<書評>“The Third Man” 『第三の男』
"The Third Man (第三の男)"
Graham Greene (グレアム・グリーン)著 英国及び米国初版1950年 ペンギンブックス版1971年
キャロル・リード監督の有名な映画は、1949年に英国で、1950年に米国で、1952年に日本で公開された。そして、グラハム・グリーンの小説は、映画を元に作成されている。
グリーン自身が序文で説明しているが、映画で有名なオーソン・ウェルズが観覧車の中で言うこのセリフは、脚本にはなかったもので、ウェルズがアドリブで言ったものが、そのまま採用された。したがって、小説ではこのようなセリフは出てこない。
“ Remember, what the fellow said, in Italy thirty years under the Borgias they had warfare, terror, bloodshed, but they produced Michelangelo, Leonard da Vinci, and Renaissance, In Switzerland , they had brotherly love, they had five hundred years of democracy and peace, and what did that produce ? The cuckoo clock.”
「誰かが言ったことを思い出す。イタリアでは、ボルジア家30年の戦火、恐怖、流血の下で、ミケランジェロ、レオナルドダヴィンチ、そしてルネッサンスを生んだ。スイスが、友愛精神の下、500年の民主主義と平和から生み出したものは、なんだと思う?鳩時計さ。」
そして、あっけない結末までの感想は、やはり映画の印象が強すぎて、またプロットやオチもわかっているためか、「小説はつまらない」という感想になってしまう。・・・これは正当な評価とは言えないのかも知れないが、映画を先に作って、さらに映画を元にして小説を作ったら、どうしても逃げられない条件だと思う。そして、そうした条件を前提にしながら創作したが、やはり一歩及ばずということではないだろうか。
では、もう一つの短編”The Fallen Idol(堕ちた偶像)”はどうだろうか?
私としては、映画化されていない作品でありながら、同様の感想しか得られなかった。たぶん、波長が合わないのだろう。
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