金久保裕之Yuji Kanakubo

武蔵野音楽大学、同大学院、プラハ音楽院。長野県でピアノ弾きやっています。非常勤で教員も…

金久保裕之Yuji Kanakubo

武蔵野音楽大学、同大学院、プラハ音楽院。長野県でピアノ弾きやっています。非常勤で教員もしています。YouTubeに演奏を投稿しています。noteは文章の置き場所として使っています。

最近の記事

リサイタルの記録

第1回 2010年4月26日(月) すみだトリフォニー小ホール ハイドン/ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI:49 シューマン/クライスレリアーナ 作品16 ヤナーチェク/霧の中で ラヴェル/夜のガスパール (アンコール) ラヴェル/ハイドンの名によるメヌエット 第2回 2012年6月13日(水) パールフィ宮殿 ドゥシーク/ソナタ 嬰ヘ短調 作品61「悲歌」 スメタナ/夢 マルティヌー/胡蝶と極楽鳥 スラヴィツキー/ピアノソナタ 第3回 2013年9月6日(金) ル

    • 今回のプログラムについて⑩

      「楽曲解説について」 リサイタルに向けてこれまで書いてきましたが、内容は思い出話と意気込みのようなものでした。 当日会場で配布するプログラムに載っている楽曲解説は、ちゃんとした内容です。 大きな違いは、調べて書いたか、記憶だけで書いたか、です。 これまで書いてきたものは、調べる必要もなく、自分の記憶の中から引っ張り出して、集めた文章ですが、 楽曲解説は、事典や楽譜など資料を集めて、必要な情報を取り出し、まとめた文章です。 ですので、記憶を頼りに書いた文章はいくらでも公開し

      • 今回のプログラムについて⑨

        「作品の関連付けについて」 プログラムを組む時に、必ず全体のバランスを見て、またわずかでも繋がりのある並びにするように心がけています。 今回のプログラムは、意図と偶然が上手く混ざった選曲になったので、それを説明します。 まず、前半と後半で分けます。 前半は、2人とも古典派の作曲家で、しかもソナチネアルバムでもおなじみで、それぞれのソナタを選びました。 後半は、2人ともキリスト教に深い関係のある作曲家で、作品もキリスト教を題材にしたものを選びました。 実は調性は、前半が短調

        • 今回のプログラムについて⑧

          「リストと対比」 大学生の時、それこそ「超絶技巧練習曲」を弾いた3年生の頃、先生がレッスンで語ってくれました。 リストの音楽にはいろんな面がある。 抒情的な面、民族的な面、宗教的な面、悪魔的な面。 それが作品によってどれが現れるかが異なるんだ、と。 その時演奏した「超絶技巧練習曲」第1、2、10番は、悪魔的な面が現れているので、それを表現することが求められました。 だからこそのシフラの音源だったのかもしれません。 個人的に一番好きな第11番「夕べの調べ」は、全く悪魔的で

        リサイタルの記録

          今回のプログラムについて⑦

          「リストとの出会い」 両親の影響で、家でクラシック音楽を聴くことは元々多かったので、リストの音楽も馴染みがありました。 やはり「ラ・カンパネラ」は小さい頃から聴いていて、当時無謀にも弾きたいと思って、楽譜を買ってもらいました。 すぐに無理だと分かって、弾くのは諦めたのですが… 僕は音大に進学するのを決めたのが高校3年生になる直前くらいだったので、それまでピアノは趣味として習っていました。 ただ、縁あって小学5年生の時から武蔵野音楽大学の附属音楽教室に通い始めたため、趣味と

          今回のプログラムについて⑦

          今回のプログラムについて⑥

          「メシアンと移調の限られた旋法」 メシアンの生きていた20世紀のクラシック音楽は、既存の音素材や音階構造から脱却していった時代でした。 新しい楽器の発明、楽器以外の音素材の使用、調性の崩壊などが起こり、音楽そのもののあり方を問うような作品も作られました。 個人的な意見ですが、この時代の作品は聴き手を置いてけぼりにするものがしばしば見られます。 メシアンの作品も一聴するとその類の作品に聞こえますが、メシアンは音楽の要素を理論的に体系的に分析し、独自の秩序を確立した点で、他の

          今回のプログラムについて⑥

          今回のプログラムについて⑤

          「メシアンとの出会い」 大学入学前の僕は、作品、作曲家、演奏家についての知識が本当に少なかったので、大学生活の中で初めて知ることだらけでした。 様々な学科の授業、実技のレッスン、公開の実技試験、先生や友人との会話、図書館やオーディオ室の資料などなど、あらゆる事から知識をつけていきました。 メシアンももちろん大学に入学してから知ったのですが、初めてまともに聴いたのはおそらく、試験で誰かが弾いていた「喜びの聖霊のまなざし」です。 弾き映えするし、評価があまり分かれないからなの

          今回のプログラムについて⑤

          今回のプログラムについて④

          「ドゥシークとベートーヴェン、他」 ドゥシークについてはまだ知らない部分が多く、今も勉強中という感じですが、もっと演奏される機会が増えても良いのに、と思っています。 技術的にはそこそこ難しいですが、ベートーヴェンのソナタよりは気軽に弾ける印象です。 さて、ベートーヴェンとドゥシークの共通点について書いてみましょう。 2人は同時代を生きて(厳密にはベートーヴェンの方が10歳若い)、それはちょうど古典派からロマン派へ移っていく時期でした。 感情的、感覚的な表現を音楽にさらに

          今回のプログラムについて④

          今回のプログラムについて③

          「ドゥシークとの出会い」 今回のプログラムの中で、ほとんどの人が知らない、または認知していない作曲家がドゥシークだと思います。 しかし実際は、ピアノをある程度学んだ人なら目にしたことがあるはずなのです。 チェコ語ではヤン・ラディスラフ・ドゥシークという名前ですが、日本ではドイツ語のヨハン・ラディスラウス・ドゥセックという呼び名の方が広く定着しているようです。 ドゥセックといえば、ソナチネアルバムに作品が載っている作曲家の一人です。 なので、ソナチネアルバムまでピアノを進めた

          今回のプログラムについて③

          今回のプログラムについて②

          「ハイドンの“ピアノ”ソナタについて」 厳密には、ハイドンのピアノソナタは、ピアノのために書かれたのではありません。 今回のチラシに「ソナタ」としか書かなかったのは、それが理由です。 実際には、作曲年代によってチェンバロのためであったり、フォルテピアノのためであったりします。 自分のこだわりとして、ハイドンの演奏にあたっては当時の様式を大事にしたいので、現代の鍵盤楽器の象徴のような「ピアノ」という言葉を避けたかったのです。 また、ハイドンの作品の場合、ホーボーケン番号によっ

          今回のプログラムについて②

          今回のプログラムについて①

          「ハイドンとの出会い」 ピアノのレパートリーとしてよくとりあげられる古典派の作曲家といえば、モーツァルトやベートーヴェンが大多数を占めていて、それに並んでハイドンの名前は知られているものの、「ハイドンといえばこのピアノ曲!」というのはなかなか思い浮かばないのではないでしょうか。 僕にとっては、前述の3人の作曲家の中ではハイドンの作品が一番魅力を感じます。 しかし、よく知られているハイドンのピアノ曲って何だろう?と考えても、ソナチネアルバムに載っている曲くらいしか挙げられませ

          今回のプログラムについて①

          なぜリサイタルをするのか②

          「発表の場だから」 一口に言ってしまうとあまりにも単純なので、「何を発表するか」で分けてみます。 ①演奏 自分の演奏を存分に披露できる、最高の場だと思います。 以前書いた、選曲にも繋がりますが、作品を通して自分の持ち味を十分に出すことが、リサイタルでの成果だと考えています。 ただ、自分の演奏のスタンスとして、「自分自分している演奏」よりも「作品の素晴らしさを伝える演奏」を目指しているので、両方のバランスをうまく取ることを心がけています。 これは弱みでもあり強みでもあるのです

          なぜリサイタルをするのか②

          なぜリサイタルをするのか①

          音楽を勉強していく中で、誰もが一度は「リサイタルをしたい」と思ったのではないでしょうか。 しかし、実際に演奏の仕事をしていると、伴奏やアンサンブルやジョイントなどの他の形態もあって、最もカロリーの高い「リサイタル」をわざわざやろうとするのが億劫になってくることもあるかと思います。 そこで敢えてリサイタルにこだわる理由を、自分なりに説明してみます。 「勉強の場だから」 表には見えない部分ですが、選曲して練習して披露するプロセスの全てが勉強の機会になります。 特に選曲の段階につ

          なぜリサイタルをするのか①