見出し画像

麦だけでいいのに、ホップも一緒に発酵させようと思った人がいる。

ホップが無くてもお酒はできます。麦と酵母があればいいのです。
実際、麦焼酎やウイスキーは麦をホップを入れずに発酵させます
(その後、蒸留して完成)。

なのに、ビールにはホップを入れます。
ホップ入れないとダメです。
ホップが入ってなければ、もはやビールではありません。
(グルートビールとかは例外)

一方、ホップにとっても、ビールは無くてはならない存在です。
世界中で栽培されるホップの95%以上はビールづくりに使用されています。
現在、ホップのポテンシャルを一番活かしている商品がビールです。

もしビールが無くなれば…ホップの存在意義はどうなってしまうのでしょう。。。

ということで、今回は、ビールに欠かすことができないホップのヒミツを、改めてご紹介したいと思います!

…が、ビールとホップの関係を記載した記事は、ビール会社が山ほど出していますので、だいたいどこかで書かれている情報です。なので、どこかで見たことあるな、と思っても優しい目で読み流してください!

ホップって何?

ホップとは麻の仲間で、蔓性の多年生植物です。夏の収穫期には5mを優に超えます。夏のホップ畑は綺麗で幻想的です。ご家庭でもグリーンカーテンとして楽しめる植物です(まぁ、去年、私は家庭栽培失敗しましたが…)。

そしてホップと言えば、この可愛い形。
ビールの材料にもなる毬花(まりはな)です(本当は果穂と表現する方が正しいですが、一般的に毬花と呼ばれるので、ここでも毬花と記載します)。

この中にルプリンという黄色い粒がたくさん入っていますが、これが肝。

この中に、ホップの香り(精油)と苦味(α酸等)が詰まっています。
なので、毬花そのものを嗅いでも、あんまりホップらしい香りはしません。毬花を割って、ルプリンが出てくることで、ホップらしさが感じられます。

ちなみに、ホップの特徴の一つとして「雌株しか使われない」点も見逃せません。これは、雄株はそもそもルプリンを持っていないのと、受粉すると雌株のルプリンも減ってしまうため。雄花厳禁での栽培です。
ビールのためのホップなので、仕方ありません。

もしホップ畑に入る機会があれば、その時は「男子禁制の地に入っている」という気分も是非お楽しみください。

ビールとホップの蜜月

ビールとホップの蜜月は500年ほど続いています。
長いように見えますが、5,000年を超えるビールの歴史から見れば、実はごく最近の出来事です。しかし、ホップを使うようになったことが、ビールの歴史の中での最大の進歩、とも言われています。

ビールに関する世界最古の記録は、紀元前4,000~3,000年頃。メソポタミア文明「モニュマン・ブリュー(ブリューの記念碑)」と言われています。この時点では、ホップは登場しません。だって、麦だけで発酵できますから。ホップを入れないといけない理由が当時は見つかっていませんでした。

しかし、麦だけで発酵したホップには「微生物に弱い」という弱点がありました。今のような冷蔵保存なんてできませんから、厄介な問題です。

そこで、抗菌性を高めるためにゲッケイジュやペパーミントなど、さまざまなハーブをビールに混ぜていました。これをグルートと言います。ただし、グルートにはホップが使われていませんでした。使おうという発想が無かったんですよね。

ホップが注目されるのは、12世紀になってから。ドイツの修道院長であり、薬草学に詳しいヒルデガルト氏がホップの特性を詳しくまとめ紹介したことで、ホップが浸透し始めました。
ホップは抗菌性が非常に優れており、グルートよりもメリットが大きく、ドイツでホップ入りビールはどんどん広がりました。

そして、運命の1516年4月23日。歴史が動きました。
「ビールは大麦、ホップ、水のみを原料とすべし。」というビール純粋令がドイツで制定されたのです。
ここから、ホップとビールの蜜月は始まります。
ビール5,000年の歴史の中で、ホップと一緒なのは500年と僅か1割。
でもこの1割で、ビールの歴史は一気に進んだのです。

※余談ですが、ホップが広がるまで、グルート利権との熾烈な争いがありました。これだけでドラマ作れそうな面白さなので、興味がある方は是非調べてみてください(いずれnoteでまとめます)。

ビールにホップを入れる4つの理由

1.抗菌力が凄い!

ホップが広がった一番の理由です。どれくらい凄いかと言うと、
・123種のハーブの中で、最も強い抗菌力がある
・酵母や麹(カビ)など、お酒造りに不可欠な菌は抗菌しない
という、お酒をつくるために生まれたかのような力を持っています。
偶然って凄い。

別に抗菌なくてもいいじゃないか、と思われますが。時は中世。冷蔵設備なんてありません。ビールの発酵は低温で行う必要があるので、冬~春の寒い時期にビールを仕込み、夏まで取っておかないといけませんでした。ホップを大量に使うことで、保存性を高めたビールを作り、夏までもたせていたのです。

また、大航海時代でも抗菌力は注目されます。
イギリスからインドまで航海する間、ビールを飲み続けたいと思った人がいました。そこで生まれたのが、ホップを大量に使って抗菌力を強めた苦味が強いビール。これが現在大人気の、IPA(India Pale Ale)に繋がっていきます。

いつでも美味しいビールを飲みたい、人々のそんな願いを叶えたのがホップなのです。

2.苦味が美味しい!

ビールと言えば、苦い飲み物の代名詞。その苦味はホップに由来します。
苦味を持った素材は数多くありますが、ホップの苦味は独特で、切れ味が鋭くビールのような炭酸飲料に相性ピッタリ。
また、本来苦味は忌避される味ですが、食べ慣れるとやみつきに繋がる味。初めて飲んだ時は「苦くて美味しくない」と思われるかもしれませんが、何かのきっかけで「苦くて美味しい」に変わる瞬間が訪れます。

さらに、美味しさは五味(甘味・旨味・酸味・塩味・苦味)のバランスが大事といわれますが、ビールの原料である麦(麦汁)だけでは、甘味・旨味・酸味(酸味は発酵で生まれます)しかなく、バランスが取れていません。
ここに苦味が入ることで、味のバランスが取れ、美味しさがアップします。
(塩味は、おつまみで摂ってマリアージュをお楽しみください。もしくは、塩ビールもアリです)

おまけに、苦味は口の中に残った脂をさっぱりする効果もあるので、揚げ物や中華料理との相性も抜群。ビールが色々な料理と合わせられる理由です。

ちなみに苦味のヒミツは、こちらにまとめてますので、ぜひご覧ください!

3.香りがステキ!

五味のバランスが大事と言いましたが、どんなに味だけが良くても「美味しい!」にはなりません。味に加え、香りが良いことも重要です(鼻が詰まっているときは、ご飯が美味しくないですよね)。

もちろん、麦を発酵させることで、モルト香(麦っぽい香り)やエステル香(酵母の香り)が生まれますが、これだけでは香りの幅が広がりません。
そこでホップの出番。ホップの香りは非常に複雑で、̪シトラリー(柑橘っぽい)、フルーティ(果物っぽい)、スパイシー(香辛料っぽい)、グラッシー(草っぽい)、など美味しそうな香りをたくさん持っています。
しかも、品種によって香りの個性は豊か。ホップの香りをどのように使うか、によってビールの個性は大きく変わってきます。

4.泡立ち・泡持ちが凄い!

ビールをグラスに注ぐと、立派な泡が立ち上がりますが、あれもホップのおかげです。ホップの苦味成分やポリフェノールの力によって、泡が立ち上がり、更にグラスに残り続けます。
この泡は見た目がきれいなのは勿論、炭酸やビールの香りが減るのを防いだり、酸化して味が変化するのを防ぎます。また、泡があることで口当たりも良くなり、ホントいいことづくめ!

終わりに

今回は、ビールに欠かせないホップのヒミツをご紹介しました。
ホップがないとビールは美味しくない。そして、ビールじゃないと、ホップは輝けない。お互い、最高のパートナー。
今夜ビールを飲まれるときは、是非ホップの力を感じながら、ビールをお楽しみくださいね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

*****

なお、INHOPではホップの可能性をビール以外に広げるべく、色々な商品販売や情報発信を行っています。宜しければ、是非こちらのサイトもご覧ください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?