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星芒鬼譚4「俺たちの手の届かない事件が多いのな、ほんとに」

京都府警の建物の外階段。
刑事が一人、カプリコの包装を開けている。
と、ポケットの中でスマートフォンが震えた。

「はい、もしもし」

刑事---京極正人は、カプリコをかじりながら電話に出た。

「どうした?…あーその件か。鑑定結果ならもうくすねてきてあるよ。え?今日?これからぁ?」

腕時計を見て不満そうな声を出すが、電話の主に頼み込まれているらしい。

「…はいはいわかったよ、それで?場所はいつものとこでいいな?…戸籍ね、名前は?…わかった、それも調べてく。じゃ、あとで」

電話を切り、ため息をつく。
その時、背後のドアが勢いよく開いた。

「京極さん!やっと見つけた!!」

くりくりした瞳の小柄な女性刑事が現れた。
京極に向かって書類を突き出す。

「この書類!判子押してません!あと字が汚すぎます!書き直しです!!」
「え~、やっといてよそのくらい。判子なら一番上の引き出しに入ってるからさ」

カプリコを食べ終えた京極は、どこからか取り出したシュークリームの袋をばりっと開けた。

「字が汚すぎて解読できません!ていうか、そのやる気のない態度、どうかと思いm」

京極がシュークリームを女性刑事の口に押し込んだ。
女性刑事は目を白黒させたが、シュークリームに両手を添えるとむぐむぐと食べ始めた。

「まー落ち着きなって。短気は損気よ、賀茂ちゃん」

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