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「愛だろ、愛」はスポーツ指導者の真理

普段とはちょっと毛色の違うタイトルだが、『「愛だろ、愛」はスポーツ指導者の真理』という話しをしていこうと思う。

サントリー「ザ・カクテルバー」というアルコールが昔あった。永瀬正敏氏のCMで有名になった、この商品のお決まりフレーズが「愛だろ、愛っ。」というもの。

1993年以降、長年使われていたもので、私のように30代後半ぐらいから40代ぐらいの世代は、まだ覚えているのではないだろうか。

改めて「愛だろ、愛」というフレーズが頭に思い浮かぶスポーツの場面がいくつかあった。そのケースを共有していきたい。

 

女子ソフトボール日本代表の例

2021年7月に東京オリンピックにて13年ぶりの金メダルを獲得し、連覇を成し遂げた女子ソフトボール日本代表チーム。

このチームは、強さだけでなく、チーム内の信頼関係、絆の深さが画面越しからでも伝わってきたのがとても印象的だった。

ソフトボールに関しては、無観客試合になったことでベンチからの声がよりすごく伝わるようになっていたのを覚えている人も多いだろう。

決勝戦のアメリカのベンチを中心として、各国ただ野次のような大声を出して相手にプレッシャーかけるわけではなかった。ごく普通にチームメイトに声援を送り、結構悪ノリとかもしながらガンガン応援していて、すごくいい雰囲気だなと感じたものだ。

日本チームもすごくいい声が出ていて、チームのムードや文化がステキだなと感じたが、私はいったいこの素晴らしさはどこから来るのだろう?ということを考えながら観戦していた。

ちょっと非科学的という感じはあるかもしれないが、この日も解説をされていた宇津木妙子さん、そして日本代表監督を務めている宇津木麗華さんの指導力や愛情が最も大きな要素なのではないか、というのが私なりの結論だった。

 

妙子さんと麗華さんの在り方から派生したチーム愛

知らない方も多いと思うが、この2人に血縁関係はない。宇津木妙子さんの現役の時のプレーに憧れた麗華さんは当時、中国国籍だった。

麗華さんは来日し、妙子さんが監督を務める社会人チームに入団。その後、日本国籍を取得すると、自ら宇津木という姓を選んだというのは有名な話だったりする。

お2人とも同じ名字だが、麗華さんが宇津木妙子さんに憧れて宇津木の姓を付けて、宇津木麗華さんになっているわけだ。

妙子さんは日本シンクロナイズドスイミング(現在はアーティスティックスイミング)の名コーチ、井村雅代さんと並んだ名コーチであるが、鬼コーチとしても有名だった。

1時間ずっとノックをするとか、今考えたらパワハラで訴えられそうなことも当時はしていらっしゃって、選手が震え上がっていた様子を私も覚えてる。

それでも井村さんと同様に、根底に流れる愛情というのが選手に伝わっていたのだろう。

東京オリンピックでも解説では厳しい評価を伝えることは多い。また気持ちが入りすぎてしまうのか、時には独り言のように聞き取れない声でひたすらブツブツ言ったりする。そんな宇津木妙子さんは、金メダルを決めた勝利の瞬間は絶叫で喜びを爆発させていた。

 試合後に宇津木麗華監督や選手たちから手を振られて、「妙子さ~ん」なんて呼びかけられたら、マイクをつけているにも関わらず思い切り叫んで、「ありがと~う!」とおっしゃっているのが全国放送で流れたりした。

 プロの解説という点で、問題はあるのかもしれない。しかし心底ソフトボールを愛し、今いる選手たちも子供たちのように可愛がって愛している、チャーミングな様子が伝わってきたものだ。

 

指導者が最優先すべきは愛情

 サイエンスや分析が発展し、コンプライアンスも厳しくなった今、酷い指導者が淘汰されるようになったのはとてもいいことだ。

その一方で、杓子定規な指導に終始する可能性もある。コーチングがマニュアル化されていくばかりでは味気ないだろう。

コーチングそのものに答えはないのだから、常識の範囲というか人道的なところを守っていれば、実はどんなアプローチであってもいいのだと思う。

 ・選手ファーストという気持ちがあること
・揺るがない愛情があること

 この2つを備えていれば、選手には伝わるものなのだ、と今回の件を見て感じた。

 若い世代とか令和生まれの子たちもこれからどんどん出てくる。しかし、世代に関係なく、本質的な「愛情のあるコーチング」というものに飢えているという部分は、大いにあると思う。

やはり最後は人と人が関わる対面でやるスポーツ。指導者の愛情、選手へのリスペクト、スポーツ・その競技への愛情といった要素は、選手たちを育てていくのだろう。

 


カーリング女子日本代表ロコ・ソラーレの例

 2022年7月1日。テレビ朝日の「タモリSTATION」にてカーリング日本代表として2021年に初の銀メダルを獲得したロコ・ソラーレにまつわる特集を観た。

 その中で、北見市常呂町がカーリングの聖地になった理由について初めて知ったのだが、常呂町の発展のためにカーリングの普及に尽力したのが、街の名物おじさんであった小栗祐治さんだったそうだ。

カーリングというスポーツを目の当たりにした小栗さんは、「これを普及することで常呂町を活性化することができる!」と確信。

1からカーリング場を作り、子どもたちにカーリングの魅力を指導していった。本橋麻里さんの恩師でもある小栗さんは88歳、2017年にこの世を去っている。

本橋さんが語った小栗さんへの想い(オンライン記事)

 小栗さんの生前のVTRが流れた途端、本橋さんが思わず涙を流し、その後ずっと涙が止まらなかった。TV収録ではあったがその様子を観てグッと胸に迫るものを感じた。 

それまで一市民であった、小栗さんに、カーリングの能力や指導力が抜群にあったわけではないはず。しかし町のため、皆のため、という利他の精神や選手たちへの愛情を絶え間なく感じていたのだと思う。

 引き継がれる「精神」や「在り方」

 この精神が本橋選手に伝わっていたからこそ、彼女は当時のオールスターチームであったオール青森から脱退し常呂町でチーム結成したいという決断に至ったのだろう。

 そして当然だが、本橋選手のこの在り方が、今のロコ・ソラーレの価値観や文化、雰囲気につながっているわけだ。


 たぶん最も大事だろう「精神性」や「在り方」。これらは取っておけるものではないし、形があるわけでもない。しかし無形だからこそ、これほど強いものはないし、人の心を動かすのではないか。

我々が、さほど詳しくないカーリングの試合に魅了され、ロコ・ソラーレの選手たちの泣き笑いにあれほど感情移入してしまった理由。それは、彼女たちの背景に流れる、脈々と引き継がれてきた精神性や在り方を、無意識に感じ取ったからなのだと思う。

 引き継ぎ伝えられていくことって尊いな、と改めて気がつくことができた。

 

 まとめ

 『「愛だろ、愛」はスポーツ指導者の真理』というタイトルで、やはり指導者の一番の資質や才能というのは、愛情なのだと再認識できたことを伝えてきた。

 簡単なことではないが、あるべき姿や自分の理想の指導者像を忘れることなく、きれい事を信じる。テクニックやすべきことはあるが、常に目の前の選手たちに、愛情と尊敬を持って接することを忘れない。

 自分自身、肝に銘じてスポーツ現場に携わっていきたい。

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