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スーパーでツッコミ続けた一幕

日曜の午後、待ち合わせで大型スーパーに突っ立っていた。

店内にはイベントブースが設けてあって、ウルトラ6兄弟の末子、タロウが子供たちと「ウルトラジャンケン」をしている。

「ウルトラジャンケン」とは、パーがスペシウム光線、チョキがエメリウム光線…といった具合に、必殺技のポーズで行うジャンケンだ。

勝てばお菓子をもらえるらしい。

ヨシくんという子が挑戦。

「♪ウールトーラ ウールトーラ ジャン ケン ポン!」

思いっきりノーマルなチョキを出すヨシくん。
凍りつく会場。

すごい。
すごい思い切りだ。
こうなると、タロウの方がバカみたいだ。

もちろん、TPOでタロウが正しい。おかしいのはヨシくんなのだが、引きで見ている自分には、彼がひどく大人に見える。いや、彼はもう、自己という尖ったナイフを振りかざす大人なのだ。

そんな無頼なヨシくんだが、首尾よくタロウのスペシウム光線を撃破。お菓子を強奪し、揚々と母のもとに引き揚げていく。


続いて「ウルトライントロクイズ」。ウルトラマン限定という以外は普通のイントロクイズ。当たればもちろん、お菓子だ。

♪ダァラッタッタッタ『タロウ~♪』

前列の子がいきおいよく挙手!

「メロス!」

ち、ちがうだろ…

「もういちど、よく聞いて……♪♪♪……どうぞ!」

「メロス!」

ちがう、ちがう!
それはお前の好きなウルトラマンだろ!
前を見ろ!前を!
なんでタロウがいるんだよ!
テレビでも、ゲストには告知があるタレントが出てるだろ!
あれと一緒だ!
意味があるんだ!

さすがに、周りから「タロウ、タロウ…」という、つぶやきにも似たアシストが聞こえてくる。

なんて美しい光景だ。
さっさと手を挙げて答えればいいのに。
己の利を顧みず、敵に塩を送る…
無競争教育の賜物か?

だが、解答者はなぜか上気したまま答えない。すると、司会のお姉さんが「どうする~タロウ。頑張ってくれたし…あげる?」

おいおい、なんのためのクイズだ?

一拍おいてコクリとうなずくタロウ。

や、やさしい~
末っ子なのに。
どうでもいいけど、末っ子で「タロウ」というのもセオリー無視なネーミングだ。

こうして、結局お菓子をもらって帰る子供たち。こういうときは「競争」という現実を教えるのがいいのか、甘やかすのがいいのか、さいなまれながら会場をあとにした。

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