「家族の花」あとがき

 まずは読んで下さったすべての皆様方にお礼を申し上げます。
 本当にありがとうございました。
 そして審査員の方々を含め島根県民文化祭の関係者さまに心から感謝を申し上げます。
 来年もよろしくお願いいたします。

 さて。
 本当に読んでくれてありがとう。
 ぼくは幸せ者です。
 小説とは読者がいてこそ。
 どんなに優れた作品があってもそれを読む人がいないのなら、それは意味がありません。
 ピラミッドだってゴッホの絵だって愛するあの子だって誰かが見つけないと想像することすらできません。
その点、どうやらぼくは世界遺産レベルの幸運の持ち主だったようです。
 ただ、それはぼくだけではありません。
 あなたも、おじいちゃんも、赤ちゃんも、世界で一番不幸だと嘆いている人だって、本当はみんなが世界一の幸運の持ち主なのです。
 だって有限の時間を手にしているんだから。
 そしてもう一度お礼を言わせてください。
 そのあなたの大切な時間をこの小説のために使ってくれて本当にありがとうございました。
 このご恩は次作でお返しします。さらにあなたを感動させられる作品を書きます。
 約束です。
 また近々お会いしましょう。

 最後になりましたが、今までぼくを支えてくれた最愛の家族、両親、パートナー、友人に心から感謝を申し上げます。

 ありがとう。
 愛してるよ。

 今回のテーマは家族愛。
 ぼくはずっと親に迷惑をかけてきたという自責があったから、今回は親に感謝を伝えたくてそれをテーマにしました。
 最初は親を登場させて主人公と一悶着あった後の和解というベッタベタな構成を考えていたけど、なんか違うなーと思ってやめた。
 一番考えたことは親の気持ち。
 ぼくの両親は子供への愛情が半端ない。
 だからきっと、自分たちが亡くなっても子供たちを心配するんじゃないかと思った。

 よし、それなら親のいなくなった世界を書こう。

 親に感謝を伝えたくて、親を作品内で殺すのはどうなの? と少し倫理が咎めたけど、それが小説のいいところだよね。
 かっこうではなくて、誰になにを伝えたいかが大切。
 今回の作品は、親にだけ伝わればいいかなーと思いながら書きました。

 結果としては大成功だと思っている。
 母はあんまりな反応だったけど、父はジーンとして泣きそうになったとだと語ってくれた。
 身内の医者の言うことは聞かないというけど、身内ほど信頼してて信用できないものはないと思う。
 今回の作品は親のものだ。
 他の人にあまり伝わらなくてもいいやと思って書いたけど、それが賞を頂けたということに、今度の可能性が見えた気がする。

 あー、それにしても楽しかった!!

 大切なことは、
 誰のために、なにを、どうして伝えたいのか。
 読んでどう思って欲しいのか。

 今さらだけど、そんな感じのことが分かった気がする。
 遅っ!!

 島根県民文化祭に応募して五年。
 過去には銀賞、金賞、銅賞を受賞していたが、どうしても知事賞だけが獲れなかった。
 気合を入れ直し、昨年応募した作品はなんと落選。入選すらせずに小説家として本格的にデビューを目指していたぼくは出鼻をくじかれた。
 気がつけば小説から逃げるように生活を忙しくしていた。
 頭の中では「書きたい、書かなくては」と思ってたが、どうやらそれは嘘だったようで、ぼくは全くと言っていいほど原稿用紙(本当はPCだけどこっちの方が字面的にカッコいいよね笑)に向きあわなかった。

 当時、ぼくは長いトンネルを歩いていた。
 終わりの見えない真っ暗な一本道。
 ときおり頬に触れる風が冷たくて、雫の音がこだましていた。

 全てを始めるには、全てを捨てるしかないのだろうか。

 ぼくは考えた。
 まずは歩こう。
 トンネルを抜けよう。
 話はそれからだ。

 昨年、あらゆるものを捨てた。自分を見つめ、広い直し、構築していく中で、もう小説の熱意は欠片程度にしか残っていなかった。
 そのタイミングの島根文芸。
 毎年応募していたのもあって、また父(島根文芸の詩人)の勧めもあって、んじゃ今年もできたら応募しようかなー程度のノリだった。
 バイト中に頭の中でなんとなくの構想を練って、さてあとは書くだけだ! の状態からずるずるだらだらと引き伸ばして引き伸ばして。
 正直怖かった。
 これで獲れなかったらどうしよう。
 恥ずかしい。
 才能がないのか。
 やはり無駄だったのかも。
 とかね。


 それともう一つ。 


 長いトンネルはもう抜けていた。

 だから余計に書けなかった。
 今までのぼくの作品はドロドロしていて自暴自棄の無頼漢気取りの読んでいて鬱になりそうな自己陶酔型の作品が多かった。
 よく言えば太宰治の崩れた感じ。
 (太宰治ファンの方ごめんなさい)
 しかしトンネルを抜けるとそこはぼくが夢見ていたなにもない草原だった。
 太陽が神々しく、その光を浴びているだけで幸せな気持ちになった。
 世界はなにも変わってはいないのに、世界は驚くほど美しく生まれかわったのだ。 
 だから書けなかった。
 アイデンティティだった心の中のヘドロが消えちゃったから、なにをどう書いていいか分かんなくなっていた。

 必要だったのは転換だ。
 転換は生まれ変わること。
 生まれ変わりとは冒険だ。

 そして締め切りの当日の午後。
 締め切りは夕方の5時。
 今は1時。
 なんとまだ一行も書けていなかった。

 すごく言い訳になるんだけど、今回の作品は本当にはじめての試みで、こんな作風でいいのかなあ、これ小説っていうのかなあと思いながら書き進めたので、とにかく不安だったのです!!

 冒険。

 さらに時間がなさ過ぎて3時間ぐらいで仕上げた突貫工事の凸凹作品。締め切りの5分前に最後の1行を書き終わって、そのままネットで送信。推敲も誤字脱字のチェックもなに一つできませんでした。

 本当にごめんなさい!
 言い訳して!
 だって生まれて初めてネットに投稿してから未だに心臓がバクバク言ってるんだもん!

 怖い!
 ひぃーーー!!!

 これからも頑張ります。
 あたたかい目で見守っていてくれると助かります。
 なにとぞよろしくお願いします!

支援していただけたら嬉しいです。