何の参考にもならないグルメ報告「ピエール・ガニェール」
★★★★☆
フレンチの巨匠ピエール・ガニェールの名を冠するレストラン。ANAインターコンチネンタルホテル東京36階の眺めは格別で、江戸紫をキーカラーにブランディングされた空間はどこか癒やしの香り。
席に着くと、まずカクテル・ド・ポッシュというアミューズのような前菜が供される。その後メニューを渡され、コースを選ぶのだ。映画のアバンタイトルみたいで粋である。
この店には全然日本語がうまくならないフランス人の給仕がいるのだが、彼が私の担当だ。
料理の説明をしてくれるが、ほとんど何言ってるか分からない。最後の「混ぜて混ぜて、召し上がれ」だけである。向こうも私が理解してないのを承知で喋ってる節がある。
互いに伝わってないと分かっていながら、説明し、聞いているという不思議な時間が過ぎていく。
店内に時々かかる「My Way」のインストが何かを暗示している気がしてならないのだが、少し曲解しているのかも知れない。
デザートもユニークで大変に美味しかったのだが、ある時から口に合わなくなった。「パティシエ代わりました?」と尋ねると、フランスに帰ったという。がっかりして席を立つと、帰りがけになんとパウンドケーキを持たせてくれたのだ。
不釣り合いな場所で、ぽつんと一人食事する客。その背中も分け隔てなく見てくれているのである。
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