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【31話】幼馴染みの想いで話(唯と梨紗ちゃん)

前回【30話】で、
『さて、今回は出番がチョッピリの唯ちゃんはというと、不満そうな顔をして、梨紗ちゃんと店長のところにやって来ました。
出番のことではないようですが、何か面倒くさくなる予感がします。』
また近いうちにでお話を、で終わりました。
長引いても何ですから、今回はそのお話をします。

唯ちゃんの不満

「店長さん」
「何だね 唯ちゃん」
「唯 チョット相談があるんだけど 何か唯にはないの」
「・・・何かって」
「もー 梨紗ちゃんみたいに 唯にも使ってみるんだよ って言うことだよ 何かないの 店長さん」
「何かって言われても 唯ちゃんボーカルだし 楽器でもいいなら考えようもあるけど」
「楽器はダメだよ 練習するのは面倒くさいよ」
「唯 そんなわがまま言って 店長さん困ってるじゃない」
「でも梨紗ちゃん 唯も違った何かが欲しいんだよ」
「何がいいのよ」
「それが分らないから 相談なんだよ」
「唯が分らないんだったら 店長さんも私も分らないわよ」
「それはそうかも知れないけど・・・・・」
「・・・・それじゃあ チョットまってて 唯ちゃん」

と、店長さんは店の奥へと行ってしまいました。
そして数分後に、何かを持って戻ってきました。
それは、唯ちゃんにとって、その何かは運命の出会いのなるものでした。
もちろん、浮いた話ではありません、念のため。

唯ちゃんの、運命の品

「唯ちゃん お待たせ 今度のライブにこれ使ってみてよ」
「なーに これ 箱小さいね それにマイクの写真が貼ってあるよ」
「そう マイクだよ これ 唯ちゃんにはピッタリじゃないかな」
「でも マイクはいつも使ってるよ」
「このマイクは普段使っているのとは違って 最近海外から代理店通して入ってきたデモ機なんだよ」
「どこのなの」

ゼンハイザー(SENNHEISER)といってドイツの音響機器メーカーで ヘッドフォン及びマイクロフォンなどが有名なんだ プロ用途にも使われている物だよ」
「それって高いの いつものとどう違うの」
「う~ん そうだな 定価で2万5千円ってとこかな」
「安いのか高いのか よく分らないよ」
「そうだなあ 高いのだと5万や10万ってのもあるから 中ぐらいだろうなあ 普段使いのだと数千円だから」
「どう違うの」

「これは e 945 って言って ボーカル用のダイナミックマイクなんだよ 高音の特性が良くて 抜けが良くて高音質だそうだ まだ使ってないから分らないけど 唯ちゃんは中高音 特に高音が綺麗だから 合ってるかもしれないね」
「へえー だったら唯にピッタリじゃない よかったじゃない」
「ただ 指向性が超単一だから 口元に近づける必要があるんだ でもその分 動きがある場合でもハンドリングノイズを低減するから 指向性のことだけ注意すればいいだけだね」

SENNHEISER e945

「んーん 言ってること よく分らないけど 唯はマイクには結構近づけるから いいかもしれないね 使ってみたいんだよ」
「じゃあ 唯ちゃんもモニターとして 終わったら感想とか聞かせてよ」
「分ったよ 面倒だけど モニターするよ」
「じゃあ 梨紗ちゃんとスタジオで使ってみてよ ライブでは唯ちゃん専用でPA(Public Address)通すから」

と言うことで、唯ちゃん大満足です。
SENNHEISER e945 のデモ機のことを、店長さんは忘れていたようです。
唯ちゃん、ナイスタイミング、と言うところでしょうか。

お気に入りのマイク

このマイクですが、唯ちゃんは余程気に入ったようで、高校入学のお祝いとして、買って貰ったそうです。
しかし、唯ちゃんマイクの扱いが雑だったためか、大学時代1年生時のバンド活動で急に故障していました。
しかし、故障したマイクは直すのが難しいと在住先の楽器店で言われ、先輩が補助するからってことで、同じ物を1本は予備として2本買いました。

3本のマイクの行方

でも、故障したマイクは大切に保管していました、押し入れに放り込んで。
新しい1本目のマイクは、大学時代に使い、卒業後は故障したマイクは、いつもの楽器店の店長さんが何とか治してくれて、余程愛着があったらしく、またそれを使い始めました。
新しく買った2本目のマイクはと言うと、封も開けていない新品のままで、それは大切に押し入れに放り込まれました。

3本のマイクの名前

唯ちゃんは、その3本のマイクに名前を付けていました。
高校時代に買ったマイクは、唯1号、
大学時代に買ったマイクは、それぞれ、唯2号と唯3号です。
唯3号は、封も開けていない新品で、大切に押し入れに放り込まれたマイクです。

不憫な唯3号

大学時代に使った唯2号と、新品の唯3号はどうなったかですが、唯2号はは唯1号が治ったので使われなくなり、それよりも不憫なのは未開封で新品の唯3号です。
でも、結果的には唯2号と唯3号は、唯ちゃん以外の人に使われることになったのです。
特に唯3号が、日の目を見るのは、唯2号よりまだ後のことです。
それらが誰が使うようになったのかは、まだ先の話です。

とにかく、唯ちゃんの不満は解消され、もうニコニコです。
ずっと長く、使えるマイクが見つかったのです、まさに運命の出会いです。

では、また次回、お会いしましょう。

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