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<ラグビー>2024年シーズン(4月第一週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

〇 古代ローマ時代に作られたオイディウス『転身物語―メタモルフォーゼス―』にある話だ。クマエ(ナポリの西にある古い町)の洞窟にいる巫女だったシビュラは、昔アポロ(ポエプス)に求愛された時、もしも求愛に応えたら希望のものを与えると約束された。そのときシビュラは、手にした一握りの砂粒の数と同じだけの寿命を欲しいと望んだ。彼女はアポロの意に沿わなかったが、その望みは叶えられた。しかし、永遠の青春を同時に希望しなかったため、老いさらばれまた次第に身体が縮んでいきながら千年間生きることになってしまった。ある時、子供たちから「何が欲しい」と尋ねられたときに、シビュラは「死にたい」とだけ答えたそうである。
 
 一口に不老長寿というが、不老だけでも、長寿だけでもそれは良いものにはならない。不老と長寿が同時にあることで、人の希望は叶う。そして現代社会は、不老は一部の金持ちだけで実現できているが、長寿だけはそれを望みもしない人まで巻き込んで実現している。それはまさにこのシビュラの世界を再現しているのではないか。
 

 


1.リーグワン(第12節)結果

ブラックラムズ東京12-31横浜イーグルス


 ブラックラムズの先発SOは堀米航平。そしてアイザック・ルーカスがFBに入ったが、イーグルス相手にどこまで通用するか。試合は、イーグルスが終始ゲームを支配して、完勝した。ブラックラムズはあと少しのところで勝てない。プレーでは良いアタックもあるがディフェンスで淡泊なのが欠点。また、アーロン・スミス、ボーデン・バレット、リッチー・モウンガのレベルがHBにいたら、あと4勝ぐらいはできると思う。

静岡ブルーレヴズ43-14三重ヒート


 最近調子を上げてきたヒートにとって、勝利が望める相手。ここは良い試合をして、ディビジョン1に残りたい。試合は、ブルーレヴズが前半に31-0とリードして勝負を早々に決めてしまった。ヒートは後半2トライを返したものの、最後はシンビンを出すなど良いところがなかった。ヒートは、外国人のフレアーあるプレーに日本人選手がついていけていないのが、最大の難点。さらにザルのディフェンス。この二つを改善できたら、ブルーレヴズと同レベルのチームになる資質を持っている。

埼玉ワイルドナイツ53-12相模原ダイナボアーズ


 ダイナボアーズSOジェイムズ・グレイソンの記事を「4.その他のニュースなど」で紹介したので、王者相手にどんなプレーをするのか注目していた。そしてワイルドナイツは、後半にまたもや山沢兄弟の華麗なトライが見られるか。

 試合は、ダイナボアーズが詰めるタックルで良いディフェンスをするが、ワイルドナイツはそれを上回る個人技とチームプレーでトライを重ねて、圧勝した。両チームの力の差は大きい。ダイナボアーズSOグレイソンは、時折良いプレーを見せたものの、代表レベルにはまだ遠い印象だった。ワイルドナイツNO.8ジャック・コーネルセンが良いプレーを見せていた。

トヨタヴェルブリッツ47-30花園ライナーズ


 ヴェルブリッツはSOボーデン・バレットが欠場だが、SHアーロン・スミスは健在。一方のライナーズは、SHウィル・ゲニアが欠場で、SOクエード・クーパーが健在。果たしてどうなるか。

 試合は、前半からライナーズが健闘したが、最後はヴェルブリッツの地力に引き離されてしまった。ライナーズはクーパーのスキルでトライを取れるが、ディフェンスはやはり穴がありすぎる。一方のヴェルブリッツは外国人選手の力が大きいが、東京高校OBの小池隆成などの叩き上げの選手が地味なプレーで貢献している。ライナーズも、セミシ・マシレワのような派手なプレーではなく、地道なプレーを黙々とやる選手が多くなるとブルーレヴズと同レベルのチームになると思う。

神戸スティーラーズ27-36東京サンゴリアス


 スティーラーズ山中亮平対サンゴリアス松島幸太朗の新旧?FB対決が面白そうだ。また、チェスリン・コルビが11番WTBに入り、サンゴリアスの得点源として活躍するだろう。試合は、前半は6-8と競ったものの、後半に入るとサンゴリアスが得点を重ねて引き離した。現在の力ではスティーラーズはプレーオフに進むには、一歩足りないようで、逆にサンゴリアスはプレー振りが安定してきた。

スピアーズ東京ベイ・浦安20-22ブレイブルーパス東京


 スピアーズは、バーナード・フォリーが先発SOに戻ってきたが、絶好調のブレイブルーパスSOリッチー・モウンガには敵わないだろう。試合は、前半を13-10と競った後、後半早々にスピアーズがトライを挙げて20-10とした後から膠着状態に。そして、64分にスティーラーズがトライを挙げて、20-15と5点差にしてからドラマが始まった。79分にスピアーズにシンビンが出て、直後にブレイブルーパスが劇的な同点トライ、そして勝ち越しのコンバージョンを決めた。今シーズン絶好調のブレイブルーパスが、最後に実力を見せつけた結果となった。

2.スーパーラグビー第7週結果


 今週は、リーグ戦の中盤に入り、試合のないオフのチームが出て来て試合数が少ない。

ブルーズ50-3フォース


 ブルーズは、SHフィンレイ・クリスティー(股関節)、SOスティーヴン・ペロフェタ(肩)、CTBブライス・ヒーム(脳震盪)、LOパトリック・ツイプロツ(脳震盪)、WTBマーク・テレア(臀部)が欠場するが、FLアキラ・イオアネとダルトン・パパリイが復帰した。また、SOはハリー・プランマーが務める。フォースは、元ハリケーンズのリーズ・プリンセップがNO.8で先発した。

 ブルーズが全ての面でフォースを圧倒し、また圧勝した。SHチェイ・フハキが良いプレーを見せた他、怪我人の代わりにプレーした選手たちが、チャンスをものにする活躍振りだった。負けたフォースは、全く良いところがなく、実力的に格下であることを認める結果となった。

レベルズ41-20フィジードルア


 トライの取れるPRタニエラ・ツポウをリザーブ18番にしたレベルズが、好調のドルア相手にFW戦に勝機を見出したい。ゲームではは、ドルアが前半リードするものの、後半はシンビンとレッドカードで劣勢になり、すぐにレベルズに逆転され、最後には引き離されてしまった。やはりドルアはホームアドバンテージがないと、なかなか勝てないのかも知れない。

チーフス68-12モアナパシフィカ


 チーフスは、先週の負けたクルセイダーズ戦で欠場した、FLサミペニ・フィナウ、SOダミアン・マッケンジーが復帰した。またFLルーク・ジェイコブソンの休養により、12番CTBレメカ・ポイヒピがキャプテン代行となる。FBにはエテネ・ナナイセツロが先発し、50キャップを飾った。モアナの7番にはアメリカ代表のニコ・ジョーンズが先発した。

 試合は、クルセイダーズに負けたものの、マッケンジーが戻ったチーフスが圧勝した。WTBエモニ・ナラワがハットトリックを達成した他、合計10トライを前後半まんべんなく取り、モアナになす術を与えなかった。

ブランビーズ40-16ワラターズ


 ブランビーズSHライアン・ロナーガン、SOノア・ロレシオ、ワラターズSHジェイク・ゴードン、SOテイン・エドメッドという、ワラビーズの定位置を争うHB団の戦いが注目された。しかし、ゲームは終始ブランビーズが支配し、格の違いを示す結果となった。

3.香港セヴンズ結果


 今年もセヴンズの代表的イベント、香港セヴンズが開催された。なお、今年はこれまで使ってきたスタジアムでの最後の開催となり、来年からは新スタジアムでの開催になる。男女ともにNZが優勝すれば、香港セヴンズの歴史に相応しい結果となると期待したとおりの、実に素晴らしい大会となった。なによりも、表彰式の後に男女のハカが見られるのは、セヴンズのお祭り気分の掉尾を飾るのには誠に相応しかったと思う。

 ところで、男子オーストラリア代表にマイケル・フーパーが入り、得意のジャッカルで活躍したが、いきなり中心メンバーとはならなかった。フランス代表のアントワーヌ・デュポンは、今回は15人制に戻っているため不在だが、フーパーは、エディー・ジョーンズに理不尽にスコッドから外された悲劇があるので、オリンピックに向けてセヴンズで活躍して欲しい。

 また、ブラックファーンズセヴンズには、女性版ジョナ・ロムーというのが相応しいポーシャ・ウッドマンウィクリフ、ミカエラ・ブレイド(50大会参加達成、そして決勝ではハットトリックを記録してPOMに選ばれる)、ステイシー・ワアカ、ジョルジャ・ミラーと、4人も無敵のトライゲッターが揃っている。彼女たちに共通するのは、スピードがあるだけでなく、チェンジオブペースとサイドステップを上手く併用していることだ。さらにウッドマンにはフィジカルの強さもあるのだから、ジョナ・ロムーに比すのが正しいと思う。

女子
予選プールマッチ
 カナダ24-5日本、アメリカ17-12日本、日本19-12スペイン
 NZ24―5英国、NZ33-7、
 NZ21-26フランス(まさかの終了間際の逆転負け)
準々決勝
 フィジー7-33アメリカ、フランス31-7アイルランド、
 カナダ5-26NZ、オーストラリア12-0日本
7-8位決定戦
 日本12-5アイルランド(日本は7位)
準決勝
 アメリカ19-5フランス、NZ28-14オーストラリア
3位決定戦
 フランス21-24オーストラリア
決勝
 アメリカ7-36NZ
 
(ブラックファーンズセヴンズが攻守に圧倒した。)

ステイシー・ワアカの快走

男子
予選プールマッチ
 NZ12-7英国、NZ22-0アルゼンチン、NZ12-7アメリカ
準々決勝
 アメリカ19-24アイルランド、フランス24-10スペイン、
 南アフリカ0-15オーストラリア、NZ19-12フィジー
準決勝
 アイルランド10-26フランス、オーストラリア7-26NZ
3位決定戦
 アイルランド14-5オーストラリア
決勝
 フランス7-10NZ
 
(堅守と相手のミスを突くアタックで快勝し、今大会は不敗で優勝。)

コーディ・ヴァイの優勝を決めたトライ

4.その他のニュースなど


(1)サムエル・ホワイトロックが、プロフェッショナルラグビーからの引退を表明

 オールブラックスのみならず世界ラグビーのレジェンドLOである、サムエル・ホワイトロック、35歳は、所属しているフランス・ポーのシーズン終了後に、全てのプロフェッショナルラグビーから引退し、今後は家族と過ごす時間を多く持つ第二の人生を送ることを表明した。

 ホワイトロックは、長いラグビー人生を支えたくれた家族やコーチなど関係者に感謝するとともに、「153キャップというテストマッチの数字をただ数えるのではなく、自分は毎試合テストマッチの名に恥じないプレーを心掛けてきた」と述べている。一方、NZ協会CEOマーク・ロビンソンや監督スコット・ロバートソンらは、ホワイトロックの14年間にわたるオールブラックスへの多大な貢献を称えるとともに、感謝の意を述べている。

 なお、ホワイトロックが7月のイングランド戦でオールブラックスに一時的に復帰するのではないかとの噂もあったが、監督のスコット・ロバートソンがこれを受け入れなかったことが、引退を決めた背景の一部にあるのではないかという憶測も出ている。

ホワイトロックの主なプレー歴
・2008年U20代表として、第一回ジュニアワールドチャンピオンシップで優勝し、その後カンタベリー州代表として22試合でプレー。
・2010年にクルセイダーズでデビューし、2023年までに180試合をプレー。これはPRワイアット・クロケットの203試合に次ぐ記録。また、この間にクルセイダーズは7回スーパーラグビーで優勝。

・2010年6月12日のオールブラックスのデビューとなったニュープリマスのアイルランド戦で2トライを記録。この時21歳で、1104番目のオールブラックスとなった。
・テストマッチ153試合で125勝22敗6引き分け。オールブラックスの最年少としての100キャップ達成時には8敗しかしておらず、10試合以下の敗戦は世界記録。

・2回のRWC優勝、11回のトライネーションズ及びザラグビーチャンピオンシップ優勝、ブレイディスローカップ14年連続保持。
・2017年11月25日のウェールズ戦でキャプテンを担い、その後18試合でキャプテンを務めた。

・2017年のウェールズ戦では、弟のルークとともにオールブラックスとしてプレー。またルークは同じ年のフランスXV戦(ノンテストマッチ)でキャプテンを担った。
・長兄ジョージは2009年にオールブラックスでプレー、次兄アダムはオールブラックスセヴンズ代表。サムエルは三男。

ブロディー・レタリックとのLOコンビで64試合をプレーし、これはスプリングボクスのバッキース・ボタとヴィクター・マットフィールドを抜く世界記録。
・2017年にNZ最優秀選手賞受賞、2022年にWRのドリームチームに選出される。

(2)さらに元オールブラックスのコーチがワラビーズに加入

 元オールブラックスのアシスタントコーチであるばかりか、元アイルランド代表監督として大きな実績を残したジョー・シュミットは、昨年のRWCでオーストラリア・ワラビーズを崩壊させたエディー・ジョーンズに代わり、救世主としてワラビーズ監督に就任した。

 その後、オールブラックスとの人脈から優れたコーチを勧誘しているが、今般「スクラムドクター」として名高いマイク・クロンをワラビーズのコーチに招聘した。ワラビーズは、スクラムが弱いチームと認識されているが、クロンの加入によって優れているBKをより生かすための、強いセットピースを構築することが期待されている。

 また、シュミットのオールブラックス人脈を生かしたワラビーズの構造改革には、世界中から多くの人が期待しており、またその成果がどのようになるかが注目されている。

(3)キャメロン・ロイガードは、6ヶ月の欠場

 ハリケーンズでのプレーのみならず、アーロン・スミスの後継者としてオールブラックスのSHに期待されているキャメロン・ロイガード、23歳は、先々週のハイランダーズ戦で左膝を負傷し、先週初めにオークランドの専門医で診断した結果、膝蓋骨の靭帯を損傷していることが判明し、直ちに手術を行ったことを公表した。通常では、プレー復帰までに6ヶ月かかる見込みであるため、今シーズンのプレーは難しくなった。

 ロイガードは、フランスのアントワーヌ・デュポンのようなタイプの万能SHで、そのスキルや才能はデュポン以上と見られており、これから長い期間にわたって、オールブラックスとしてだけでなく、世界一のSHとして活躍することが期待されている選手だ。今回の負傷欠場は残念だが、まだ23歳と将来があるので、焦らずに万全の態勢で復帰してもらいたい。その良いお手本はハリケーンズの先輩TJ・ペレナラで、昨シーズンは足首の骨折でプレーできなかったが、今シーズンに復帰した後は、怪我をする以前よりさらに素晴らしいプレーを連発しており、オールブラックス復帰も視野に入っている。

(4)ファーガス・バークがサラセンズと契約

 イングランドのサラセンズは、キャプテンであり長年SOとしてチームを支えてきたオウウェン・ファレルが、フランスのラシン92に移籍することに伴い、後継者として現在クルセイダーズでプレーしている24歳のファーガス・バークと契約したことを発表した。

 元U20代表のファーガスは、クルセイダーズのSOとしてリッチー・モウンガの後継者となることが期待されている若手だが、現時点では期待された成果を出すことができない状況が続いており、ゲームのプレータイムも限られている。そのため、NZに留まってもオールブラックス入りする可能性が低いため、今般サラセンズとの契約を決めたものと思われる。

(5)ジェイムズ・グレイソンは、日本代表を目指す

 25歳のイングランド人であるジェイムズ・グレイソンの、父ポール・グレイソンは、元イングランド代表及びブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズ代表SOで、イングランド代表として32キャップを持ち、2003年RWC優勝メンバーだった選手だ。

 ジェイムズも父と同じノーザンプトンセインツでSOとしてプレーし、2017年のイングランドU20代表に入り、将来のイングランド代表入りを目指していたが、セインツの先発SOがフィン・スミスに決まったため、より多くのプレー機会を求めて三菱ダイナボアーズに移籍した。

 グレイソンは一度も訪れたことのない日本に向かった後、ガールフレンドとも別れクリスマスをチームメイトの家族と過ごすという寂しい単身生活をしているが、ジェイムズは新天地での生活を楽しんでおり、世界の一流選手たちと対戦できる環境で学び、また日本のラグビーファンの親切さに感激している。また、父ポールもジェイムズの日本行きを応援しているので、ジェイムズは日本代表入りを目指しているが、将来的に海外でプレーする選手にもイングランド代表入りの資格が得られるように変更された場合、あるいは自分がイングランドに戻っていれば、イングランド代表入りを目指すかも知れないと述べている。

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