メタル(金属)を介して繋がる宇宙
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メタル(金属)を介して繋がる宇宙

池尾優/編集者・ライター

念願だったジュエリーブランドCURIOのアトリエにお邪魔すべく、神戸は六甲へ。金属の装身具を中心に制作する職人のまゆみさんが作品とともにSNSで発信するストーリーに毎回うっとりしていて、どんな方なのか会ってみたかった。

標高500mというだけあり、京都の市街地に比べて気温が5度も低い。山がすぐそこにあり、広いお庭から抜ける風が気持ち良い。そんな「山の家」というのがぴったりなアトリエで生まれる作品群は、ほぼ自然からのインスピレーションでできている。

どれもデザインは素敵だが、この日一番惹かれたのは、制作過程について。溶かした金属を水滴のように落としたり、手を加えず自然に固まるのを待ったり、彼女の作品の多くは金属の特性や重力に任せて成形される。自然の石の形に沿わせて金属を成形した「ISHIKI」シリーズなんてのもある。それらに形の正解はない。長く制作を続けている彼女でも、金属の反応や自然が導く色形には毎回驚きと発見があるという。金属を慈しんで「メタル」と呼ぶ彼女。メタルにまつわるあれこれを本当に楽しそうに話してくれるから、作品全部の背景を聴きたくなってしまう。

昔まゆみさんが宇宙物理学者の佐治晴夫さんから聴いて、ずっと大切にしているという話を教えてくれた。「金や銀などの鉄より重い元素はもともと宇宙空間で生まれたもの。だから地球で生成されることはない」という。ならば、こうして私が手にとっているメタルは、もともとは宇宙からきたってこと?と驚いた。家に帰って調べてみると、確かにそうらしい。生成過程にはまだ未解明なことも多いけれど、現在地中に埋まる金・銀・ウラン・プラチナは、もともと宇宙空間に漂っていた元素が、何らかの影響で合成され、46億年前に地球の原料となったもの、ということは立証されているらしい。

私たち人間がメタルに惹かれるのは、希少価値が高くて、美しく光るということもあるけど、それ以上に、手の届かない宇宙空間に惹かれるという人間の本能的な部分こそが、メタルを身につけたいという動機に繋がっているのかも。いずれにせよ、こうしてメタルを身に纏うだけで宇宙との繋がりを感じることができる。それってすごく想像を掻き立てられるし、場所と時空を超えた脳内トリップみたいでわくわくする。

先日の記事で、娘が宇宙という言葉に反応して胎内記憶らしきことを話したことを書いたけれど、それともリンクしている気がしてきた。もともと赤ちゃんが宇宙からきたのであれば(きて間もない、ということもあって)子どもが無意識的に「おそら」に惹かれるのは容易に納得がいく。

これはおまけ。最近、水や太陽や月などについてよく思いを巡らせている。水田の中の生物多様性についてや、夏至〜半夏日の間に田植えを行う意味、また夏至の直前に最もパワーを高めると言われている草花の不思議などなど。自粛期間中にベランダ菜園を始めたり、田植えの手伝いをしたことなんかも関係していると思うが、とにかく、この世界を形成する本質的な物事が気になる。

そういえば5月に、コロナ自粛中の家族の心について精神科医の星野概念さんに話を伺ったとき、こんなことを話してくれた。頭の中がコロナでいっぱいになってしまうストレス対策として「生き物を育てると良いですよ」とのこと。例えば、子どもはもちろんだし、ペットに植物に菌を育てる糠床もそう(星野先生は自粛期間中に糠床を始めたそう)。日々変化するもの、それも自分のコントロールが効かないものをそばに置くことで、注意を取られるので、結果、思考を分散させてくれるのだという。

日本ではすっかり日常が戻りつつあるように錯覚してしまうけど、世界の感染者数はここ1ヶ月で急増しているし、ジョージ・フロイド事件で始まったアメリカ国民のレイシズムとの戦いは長期化し、毎日心の痛くなるニュースばかり。

娘に振り回されているのはいつものことなので置いておくとして、四季や天気や宇宙空間に思いを巡らせている間は心を空にできる。それらに考えを向けることで、自分は無意識的に日々の憂鬱から逃れようとしているのかも、と思った。



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池尾優/編集者・ライター
編集者、ライター、時々ヨガを教える人。東京生まれ、20代でバンコク現地採用生活、帰国後トラベルカルチャー誌「TRANSIT」副編集長を経て現在はフリーランス。2018年より京都在住。3歳と0歳の子どもと7歳のトカゲがいます。 www.yuikeo.com