星芒鬼譚2「…そうか。やはりお前は俺を越えていくか」
ぱちり。静かな屋敷の中に将棋を指す音が響いた。
他に聞こえているのは、そばを流れる川の音だけだ。
広い屋敷だが、その存在を知る者はいない。
敷地には強力な結界が張られ人の目には見えないどころか、現代にはなきものとしてひっそりとそこにある。
居間では将棋盤を挟んで、二人の男が座っていた。
「そう来るか」
一人は結界を張った張本人である、安倍晴明。
言わずと知れた陰陽師である。
「どうです?少しは上手くなったでしょう」
その晴明の顔を上目遣いにちら、と見た向かいの男は蘆谷道満。
彼もまた陰陽師であり、安倍晴明のライバルとも伝わっている。
伝わっているというのは、伝説上の人物だからだ。
二人が活躍したのは平安時代のこと。現代に生きているはずのない人間なのだ。
「仕込んだ甲斐があるってものだね。…これならどうかな」
晴明の細い指が将棋の駒を動かす。
「あー、それだったら…」
次は道満が駒を動かす。
「やるじゃないか。これは難しいぞ」
どちらからともなく、ふ、と不敵に口の端をつり上げた。
「ねぇ、ごはんまだー?」
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