見出し画像

【フィッシュ&チップス】を初めてレストランのメニューとして出したお店

トルコ人の家はグリーンパークのスタバからそう遠くないところにあった。車でどこに連れていかれるのだろう。グリーンパークの周りはメイフェアという高級エリアで、彼はそこを案内してくれると言う。まずは街中を車で走り、解説付きで見物する。その時わたしは内容を理解できていたのか…覚えていない。ただ、わたしがあまりロンドンを知らなくて、高級エリアに縁のなさそうな語学学校の日本人だからか、メイフェアというエリアを見せたいんだ、ここは知っとくべきところだよ、的なことを言っていたような気がする。

まずはメイフェアホテルという高級ホテルへ。ここは素晴らしいところだから僕もよく来るんだ、とロビーを見せびらかされる。別に彼の家ではないのだが、なんだか誇らしそうであった。たしかにどこでも高級ホテルのロビーは素晴らしい。例に漏れず、メイフェアホテルもたしかに素晴らしかった。わたしはそこで素晴らしいトイレを拝借し、また車に乗った。

道中はもちろんいろんな質問が飛んでくる。わたしが日本で自営業をやっていて、いろんな商材を扱っている、文房具とかもね、ってな話をすると、じゃあ今から連れてくところに売り込んだらいいよ!と、百貨店へ連れていかれた。日本の感覚じゃ、百貨店に飛び込み営業で商材を置かせてくれ、なんてなかなかハードルが高そうな話だが、海外だからなのか、彼がトルコ人だからなのか、そのへんはわからないけれど、ごくごく当たり前のようにそんな話をされた。多分彼はビジネスに熱意のある商人なのだろう。勝手な印象だが、自国以外にいるトルコ人はみな、あきんどのイメージが強い。

そうこうしていると、だんだんと日も暮れてきて、どこかでご飯を食べよう、ということになった。フィッシュ&チップスはもう食べたかい?と聞かれる。わたしはまだだと答える。じゃあ決まりだ!と彼は車を走らせた。彼はロンドン初心者にロンドンを紹介するのが趣味なのかもしれない。トルコ人だけど。

フィッシュ&チップスと言えばイギリス名物、そして労働階級の人たちが安くお腹を満たす代表的なものとして知られているメニューだ。白身魚に衣をつけて揚げたものにヴィネガーをジャブジャブかけて食べる、なんてのが有名な話よね。わたしも一度は経験したいと思ってたし、イギリスに行った人ならとりあえずは食べてみたいと思うものじゃないだろうか。そんな憧れのチープな食べ物への出会いがこのタイミングでやってきたのだ。

ところがわたしの初フィッシュ&チップスは、予想を裏切る体験となるのだった。彼は高級レストランの前に車を停めた。「ここはレストランで初めてフィッシュ&チップスを出したところなんだ」。へぇ~、そうか、たしかにそもそもフィッシュ&チップスってのはレストランで食べるようなメニューではないわよね。イメージの中にあった、油でギトギトの新聞紙にくるまれたフライドフィッシュ、だが、わたしの目の前に供されたのは、お皿に盛り付けられ、フォークとナイフで頂くオサレメニューなのであった。

かくしてわたしのフィッシュ&チップス体験は一風変わったものになった。もし次に機会があったらチープな方のフィッシュ&チップスを食べてみたいけれど。その後わたしはレストランでも屋台でも、フィッシュ&チップスを食べる機会はなかった。だからわたしの中のフィッシュ&チップスは、未だにオサレメニューなのだ。でもそんなありきたりでない経験も気に入っている。

半日あれこれと街を案内してくれて、夕食までご馳走してくれて、帰りやすい駅まで送ってくれたトルコ人の彼は、きっと本当にナイスガイだったのだろう。帰り際にくれたメモ紙に書いてあった番号にわたしが連絡することはなかったけれど。貴重な1日をありがとう。続く。(今回の画像は実際のもの)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?