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<閑話休題>親ばか話をさせてください。

(もう10年以上昔の話です。読み返してみたら、意外と面白かったので、掲載します。なお、元ネタからは、固有名詞は修正または除外しました。)

先日の新聞報道で、ラグビーの菅平合宿中に、高校3年生が練習試合でタックルを失敗し、その結果脳血腫となり死亡したという事件がありました。

うちの高1の息子も、石川県のある高校の寮での10日間にわたる第一次合宿の後、練習試合中心の合宿のため、昨日までの7日間、菅平に行ってました。

父親としては、亡くなった高校生の関係でちょっと心配していたのですが、昨夜帰って来る前に、顧問の先生から家に電話があって、試合中に右手の甲をスパイクで踏まれて、ちょっと腫れているので無理させないでくださいとの連絡を受けました。

しかし、その後家に着いた時の息子の顔は、明るく晴れ晴れとしていました。

たしかに、友達から「ドラエモンの手」って言われた程、彼の右手は腫れ上がっていましたが、今は痛みがほとんど無いこと、これは日曜日にあの花園優勝数回の強豪高校1年との試合で、ラックの中で踏まれたためになったこと、でも、試合には勝ち、自分もウィングとして2〜3人ステップで抜いたことなどを、うれしそうに次々と話していました。

怪我については、病院へ行ってレントゲンを撮ったら骨折をしていないとのことで、休む予定だった翌日の試合も、監督が右ウィングの先発メンバーに自分の名前を書いていたので、多少の痛みをこらえて出場し、けっこうタックルもできたと言っていました。また、亡くなった高校生の件を話したら、病院に酸素マスクを着けられて運ばれてきた人がいたから、その人かも知れないと言ってました。

そう話している間、彼は遅い夕食をとりながら、久しぶりに食べた母親の作ったパンプキンスープがいつもよりうまくないと言いつつ、相変わらずのグルメぶりを発揮していましたが、スパイクの傷跡が4つ5つ付いた腫れた手で串カツを食べている姿は、既に立派なラガーマンのようでした。

また監督からは、トップチームでやるには3つ以上のポジションをこなさなければならないと言われ、自分は今のウィングをマスターし、次はスクリューキックができるのでフルバックをこなし、最後はタックルを完璧にしてセンター(アウトサイドセンター)をやりたいと言いました。こうして、一番厳しい夏合宿を乗り切ったことで、将来の花園行きに向け自分なりの設計図を描きつつ、これからラグビーを続けていく意欲が充実してきたようです。

かつての弱弱しい少年が、今は16歳の青年として、大人への階段を確実に一歩一歩駆け昇っています。

「ラグビーをやらせてよかった」、と思い、また元フランス代表のジャンピエール・リーブが引退するときに言った、「ラグビーは少年を大人にする」という言葉をしみじみと感じた日でした。

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