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1. AppExchangeとは - AppExchange体験記

こんにちは。Salesforce.com(ときどきSFDCと略します)に2014年から2020年まで在籍していた私が体験した、AppExchangeパートナービジネス(一般的にこれは ISV; Independent Software Vendorビジネスと呼ばれることが多い)についての考察をまとめたものです。AppExchangeはSalesforceエコシステムの根幹をなし、「共に成長していく」力強いパートナービジネスであり、また、重要なプラットフォームビジネスになっています。すべてのパートナーがSaaS (Software as a Service;サース)になっているのも非常に重要なポイントです。考えてみれば私が牽引していたこの部門は複数の国内外SaaSのビジネスの現状をリアルタイムに体験できた、ものすごい貴重なものでした。

このNoteでの考察は
・(起業や転職などで)SaaSを始めた
・これからSaaSを始めようと考えている
・SaaSの実体験を読んでみたい
・プラットフォームビジネス(自社エコシステム)を始めたい
・さらにSaaS事業を成長させたい
と考えているみなさまにお役に立てるのではないか、と思っています。

今回は最初ですので、「AppExchangeとは」と題してビジネス全般のお話をします。ところどころに小ネタをはさんで、いろいろなSalesforceに関する豆知識もお伝えしていきたいです。

AppExchangeとは

「AppExchange (アップエクスチェンジ)とはなんですか?」と聞かれたときに、「iPhoneにAppStoreがあるように、SalesforceにもSalesforceで動くアプリがあります。そのプログラムをAppExchangeと呼んでいます。」と回答していました。
iPhoneをアップルから提供されただけの標準アプリだけで使っている人はほぼいないと思いますが、Salesforceのアプリにおいても同様のことを狙ったものです(* 注釈参照のこと)。

現在はAppExchangeウェブサイトのダウンロードが900万回を超えていますが、この数字はB2B(法人向け)アプリとしては驚異的な数字といってよいと思います。Salesforce.comが発表しているユーザー社数を例えば30万社としたとして、1社30回のダウンロードを記録していることになります。サンドボックスにも導入するので半分にしても15個のアプリ、という計算。一時期「5個以上のアプリを使っているお客様は解約しない」という報告もされたことがあるので、その充実ぶりには驚かされます。

Salesforceのアプリにも毎年多くの改善や改良が付け加えられていますが、それでも足りない機能はあるものです。Salesforce.comのCEOであるマーク・ベニオフは我々の部門に対しては「各国、各地のニーズをとらえて、お客様の顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)が向上するためのアプリを見つけてリリースせよ」と常に言っていました。この点で彼がぶれることはなかったと思いますし、それを実践していくべきインセンティブプランだったと思っています。

プログラム開始当初にリリースされ、日本での特徴を表すものとして、TeamSpirit社のTeamSpiritというアプリがあるかと思います。TeamSpiritの機能の1つに「勤怠管理」がありますが、米国ではオフィス勤務の従業員に対しては時間で管理することがないので、このようなアプリは意味がありません。日本では近年マネージメントにまで勤怠を記帳するように国から指示がでており、状況が全く異なります。1ユーザーあたり月額600円となる、このアプリが私の在任期間で1つの大きな旗印として大きく成長してもらえたのは本当に有り難かったです。2018年には東証マザーズへも上場されました。あのときは本当に自分のことのように嬉しかったです。

2つのAppExchange契約(OEMとISVforce)

このTeamSpiritは契約上はOEM (正式名称はforce.com Embedded program)契約で販売されています。OEMとはSalesforceのプラットフォームであるforce.com (現在はLighting Platformという)という基盤とともに、自社のSaaSアプリを販売していくものです。Salesforce上にアプリを造る、ということはSalesforceがないと動きません。WindowsアプリにWindowsそのものが必要なのと同じです。
ところがクラウドの世界なので発想をちょっと変えないといけません。「Salesforceを用意する」と言ってもAppExchangeが動くSalesforceはエンタープライズエディションというもので、そんなに安くありません(Lightning Platform価格表)。そのため、パートナー様にはembedded(一緒に同梱)されたプラットフォームを一緒に販売していただくことにしたのです。ただそのプラットフォームはそのアプリ専用に使用制限したので、アプリ以外の利用ではLightning PlatformをSalesforceから別途購入しないといけません。
また、勤怠管理のような人事アプリは全社員対象なのに、例えばSales Cloudは営業部員に対してだけ提供されます。これにより、営業部員以外の人にSalesforceを準備する必要があります。Salesforceを使っていないお客様もいらっしゃいます。その方々が「TeamSpiritを使いたい」というときにも販売ができるようになります。(下図参照)

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もう1つのISVforce(おそらくforce.comの上で動くISVアプリの意)契約はOEMとはちょっと異なります。大きな違いはSalesforceのお客様に対して販売していくことを前提に組まれたプログラムだということです。例えば当初からAppExchangeを牽引していたApptus (当時の記事があります)はSales Cloudに見積もり作成の機能を加えるもので、構成を組んで価格を入れると、その承認フローがわかるというもの(CPQ; Configure, Price, Quoteを略して呼んでいる)。商談上に記録が残るし、どこで止まっているか、戻しがあったか、など非常に便利でした。価格を提示することは企業にとってはとても大切なので、誰がどう承認したのか、記録が残ることは重要なのです。これは営業向けアプリとして開発されたため、Sales Cloud上で動けばよかったのです。これはISVforceで契約されていましたので、ご利用には別途Sales Cloudを購入する必要がありました。後にSalesforce.com自身がSteelBrickというCPQパートナーを買収したことでもこの市場が大きくなってきたという証明にもなったようです。

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* AppExchangeはAppStoreの兄弟?
「Salesforce入社時にAppStoreに似た仕組みだな〜」と思ったものですが、実はAppExchangeについてはこんなストーリー(マーク・べニオフがAppStore.comドメインをスティーブ・ジョブズに贈った舞台裏)があります。マーク・ベニオフはスティーブ・ジョブズをメンター(意味はこちらがわかりやすい)にしており、iPhone発売時にAppStoreの商標などをアップルに無償で供与しました。
実際、たった半年ですが、プラットフォームビジネスをSalesforceが考えていた当初、"AppStore事業"が存在していて、そこの最初のリーダーだったという女性にも在任中に会いました。「半年で名前が変わっちゃったのよ」ということでしたが、AppStoreがアップルで利用されることになり、SalesforceはAppExchangeを使うという今の形ができあがりました。

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注)2つの契約も対象を考えて決めるケースもあります。ホリゾンタル(水平、全社員向け)アプリの場合はOEMにした方がよく、Salesforceのアプリに合わせたものはISVforceを選択していました。Marketing Cloud向けにはOEMの概念がシステム的に実現できないので、ISVforceの契約を適用しました。

いかがでしたか?このあとどこまで何を書くのか、多少不安ではありますが、毎週リリースするくらいにまとめていければと思っています。
今後書いてほしい話題などのご感想、お待ちしております。

ビジネスの全体像と契約2形態をまとめたところで、そろそろ第1回は終えたいと思います。第2回はリクルーティング活動をお話したいと思います。

注)を追記しました。




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