「初めての人生の歩き方」(有原ときみとぼくの日記)第39房:あけましておめでとうございます初めまして2020年

 皆様明けましておめでとうございます。
 今年もなにとぞよろしくお願い申し上げます。
 引き続きあたたかい目で見守ってください。

 今年はもう爆発します。

 大晦日。
 有原くんはガキの使いと紅白を交互に見ながら、彼女からの連絡を待っていた。
 もうすぐ新年。
 それまでに彼は仲直りがしたかった。

 12月末にケンカになって、そこから仲直りができずにいたことを彼は気に病んでいた。
 昔はちっとも気にしなかった年末や年始のイベントだが、今の彼は伝統行事はおろか忘年会や新年会などの形にもこだわるようになっていた。
 元を担ぐ。
 それは見えない力にすらすがろうとする無意識の自己防衛だということを彼もうっすらとは分かってはいたが、そこまでしても彼は怯えていたのだ。
 堕落はもう二度とゴメンだ。
 その胸中のせいか彼は令和最初の大晦日と正月を正解のない完璧という形で過ごしたかった。

 だから彼女とケンカしたまま過ごすなんて言語道断だった。

 約束の時間を過ぎた。
 暮れは迫っている。
 そしてスマホがようやく共鳴した。

 電話中に年を越した。
 なんとも言えない空気。
 仲直りをしたのかどうか、それはまだなんとも言い難い。
 だが、彼の胸のうちにはある種の清風が流れていた。
 これでよかったんだ。
 それは彼女の話を淡々と聞いていて、ようやく彼女の言わんとしていることが理解できたおかげであった。
 同時に自身の普段の傾聴能力の低さに呆れもしたが、後悔ではなくそれに気がついたことを彼は喜んだ。
 沈黙は金、雄弁は銀。
 長い人生、勉強をさせてもらっていると思えばいいじゃないか。
 彼は決意した。
 成長してやる。今年の目標は自分を押し殺して相手の話を聞くことだ。相手の意向を組んで、相手の思考をまず落とし込み、徹底的に話を聞いてやる。それがきっと人生を豊かにしてくれるはずだから。

 そして彼はもう一つ大切なことを悟った。
 ぼくの彼女は本当に最高な女性だということを。

 元旦。
 まだ暗いうちに目を冷まし、新年早々の小説を執筆し、彼女に買ってもらったお揃いの靴をおろして、そのまま父と車に乗り込んだ。
 初日の出。
 山の中腹でおり、そこから少し歩いて丘の上へ。
 風。
 山々に木霊する風の音。木々の音。遠くに見える深い色の海。
 柿本人麻呂の石碑を前に、彼らは初日の出を待った。空には分厚い雲が覆っており、かすかに隙間が空いているような状態だった。二人の間には会話はなく、おそらく初日の出は拝めないだろうと言う気持ちを山の冷たい風に身を震わすことで誤魔化していたのかもしれない。
 実際に山は冷たかった。ポケットに入れた手は出すに出せず、足は寒さでかじかんでき、じっとすることができず周辺をぐるぐると徘徊するのがやっとだった。

 鳥の声が聞こえた。

 それをきっかけに虫が鳴き、他の鳥も鳴き、山々は色彩を帯びていった。
 遠くに見える海が淡い青を放っており、濃淡がなく空との境目がわからないほどだった。その上にある雲が流れるように光を帯びていく。
 その光景は少なくとも彼の心を打った。
 雲の切れ間から覗く空の青さに。山々に色づく緑とその音に。遠くに見える海の白さに。

 人は一人では生きていけない。

 直接照らしていないのにもこの力強さ。この明るさ。太陽に感謝して彼は空を仰いだ。
 ありがとう、と。

 そのとき、人がきた。
 自転車を押して。
 全身をスポーツウェアに防護したアスリートのようで、自転車もプロ仕様のような本格的なやつだった。

「明けましておめでとうございます」

 父が口を開いた。
 続けて彼も口を開いた。
 そこからしばらく奇妙な雰囲気が続いた。
 その男はあまり喋らなかった。父はそんな男に頻繁に話しかけていた。それを見ていた彼は少し嫌な気分になった。
 恥ずかしい。
 という思いがよぎったが、顔に出る前に踏みとどまった。

 父は父だ。

 俺は俺だ。

 写真を撮り出す男に父が再び声をかけた。
「よかったらとりましょうか」
 その言葉で不思議な雰囲気は砕けてここには初日の出を見に来た同士しかくなった。

 30分過ぎた。
 雲は相変わらず空を覆っている。
 有原くんはもう限界だった。
 山の風は冷たい。
 寒い。
 
 二人は男に挨拶をして山を降りた。
 家についた頃、ようやく太陽が覗いたような空になった。
 二人はそのまま家に入った。
 ほころんだ顔は家を一層明るくした。

 実は初日の出には一人で行こうと思っていた。
 それなのにわざわざ父がついてきてくれたのだ。
 そして地元民ですらしらないような秘密のスポットを案内してくれたのだ。
 本当に嬉しかった。
 それだけでもう初日の出なんてどうでもよかったのだ。

 ありがとう。
 今年もよろしくね。

 朝食をたべ、彼が海に向かった。
 父と。
 父に携帯の操作方法を教え、誰もいない浜辺で服を抜く。
 そのまま冷たい風の中海の中へ。

 冬の海が白いだなんて彼は思ってもいなかった。

 白く輝いている水。寒いより痛く、呼吸が圧迫されそうになる。それでも頭から潜り泳ぎだすと、体は冷たさを忘れて熱を生み出そうとする。

 不思議だった。

 冬の海に水着一枚で入っているのに、なぜこうもあたたかいのだろうか。
 海で泳ぐたびに父の笑い声が響く。
 禊。
 よりも遊び。
 全力で遊ぶことの楽しさを知った元旦だった。

 はじめての寒中水泳。
 めちゃくちゃ気持ちよかった!
 楽しかった!
 この体験はネタになりそうだから、いつか小説で使おうと思っています。
 それと本当に楽しかったから、来年から誰かと一緒に入りたい!
 島根に住んでいる人、一緒に入りませんか?笑
 お気軽にご連絡を!笑

 海からでたときの寒さは言葉にできなかった。全身の感覚が死んでいた。急いで服をきて車へ。そのまま温泉に向かう。車中、不思議と体がポカポカしてきた。

 体が生きようとしている。

 自分の体がここまで頑張って生きようとしている。
 その気持ちはいつもの温泉をより気持ちよくさせた。

 生きようとしている。

 生きていることは奇跡だ。

 人間は奇跡でできている。

 初めての人生、すべてが新鮮だ。

 生きていることが新鮮だ。

 命。

 ありがとう。

 新しい年。

 今年は命を輝かせます。

 爆発とは海への回帰だ。

 頑張れ、頑張れ。

 今年は更に自由に。

 自由。

 一度きりの人生、怯えるな。

 ビビるな。

 自分のペースで歩けばいんだ。

 明日は怖すぎる同窓会が待っている。

 怖すぎるけど、もしかしたらもう二度と会わない人もいるだろう。

 後悔はしたくない。

 行って嫌ならすぐに帰ればいい。

 そうだ。

 頑張れみんな。

 今年はみんなの心を豊かにします。

  今年もよろしくね。

 みんな愛してるよ。

 Yes!

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