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凛々しさの理由

ロミオの月命日がやってきた。この1ヶ月間、ほんとうに長く感じた。歳を重ねるにつれて、時の流れは着実にスピードを上げているけれど、この1ヶ月はとても長かった。それだけわたしのなかで咀嚼に時間がかかっているということだろう。

ロミオの写真を見た人は口をそろえてこう言う。

「凛々しいね」「キリッとしてるね」「イケメンだね」

そして、わたしは得意げになる。

よく、キツイ顔をしていた捨て猫が愛情を受けてやさしい顔にかわったという話を聞く。本当に環境で顔立ちは変わるのだ。

ロミオが凛々しい理由も、そこにある。

アメリカンショートヘアの純血統は、まるい目とかちょっと鼻のつぶれた顔がスタンダードらしいけれど、鼻筋がとおっていてライオンのようにつり上がった目じりが頼もしさを感じさせる、ロミオ。

我が家に来て、12年。セラピーキャットとして、わたしを支えてきたからこその顔立ちだ。

ちいさな子猫だったころは、あどけない顔をしていた。子猫の成長は早いから、すぐに少年になり、青年となった。我が家に迎え入れてからは、引きこもりだった14歳のわたしと毎日を共に過ごした。外にはほとんど出ず、たっぷり寝て、気が向いたときに食事をとる。それは、ナチュラルな猫の生活とほとんど変わらなかった。

なにもしていないから、当時はほんとうに時間が経つのが長かった。多少はインターネットや音楽、野球をみたりもしていたはずだけど、振り返るとなにをしていたのかわからない。2匹の猫として生きていた。

ロミオがやってきて半年がすぎたころ、わたしは閉鎖病棟に入院した。はじめのひと月は外泊はゆるされなかった。わたしはロミオの写真を病室に貼ったりして寂しさを紛らわせていたが、ロミオは突然わたしがいなくなってわけが分からなかっただろう。ようやく外泊で帰れた時、ちいさくなった彼の姿に驚いたものだ。わたしが入院してから、食欲がなくなってしまったという。そのくせわたしの顔は忘れてしまっていて、話しかけても「?」という態度を取られ続けた(笑)その後、思い出したようにわたしの匂いをかぎ、手が真っ赤になるくらいずっとなめてくれた。後にも先にも、10分もグルーミングされたことなんてなかった。

3ヶ月程度で退院し、その後も大きな波も小さな波もあったが、ロミオと一緒に乗り越えてきた。ロミオはわたしの保護者であり、相棒である。友であり、恋人でもある。絶大な信頼をおき、無償の愛があった。彼は大きな責任感のもと、わたしを守ってくれていた。それを証明しているのが、あの顔立ちだ。

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ヤンキーの彼氏とその女とかよく言われたなぁ(笑)

猫は家族を序列をつけてみているっていうのは本当だと思う。両親には甘えたり従ったりするロミオ、弟には座布団やあたたかいストーブの前の席を絶対に譲らなかった。わたしとはちょうど対等に接してきた。子猫のころ以外でゴロゴロいうことはほとんどなかった。ひざに乗ってくることもとうとうなかったな。顔をなめてくるのはわたしだけだった。わたしが寝る時間が遅くて待ちきれなかったロミオが、母の布団に入っているのを見たときの気まずそうな顔は忘れられない。背中をむけて、気づかないふりしたりするんだよ。それで、時間がたってからそろりそろりわたしの部屋にやってきて、何事もなかったように寝るの(笑)いとおしいったらない。

猫って表情筋がないから、表情はないらしいんだけど…。ロミオはほんとうに表情が豊かな子だった。

誰がなんと言おうとわたしのロミオ。虹の橋には着いたかい?涙がでなくなったら、わたしの中に入ったってことらしいけど、まだ涙がでるよ。まだロミのもふもふに、顔をうずめられるような気がしてしまう。もう猫カフェに行ってしまったわたしを許しておくれ。どの子の毛並みも肉球もすばらしかったけれど、やっぱりロミとは全然ちがったよ。やっぱりロミが、わたしのせかいいちのねこだった。そろそろ夢に出てきてくれないかな?さみしいよ。

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