今回のプログラムについて⑩

「楽曲解説について」

リサイタルに向けてこれまで書いてきましたが、内容は思い出話と意気込みのようなものでした。
当日会場で配布するプログラムに載っている楽曲解説は、ちゃんとした内容です。
大きな違いは、調べて書いたか、記憶だけで書いたか、です。
これまで書いてきたものは、調べる必要もなく、自分の記憶の中から引っ張り出して、集めた文章ですが、
楽曲解説は、事典や楽譜など資料を集めて、必要な情報を取り出し、まとめた文章です。

ですので、記憶を頼りに書いた文章はいくらでも公開しますが、
自分の知識と労力を駆使して書いた文章は公開しません。
時間を作ってくださって、会場に足を運んでくださって、チケットを買ってくださった。
そういう方々に読んでいただきたいと思います。

自分の中では、演奏と同じように、執筆も重要な位置を占めています。
本気の演奏を無料で提供できないのと同じで、本気の文章を無料では提供できません。

さて、楽曲解説を書く時、どのような人達が読むのかによって、書き方を変えています。
大きく分けると一般聴衆向け、専門家向けのどちらなのかをいつも考えます。
リサイタルの場合は、大抵いろいろな層の方々がいらっしゃるので、作曲家や作品の一般的な情報を載せることを意識しています。
一方、音楽の専門家が多く集まる場合は、分析的な内容を盛り込んだりします。
なかなかそのような機会は無いですが…

いずれにしても、書く前に調べる量は大して変わりません。
調べて分かったことを全て詰め込むわけではなく、その時々で入れたい情報を選んで文章にします。
読んだことで、作品を聴いた時により理解が深まるような文章を目指しています。

とはいえ、リサイタルのプログラム冊子に載せられる文章量は限りがあります。
今回はそれを補うことができれば、と思い、演奏の合間に喋ることにしました。
イメージとしては、学校の音楽の授業で時々やる、鑑賞の授業でしょうか。
作品や作曲家のことを少しでも知って、帰っていただければ良いなと思っています。

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