を条件にすることで、キックテニスを減らし、「デュポンロウ」と呼ばれる抜け道を無くすことを目的にしている。
なお、WRとしては、ハイタックルの基準及びリザーブ選手数についても、現在検討をしている模様。(おそらく、より低いタックルに限定し、リザーブの人数は削減する方向と思われる。)
(3)ブラックファーンズがアメリカに圧勝
NZで開催されている、NZ・オーストラリア・アメリカ・カナダの4ヶ国によるパシフィックフォーシリーズで、NZブラックファーンズは、開幕戦のアメリカに対して57-5(HT36-0)と圧勝した。
ラグビーリーグのウォリアーズへのコードスイッチ(移籍)をするスターWTBルビー・ツイがトライを挙げた他、見事なキックパスによるトライを披露するなど、ブラックファーンズの華麗なBKが縦横無尽にアメリカのディフェンスをほんろうした。11番WTBカテリン・ヴァハアコロのスピードに、トイメンのアメリカの選手は対応できなかった他、FBマレランギ・ポールは、自身のハットトリックに加えて多くのトライアシストのパスで勝利に貢献した。また、初キャップとなった5番LOマアマムーニア・ヴァイプルは、ゴール前の力強いプレーによるトライを記録している。初キャップとなった前日本代表監督の娘であるSHマイア・ジョセフは、チームを上手くリードしていた。
(4)アイデン・モーガンにアルスターが触手
元U20NZ代表でハリケーンズSOのアイデン・モーガンに対して、アイルランドのアルスターが獲得に動いているというニュースが流れている。アルスターは、マンスターに移籍したビリー・バーンズの後釜として期待した元オールブラックスSOアーロン・クルーデンの獲得に失敗しており、その代役としてNZから良いSOを移籍させたい意向がある。
モーガンは、ウェリントン代表で継続して活躍しているため、ハリケーンズでもSOとしての活躍が期待されたが、現在元クルセイダーズのブレット・キャメロンに先発SOの座を奪われているほか、同期となるルーベン・ラヴがFBとSOの両方で良いプレーを見せていることもあり、なかなかプレー機会を得られていない。
(5)ジャック・コーネルセンは、ディーンズ監督を絶賛
オールブラックス相手に4トライを取った元ワラビーズの父グレッグを持つジャック・コーネルセンは、オーストラリアの大学を卒業した後クイーンズランド・カントリーでプレーしたものの、プロ契約を勝ち取ることができなかった。しかし、日本から来たロビー・ディーンズによってワイルドナイツのトライアルを受けることとなり、新たな文化に挑戦したいと思っていたコーネルセンは、日本のワイルドナイツと契約することになった。
そして、未知の国である日本へ渡航した後、チームメートであるべーリック・バーンズなどの先輩たちに助けられつつ大きくラグビー選手として成長し、ついにジェイミー・ジョセフ監督の日本代表に招集され、ブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズ戦で初キャップを得ると言う得難い経験をするまでになった。
初めて日本に来てから今年で7年目となる29歳のコーネルセンは、ワイルドナイツのグランド内外のチーム環境を称賛している他、とりわけディーンズ監督のグランド内外に渡るきめ細かいコーチングを高く評価しており、「彼は世界最高のコーチで、悪いところがまったくない」と絶賛している。また、日本のリーグワンの試合環境は、アウェイチームに対しても応援しているファンが沢山いることなど良い点ばかりだと誉めており、コーネルセンとしては、このまま日本の環境でラグビー人生を終えたいと思っている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?