見出し画像

《PEファンドがNBAチームのオーナーに!》苦しいチーム財政の救世主になるか!?

米国ではプロスポーツチームのオーナーは社会的地位・名誉の象徴とされてきた。とりわけNBAではチーム数を増やさない方針によりプレミアム感が増し、近年のチームの資産価値高騰の影響もあり、オーナーになるハードルは年々高まっている。

そんなNBAでこれまで禁じてきたプライベートエクイティファンド(PEファンド)によるチームの少数株式取得を認める決議が可決した。その背景には一体何が!?

1. NBAの資本規制

NBAではチームの安定経営の観点からこれまで以下の規制が存在していた。
① 投資家は1チーム当たり25人以下
② 機関投資家・プライベートエクイティファンド(以下PEファンド)による少数株式の取得を禁止。

画像2

2. チーム所有権ルール変更の背景

今回NBAがこうした規制を撤廃した背景としては、以下3点が挙げられる。

① チームの資金繰り支援
② 既存株主の株式売却の意向
→コロナで本業の業績が悪化し、資金繰り・ポジション整理の観点から現在保有しているチーム株式を売却したい意向を持つ既存株主も存在。
③ PEファンドが得る経済的なメリット
NBAは近年資産価値が急激に上昇(2010年〜2019年の約10年間で約6倍成長/現在のNBA全チーム合計の資産価値US$71billion=約7兆3000億円)しており、PEファンドにとっては成長性・投資規模の観点から魅力的な投資先となる。

それにしても全チームの資産価値合計が7兆円を超える(1チーム平均約2500億円)とは。。メジャースポーツで世界Topリーグともなると、桁違いの規模である。

NBA各チームの資産価値一覧

Top3チーム(ニューヨーク・ニックス、ゴールデンステイト・ウォリアーズ、ロサンゼルス・レイカーズ)はいづれも50億ドル(約5,150億円)以上の価値が。。

画像1

3. PEファンドによるチーム株式取得の条件

チームの安定経営を担保し、PEファンドの参入(投機的資金の流入)により想定される害悪を最小化する為に、PEファンドによるチーム株式取得の条件として以下3点が設定された。

PEファンドの株式取得の条件
① 株式取得できるチームの株式比率上限:最大20%
(つまりPEファンドは「金は出しても口は出すな(株主としてチーム経営の意思決定には関われない)」と言う事。。)
② 株式取得できるチーム数上限:最大5チームまで
③ 株式の最低保有期間:取得後5年間は保有義務有
→短期的なキャピタルゲイン目的でチーム株式が売買されると、チームの安定経営が損なわれる懸念がある為、最低保有期間の制限をつけたと考えられる。(また、上場株式とは異なり売買の度に、株主総会による決議や株主間契約書の修正等で実務的な業務負荷が高くなることもあるのでは。。とも前職の経験より少し思いました。)

画像3

この様にNBAでは危機においても柔軟な資金繰り策を次々と打ち出しているが(昨年12月にもリーグが900億円規模の債権による資金調達・チームへの支援金配布を実施)、背景には長年チームを魅力的にしてコンテンツとしての価値を高める努力を継続し(10年で6倍)、投資対象としての魅力を上げられていた事が根本にあると感じており、米国におけるスポーツビジネスの成長性・成熟度の高さが感じられる事例と言えるのではないか。

今回の規制緩和に伴うPEファンドからリーグへの資金流入が、今後NBAの資産価値を更に上げる方向で上手く機能するのか、今後の動きを楽しみにしたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?