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星芒鬼譚《完全版》

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「どうにかして探してほしいんです、九尾の狐を」 源探偵事務所に舞い込んだその依頼は、世間を騒がす連続神隠し事件とも関係があるようで…? 調査に乗り出した探偵事務所一行が出会ったの…
1章ずつのお買い上げよりお得で、順番どおりに並べられているので続けて読みやすくなってます。
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2020年1月の記事一覧

星芒鬼譚2「…そうか。やはりお前は俺を越えていくか」

星芒鬼譚2「…そうか。やはりお前は俺を越えていくか」

ぱちり。静かな屋敷の中に将棋を指す音が響いた。
他に聞こえているのは、そばを流れる川の音だけだ。
広い屋敷だが、その存在を知る者はいない。
敷地には強力な結界が張られ人の目には見えないどころか、現代にはなきものとしてひっそりとそこにある。
居間では将棋盤を挟んで、二人の男が座っていた。

「そう来るか」

一人は結界を張った張本人である、安倍晴明。
言わずと知れた陰陽師である。

「どうです?少し

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星芒鬼譚3「妖怪だろーと人間だろーと、困ってるやつは助けてやるもんだぜ」

星芒鬼譚3「妖怪だろーと人間だろーと、困ってるやつは助けてやるもんだぜ」

源探偵事務所の革張りのソファには、先程訪れた可憐な女性がちょこんと座っていた。
時刻は20:05。業務時間はすでに過ぎている。
女性の向かい側には所長の光太郎がキリッとした顔で背筋を伸ばして腰掛け(着ようとしていたモッズコートは横に放ってある)、その斜め後ろでは腕組みをした夏美が仁王立ちしていた。
キッチンから武仁が白いマグカップを持って戻ってくる。

「女性が来た途端これだ」

苦虫を噛み潰した

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星芒鬼譚4「俺たちの手の届かない事件が多いのな、ほんとに」

星芒鬼譚4「俺たちの手の届かない事件が多いのな、ほんとに」

京都府警の建物の外階段。
刑事が一人、カプリコの包装を開けている。
と、ポケットの中でスマートフォンが震えた。

「はい、もしもし」

刑事---京極正人は、カプリコをかじりながら電話に出た。

「どうした?…あーその件か。鑑定結果ならもうくすねてきてあるよ。え?今日?これからぁ?」

腕時計を見て不満そうな声を出すが、電話の主に頼み込まれているらしい。

「…はいはいわかったよ、

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